ドキュメンタリー『世界で戦うフィルムたち』初日舞台挨拶。映画に関わる人たちに…

ドキュメンタリー『世界で戦うフィルムたち』初日舞台挨拶。映画に関わる人たちに…

5月20日(土)、池袋シネマ・ロサにて、ドキュメンタリー映画『世界で戦うフィルムたち』(亀山睦木監督)が上映初日を迎えた。上映後には、本作監督の亀山睦木監督が、劇中のインタビューに登場する深田晃司監督を迎え、俳優の岡田深を司会に舞台挨拶・トークを行った(登壇予定だった田中大貴監督は急遽欠席)。

世界で戦うフィルムたち


本作は、日本の若手映画監督や、日本映画が世界で評価されるためには、どのようにしていくべきかを投げかける映画。より多くの映画業界の方や、将来、映画業界を目指す学生や映画業界の枠を超えてクリエイター、アーティストに観ていただきたいという思いが込められている。

■ 『世界で戦うフィルムたち』初日舞台挨拶

▼上映初日を迎えての感想

上映初日を迎えての感想を求められた亀山監督は次のように答えた。

亀山睦木監督
これまではいつもフィクションを作ってきておりまして、作品として、映画としてドキュメンタリーをを作るのは初めてでした。ドラマものではない、劇映画ではない作品をどうやって皆さんに見ていただこうかというのは、作っているときからかなり考えたり悩んだり何を伝えたらいいかっていう編集の過程がものすごくしんどい時もありました。
それをやっと皆さんに見ていただける、こうして何かを伝えられる場所に届けられることができたということは非常に感慨深いと思っております。

世界で戦うフィルムたち
亀山睦木監督

▼インタビュー出演のオファーを受けて

深田晃司監督が出演のオファーを受けて、取材されたのはコロナ禍で大変な時期だった2021年。そのオファーから、若手と呼ばれている多くの監督がいろいろと悩んでいるということ感じたという。

深田監督が作品に登場する他の監督の証言で貴重だと思ったのは、コロナ期ならではの大変さとコロナ以前から存在する大変さの両方が記録されていることだと答えた。

こういったドキュメンタリー映画は、大御所と呼ばれる監督たちの証言を撮りがちなところを若手とカテゴライズされる監督たちの証言が残っていて、亀山監督だからこそ、みんながガードを下げて話してくれていることを感じられて良かったと深田監督は感想を述べた。

世界で戦うフィルムたち
深田晃司監督

▼コロナの時期を経て変わったこと

深田監督が昨年公開した『LOVE LIFE』は、2021年の秋、コロナ禍の最中に撮影。その時にある意味で良くなったと感じたことは、衛生班というこれまでなかったスタッフが増え、安全衛生に慎重だったことだという。大変だったことは、本来の撮りたい海外への移動に制約が生じたため、国内で撮影を行うといったことがあったそうだ。

映画祭に関しては、オンラインならではの海外との距離が縮まったことを感じたが、コロナが落ち着いてきてからは、映画祭でのいろんな出会いのようなものはオンラインでは限界が来ることを皆が感じていて、フィジカルに戻そうという動きがあるということを深田監督は語った。

深田監督にとって映画祭はマーケットだと考えており、オンラインでは会議が次々と人と会っている感覚だが、重要なのは、フィジカルで行われる時の会議と会議の間での休憩時の移動や偶然の出会いから話が進むことが重要なことだったと思い出したという。

世界で戦うフィルムたち

▼商業映画とは何なのか

海外の映画祭に行くようになって深田監督が思ったのは、商業映画とは何なのかという立ち返りだという。あらゆる映画は売ることを前提で作られているが、日本では「商業映画」と「自主映画」という括りになってしまうけれども、両者は商業性が高いか低いかであって、商業性が低くても、それは商業映画ではあると深田監督は語った。

自分がやりたいことをやっていくためにはお金が必要で、最小限のスタッフにしたとしても、劇映画においては1日に300万円はかかると言われているという。予算が増えれば、撮影日数も増えるので、お金集めが重要になると深田監督は説明した。

海外の映画祭での作品は、2,3年という年月を費やして、プロデューサや監督が助成金の申請やいろいろな所から資金集めをして、最低限の人件費を払って、低予算の中でインディペンデント映画を作っており、商業映画かどうかというカテゴライズがない中で、商業映画としてアート映画をつくっているものがほとんどだという。

亀山監督も、「予算の大きいか低いか、ローバジェットかビッグバジェットかみたいな区分はありますけれども、自主映画かそうじゃないかみたいな部分はないですよね」と自身の感覚を述べた。

▼映画を学ぶうえで、教わりたかったこと。

深田監督が海外の映画祭で経験したのは、自主製作映画か商業映画かというカテゴライズではないということを知っていくことだったという。

亀山監督は、「国内の映画祭だけで作品を出して、監督として成長しようって思ってるとあんまり教えてもらうタイミングがない」と思ったという。

深田監督も映画祭への作品の出し方については映画学校で教えてもらったことはなく、教えるべきだという考えを述べた。

大学の学生と話す機会で亀山監督は、作ることの授業はあるけれどもプロデュースや資金調達の話はまだないということを学生の話の温度感から感じたという。

世界で戦うフィルムたち

▼映画に関わる人たちに教えるべきこと

深田監督は学生に対して思うこととして、「本作でインタビューを受けている監督たちは、映画をすでにつくっていて、それをどう世に出していくかを悩んでいる段階で、学生はその手前となる、何がつくれるんだろうかというところで悩んでいる人たちが多く、まずは、どうやってお金を集めていくか、どのように作っていくかっていう意識はおそらく低いと思う。」という考えを述べ、学生に伝えるべきこととして「学生なり、新人監督がどう出ていくかという道筋が欧米にはあるので、助成金がたくさんあるといったところを話している。」と語った。

▼ 深田晃司監督、亀山睦木監督からのメッセージ

深田監督は本作について、この作品を見て、ためになるのは若手の学生さんや映画作り目指したい人たちにとって、いろいろと気づきのある作品なのではないかと思うので、是非広めて欲しいと呼びかけた。

世界で戦うフィルムたち

一方、亀山監督は、「こういうことに困ってる若手がいるということを、若手じゃない方に見ていただきたい。池袋シネマ・ロサに来ていただきたい。」と語り、それを受けて深田監督は「上の世代の人たち、権限を持った人たちに届いて欲しいですね。」という言葉で締めくくった。

世界で戦うフィルムたち

■ 『世界で戦うフィルムたち』

▼作品公式サイト

https://thenightbeforeupheaval.themedia.jp/

<出演>

北村龍平 谷垣健治 清水崇 深田晃司 片山慎三 祐真キキ / 寺島しのぶ

松本卓也 宇賀那健一 戸田彬弘 野本梢 加藤綾佳 石橋夕帆 田中大貴

皆川暢二 中屋柚香 中垣内彩加 工藤孝生 岡田深 大石菊華 今村左悶 カン・ハンナ

Michael A Stackpole Neilson Black Louis Savy 掛尾良夫 矢田部吉彦

<スタッフ・ほか>

監督:亀山睦木|企画 : noadd|プロデューサー : 浦野大輔 吉野匡志 鈴木遥 山田百合菜

アソシエイトプロデューサー : 吉丸佳予子|音楽 : 今村左悶|イラスト : カタユキコ

キャスティング : 本間祐樹 ( スカリー ) 神原健太朗 門田治子

ヘアメイク : 清水彩美 光倉カオル (dynamic 所属)|スタイリスト : 中井綾子 (crepe 所属)

モーショングラフィック: 小野越生|整音・音響効果 : 松野泉

製作・配給 :ノアド株式会社|助成 : 文化庁「ARTS for the future! 」補助対象事業

5月20日から、池袋シネマ・ロサにて、2週間限定公開

世界で戦うフィルムたち

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