インディペンデントシーン最注目タッグ、監督:磯部鉄平 × 主演:辻凪子の最新作「凪の憂鬱」が、4月21日(金)シモキタ-エキマエ-シネマK2で公開初日を迎えた。初日舞台挨拶には、辻凪子、佐々木詩音、磯部鉄平監督が登壇。本シリーズの制作のきっかけや、撮影時のエピソードを語った。
初日の上映前には、シモキタ-エキマエ-シネマK2最寄りの下北沢駅前にてキャスト、宣伝スタッフによるチラシ配りも行われた。4/21(金)からの劇場公開では監督・出演者らによる10日間連続舞台挨拶が行われる。
■ 映画『凪の憂鬱』初日舞台挨拶
▼磯部監督に質問。劇場公開を果たした今の気持ちは?
磯部鉄平監督
下北ってこんな感じでしたっけ?工事をいつもしているイメージだったんですけど、さっき来てみたら、めちゃくちゃおしゃれな空間で、こんなところにある映画館で上映してもらえるなんて嬉しいな。感無量です。
-K2は初めてですか?
磯部鉄平監督
初めてです。
-辻さん、佐々木さんはいかがですか?
辻凪子
私は来たことがあります。
佐々木詩音
僕は初めてです。
辻凪子
他の映画館で見るのと、ここで見るのと全然感じ方が違くて、K2さんだとより良くいい感じにみえます。
磯部鉄平監督
すごくかっこいいですね。
辻凪子
いい映画に、より感じます。
▼この作品の企画の成り立ちについて
-『凪の憂鬱』シリーズとして作られている経緯をお話しいただけますか?
磯部鉄平監督
2018年に網走で映画祭がありまして、そこに僕と辻凪子さんが全然別の作品で行くことがありました。もう1人、ひと:みちゃんという変わった人がいるんですけど、その人も別の作品で行くことになっていました。
ひと:みちゃんから電話がかかってきて、「どうせ網走に行くなら、3日ぐらい前に前乗りして映画を撮りませんか」みたいなことを言われたんです。それがイヤだったんです(笑)
「ひと:みちゃんで、網走で何を撮んねん…」と思って、「いや、それはいいです。やめときます。」って言ったんですけど、そこから何回もメールが来たんです。僕はちょうど映画を撮っている最中だったんで。
『ミは未来のミ』といった長編を撮っていた時だったので、「面倒くさいな」と思っていたのですが、ずっと LINEが来ていました。その時に「辻凪子も来るよ」みたいなのが来ました。
知り合いではあったけど、僕の映画に出てもらったことはなかったので、それやったらちょっとやってみたいなと思って、手のひら返しで「やります!」みたいなことを言ったので、それがなかったら、この企画はなかったです。
ありがとう、ひと:みちゃん。ごめんなさい。ひと:みちゃん。
そこからですね。そこで即興みたいな感じで網走で撮りました。
その2年後ぐらいに、ちょっとぽっかり開いたんで、「またちょっと久々に撮りますか?」みたいなのがありました。
ひと:みちゃんから連絡が来たときに、『オーファンズ・ブルース』を観ていたんです。『ミは未来のミ』の合宿で観ていたのを今思い出しました。
-『オーファンズ・ブルース』には、ひと:みちゃんがでているんですよね。
辻凪子
はい。私と詩音は大学の同級生で、その卒業制作の映画です。
磯部鉄平監督
『凪の憂鬱』の次の大学生編を大阪で撮ろうってなったので、もうちょっと仲間をどんどん増やそうとなった時に、佐藤あみさんとか、川久保晴さんとかに出てもらいました。凪が好きな男の子役を1人紹介してもらったんです。
辻凪子
そうですね。大阪で撮るということで。
磯部鉄平監督
そこで「詩音がいいんじゃないか」となって、やっていただいた流れです。で、さらに2年後にこの長編を撮ることになったという感じです。
-網走で撮ったときは、そういった想定があったんですか?
磯部鉄平監督
いや全くなくて、「あれはあれで楽しかったね」みたいな感じやったんですけど、何となく「あの後どうなったんやろ…」みたいな話がチョロチョロ出ていて、脚本の永井くんと話をしていて、「次やるなら大学生か…」みたいなことはギャグみたいに言っていました。本当に(予定が)空いたので、「どうせならやろうか」みたいになりました。
僕の映画に出ようとしてて一緒に空いたんです。コロナで延期になってぽっかり全員が1ヶ月空いたので、その映画に出ようとしていた皆さんに出てもらった感じです。
ー辻さんは同じ役柄を何作も撮って行く経験は他にもありましたか?
辻凪子
自分で作っている作品ではありますが、こういった等身大の作品では初めてですね。
「よーいスタート!」って言われたのを覚えていないぐらいに、現実と境目がなさ過ぎて、力を入れてなさすぎて、そのまま友達といるところを撮られている感じがしますね。
佐々木詩音
そうですね。凪子が言った通り、「これでいいのかな」って毎日、「撮影が終わっちゃった…」みたいなくらいに、ナチュラルな感じだったので、本当にあのまんまこのまんまっていう ちょっと恥ずかしい感じでした。
辻凪子
前作の大学生編の冒頭シーンで、私、さりげなく詩音にフラれているんです。
磯部鉄平監督
告白する前からね。
辻凪子
それをYouTubeで見られるので、良かったら観てください。
磯部鉄平監督
詩音くんに決まって、僕はまだ会ったことがなくて、『オーファンズ・ブルース』を見ていたから、脚本を書いてるときにちょっとヤンキーぽくなかったですか。それで駄目出しが1回来たんです。「詩音はもっと優しいですから」って。
佐々木詩音
それ聞きましたね。凪子が言っていたって。
磯部鉄平監督
『オーファンズ・ブルース』を一回見ただけなんで。
その後に、1回お茶とかをして、どんどん本人に寄せていきました。
-『凪の憂鬱』シリーズは基本的にはフィクションだけど、演じる人に寄せたというか、そのままに近い形で出てもらったのでしょうか。
磯部鉄平監督
僕の中ではそうなんですけど。「いや違うわ」って言われるかもしれないんですけど。
▼前作を観ていなくても楽しめる作品
-高校生編、大学生編がすでにある中で、今回の映画版から見ていただいても楽しめる作品になっていますね。
磯部鉄平監督
本作から観てもきちんとわかるように作ろうみたいな考えはありました。
永井先生と脚本を考えて、いきなり「わからへんやん」ってならんようにだけは気をつけました。
ひと:みちゃんはどんどん出なくなるようにはなりました。でも、ほとんど聞こえないんですけど、自転車屋でかかっているラジオから聞こえてくる声は、ひと:みちゃんが喋ってます。ラジオは録りましたね。
-高校生編では、辻さんとひと:みちゃんの2人が、W主演の立ち位置でしたよね。
▼『凪の憂鬱』 高校生編
▼『凪の憂鬱』 大学生編
磯部鉄平監督
YouTube で見てもらったら、僕みたいな髪の長い、さらに気持ち悪い変なおじさんと辻凪子さんが網走で会って、道中一緒になる話になっています。ひと:みちゃんには敬意を払って、毎回、ちょっとだけ出てもらっています。
辻凪子
次回どうやって出てくるのか…。
磯部鉄平監督
新聞の写真で、鍋敷きの置くところ…って言ったんですけど、めっちゃ嫌がってましたね。
▼映画製作と今後の展望
-映画が公開したばかりなのですが、この後どうなるのかといったことは考えられていましたか?
磯部鉄平監督
長編を撮るときに、東京に来たみたいなところを撮ろうとか、網走に里帰りするみたいなとか、いろいろ考えてたんですけど、結局大阪で撮ることになったんです。
東京には、いつかは来ないとな…とは思っているんです。「ずっと東京に行きたい!」みたいな話は言ってるんです。
辻凪子
東京に来た方が友達いっぱいおるから出てくれる人も増えたし、ずっと大阪で立ち止まっていても…。でも正社員になってもうたから」
磯部鉄平監督
転勤しかないですね。
辻凪子
東京でやりたいですね。
磯部鉄平監督
根矢ちゃんとか、あみちゃんとか詩音も東京だから…
辻凪子
私が行かないといけませんね。
佐々木詩音
凪が東京に来たら…
磯部鉄平監督
東京に遊びに行く話とか…
辻凪子
いいですね。
磯部鉄平監督
でも全然みんな相手してくれなくて、たらい回しにされるとか。
-次は東京編かもしれないし、その先もまだまだ続けるってことですね。
磯部鉄平監督
“気が向いたときに…”なんて宣伝に書かれているので…
-気が向いた時に制作されているシリーズというのが、一応売り文句なんで。
磯部鉄平監督
書かれると、気にしてしまいますね。でもやりたいですね。
辻凪子
おばあちゃんになるぐらいでもやりたいです。
磯部鉄平監督
ここからの方が面白いんじゃないかみたいな話をね。
辻凪子
30代40代と…
磯部鉄平監督
その方が絶対面白いから、今はまだ助走期間で、こっからの方が人生いろいろ起こっていくから。
辻凪子
またね、ここ(凪は詩音)を思い続けてるから、まだ諦めてはいないかもしれないから。
磯部鉄平監督
友達だとが思われていますけどね。
辻凪子
社会人編で詩音がかっこよくなって帰ってきたから、それは私も久しぶりに会ってびっくりしました。
磯部鉄平監督
王子様みたいでしたね。
辻凪子
目が(隠れて)見えへんようになっていましたね。
磯部鉄平監督
助監督が十三の子なんですよ。その子が結構自転車とか手配してくれて、「あんな子は十三におらん」って言っていましたね。
佐々木詩音
でも、十三は、意外と近かったんですけどね。
▼撮影期間、憂鬱だったことは?
-撮影は何日間ぐらいでしたか?
磯部鉄平監督
2週間とかですかね。12月に撮っていたようなことを覚えています。
辻凪子
そうですね、2週間とか。
佐々木詩音
2週間には行かないぐらいだと思います。
-撮影は順調にすすんで、憂鬱なことはありませんでしたか
磯部鉄平監督
憂鬱なことはね…
ゲートボールのおじいちゃんおばあちゃんが、なんもいうことを聞いてくれへんし…
辻凪子
怒って、喋って、設定と違うことをね。
磯部鉄平監督
「これ、やらなあかんの!?」ってね。
辻凪子
録音部さんが毎日憂鬱そうでした。
-ゲートボールのルールは、ちゃんとしたルールを描いているんですか?
磯部鉄平監督
そうです。ゲートボールを習いに行って、ルールを教えてもらって、何回か試合して、あの会長みたいな人に教えてもらいました。
そういうのをずっとやって、一応作っていたんですけど、全部崩壊しているんです。
途中からもうそのまま試合を撮ろうみたいになって…。
辻凪子
あのシーンは当日に台本上がってきた気がします。
私はいいけど、根矢ちゃんはルール説明とかが長文で、当日に届いて、「やばい!覚えなあかん!」みたいになっていました。
磯部鉄平監督
元々考えた話が全然うまくいけへんから、もうどうすんねんみたいになって、でもドキュメンタリーみたいに試合を撮っていくしかないみたいなことになったら、お父さん役の川本三吉さんがほんまにブレークしたじゃないですか。
いきなりうまくなって、本当に辻褄があったんです。めっちゃ負けんのかなと思ったら、ほんまにうまくなって、どんどん当たりだしてね。
-めっちゃ喜んでいましたよね。リアルなリアクションだったんですね。
磯部鉄平監督
そうです。テイク1なんで全部。
ー辻さんも決めていましたよね?
辻凪子
1回目だけ。最後に。
だからほんまうまいんですよ、私。多分ちっちゃい頃にやってたから、ゴルフ、ゲートボールみたいなのをちょっとやってたんです。あれを見ているだけでめっちゃ楽しかったですね、「ゲートボール映画かよ!」というぐらいに。
磯部鉄平監督
おじいちゃんも良かったですね。
辻凪子
あの人は一般の方で、ゲートボールチームの人ですよね。ハナちゃんのお父さんのお父さん役。
磯部鉄平監督
あちらは全員本当に強いんですよ。
-想像するだけで大変そうな現場ですね。
磯部鉄平監督
「負けてください」って言われるのをめっちゃ嫌がっていました。
■磯部監督からひとこと
磯部鉄平監督
今日初日で、これから何週間か、ここ(シモキタエキマエシネマK2)でやることになるので、ぜひ口コミで広げていただければと思っております。告知は以上になります。どうぞ『凪の憂鬱』をよろしくお願いします。
■ シモキタ-エキマエ-シネマK2 舞台挨拶(予定)
4/21(金) | 磯部鉄平監督、辻凪子、佐々木詩音 |
4/22(土) | 磯部鉄平監督、辻凪子、川久保晴 |
4/23(日) | 磯部鉄平監督、辻凪子、根矢涼香 |
4/24(月) | 磯部鉄平監督、小林未奈 ※小林未奈による弾き語りあり |
4/25(火) | 磯部鉄平監督 |
4/26(水) | 磯部鉄平監督、佐藤あみ、川本三吉 |
4/27(木) | 磯部鉄平監督、佐藤あみ |
4/28(金) | 磯部鉄平監督、他 |
4/29(土) | 磯部鉄平監督、他 |
4/30(日) | 磯部鉄平監督、他 |
■ 作品概要
映画『凪の憂鬱』 http://bellyrollfilm.com/nagi/
主演は、映画・ドラマ・舞台など幅広く活躍するコメディエンヌ・辻凪子。映画監督としても活動し、監督作の活弁映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」公開で全国的に話題を呼んだ 。凪を囲む仲間たちに『シュシュシュの娘』の根矢涼香、『裸足で鳴らしてみせろ』の佐々木詩音、『君は愛せ』の佐藤あみなど注目若手俳優たちが集結。
監督は、「凪の憂鬱」シリーズと同じく撮影から5年越しで映画『コーンフレーク』が絶賛上映中の磯部鉄平。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて3年連続受賞の快挙をなし、国内外映画祭にて多数入選受賞する監督が、等身大の凪を追い続ける。
大阪で契約社員として働く凪(ナギ)は、初めての有給休暇前日に彼氏にフラれる。メランコリックに過ごすはずの休暇は、騒がしくも魅力的な仲間や登場人物に振り回され、全部めんどうくさいけど、毎日は騒がしい。そんな凪の1週間はめまぐるしく過ぎていくーー。
予告映像は、小松未奈が歌うエンディング曲「メロディを思い出して」にのせたMVのような映像。凪と仲間たちが「怪談したり、ライブに行ったり、ゲートボールしたり、昔好きだった人に再会したり、大喧嘩したり。」する様子を早回しのカメラが追う。振り回されながら、生き生きとした凪のメランコリックな有給休暇は過ぎていく—。
<あらすじ>
凪 (辻凪子) は大阪で契約社員として働いている。 はじめての有給休暇前日に1年間付き合ってきた彼氏に振られる。怪談したり、ライブに行ったり、ゲートボールしたり、昔好きだった人に再会したり、大喧嘩したり。
凪のメランコリックな有給休暇は過ぎていく。
辻凪子
根矢涼香、佐々木詩音、佐藤あみ
川久保晴、薬師寺初音、屋敷紘子、川本三吉 野村洋希、海道力也、浄弘卓磨、坪内花菜上野伸弥、松本真依、ひと:みちゃん、ハシモトタクマ 辰寿広美、仁科貴
監督・脚本・編集:磯部鉄平
プロデューサー:谷口慈彦 共同プロデューサー:和田裕之
脚本:谷口慈彦、永井和男 撮影・照明:小林健太 録音・整音:杉本崇志 助監督・美術:高木啓太郎 ヘアメイク:夏海 音楽:kafuka(江島和臣)劇中曲:根矢涼香「rail on the road」「MariA」 エンディング曲: 小林未奈「メロディを思い出して」
HP・ポスターデザイン:河合良美 ロケ地協力:塚口サンサン劇場、ワイルドパンチ、塚本エレバティ、小川マンション、ABCアネックス、 Pollux Theater、宝 湯、カンバヤシサイクル、生野区巽東第3光栄愛護会 配給:モクカ 製作:belly roll film/Japan Wing株式会社 2022年/DCP/カラー/ステレオ/98分© belly roll film
4月21日(金)シモキタ-エキマエ-シネマK2
6月 3 日 土 大阪シアターセブン 6月 9 日 金 京都シネマ /6 月 17 日 土 元町映画館 ほか 全国順次公開