2022年11月20日(日)、多摩市立関戸公民館(ヴィータホール)にて、映画『まなみ100%』が、 TAMA CINEMA FORUMにおいてワールドプレミア上映。上映後に開催されたトークイベントには、川北ゆめき監督、青木柚、中村守里、 脚本・いまおかしんじ、篠田知典プロデューサーが登壇。本作制作のきっかけから、キャスティングの経緯、演じてみての感想が披露された。
■映画『まなみ100%』
【ストーリー】
平凡さを嫌う自分勝手で変わり者な器械体操部の“ボク”こと山南くん(演・青木柚)と、普通に生きる同じ部活のまなみちゃん(演・中村守里)の愛と青春の10年間が描かれる。
まだ、高校生だったその日、器械体操部の僕たち男子は、まなみちゃんの所属する女子部員と対立していた。彼女たちは文化祭の出し物である合唱の練習があると言って器材の準備に来なかったのだ。抗議した僕たちだったが、それが原因で部活が停止になりかけた。あれから10年…。
■映画『まなみ100%』ワールドプレミア上映 トークイベント
▼映画『まなみ100%』制作のきっかけ
本作の製作のきっかけを質問された川北監督は、2017年の末頃に監督自身が学生時代の体操部の先輩が亡くなったことで、自分の人生や人との出会い・別れを考える時期があったこと、先輩のことや自分のどうしても忘れられないものを映画にしようと考えたことを語った。
本作は、川北監督が好きだった“まなみちゃん”を映画にしたい想いと、主演として中村守里さんをまなみちゃん役にしたいという企画書から始まり、それが2019年のことだという。主演となる“ボク”役はなかなか決まらず、結果として青木柚さんに決まったのは2021年のことだと、川北監督はキャスティングの流れを振り返った。
▼オファー、そして演じてみての感想
オファーを受けての感想を質問された青木さんは、「この役を自分がやるのか」と思ったこと、そして川北監督から「柚くんの新しい一面を見たい」と最初に伝えられたことが印象的だったと語った。
川北監督から声がけをいただいた中村さんは、はじめは高校一年生だったと当時のことを振り返った。そこから音沙汰のない期間があり、再び声がけをいただいた時もまなみ役に選んでくれたことが嬉しかったと笑顔で語った。
▼いまおかさんに脚本をお願いした経緯
脚本をいまおかさんに依頼した経緯を質問された川北監督は、自分自身の脚本で自分のことを考えると暗くなりがちで、映画自体も暗くなることが懸念されたので、それを中和できる人を探したところ、いまおかさんにたどり着いたこと、LINEで連絡したら、すぐに「いいよ」という返事が返ってきたエピソードを明かした。
脚本を依頼されたいまおかさんは、川北監督との出会いは5年前ぐらいで、当初会話をした時に「これ、絶対に映画にならないな」と思ったと語り、今日、ワールドプレミア上映に至って良かったと感想を述べた。
▼“ボク”という役を演じるにあたっての感想
川北監督自身を映し出す“ボク”を演じた青木さんは、役柄について川北監督と打合せをするたびに、“ボク”という監督自身にたどり着いてしまう点があり、監督自身が“ボク”を演じる選択肢は無かったのかと質問。
それに対して川北監督は芝居経験があまりないことや、自分自身では客観視できないので、きちんとした俳優に演じて欲しい気持ちがあったことを明かした。
▼“まなみちゃん”を演じてみての感想
まなみちゃんを演じての感想を質問された中村さんは、演じるにあたって、まず難しいと思ったこと、まなみちゃんが実在している方で、まなみちゃんをコピーして演じるのがいいのかなと最初は思ったけれども、そのままコピーしすぎてやるのも何か違うと思ったこと、台詞が冷たくなりすぎてしまうことがあり、その調整が難しかったと感想を述べた。
川北監督自身は、まなみちゃんのことが何で好きなのか色々とわからない点があることや、“感覚的に理解できないところが好き”ということがあって、まなみちゃんの心理について、中村さんにはっきりと伝えることができなかったと、撮影現場での出来事を振り返った。
▼青木さんからみた まなみちゃんを演じた中村守里さんの印象は?
中村さんの印象を質問された青木さんは、撮影シーンが終わるたびに、川北監督がやって来て、「中村守里ちゃんって、本当にまなみちゃんなんだよなあ」と話していたエピソードを語った。
青木さんは、「中村さんに限らず、キャスト全員が川北さんの思う人物像になっていたと思う」、「中村守里ちゃんは、語弊を恐れずに言うと、何を考えているか分からない瞬間が多い、ミステリアスな存在」と説明した。
▼いまおかしんじさんに聞く、出演のエピソード
劇中に出演したいまおかさんは、「何年後かに議員になっている設定で、その議員のポスター用に家でスーツを着た写真を撮らされて、送ったものの、編集でカットされていて残念だった」というエピソードを語った。
▼今後に向けてのメッセージ
篠田プロデューサー
本日はご来場いただきありがとうございました。来年2023年公開で、今まさに公開に向けて動いているところです。川北監督の私小説的なものを映画にした作品なのですが、多くの人に共感してもらえる青春映画にできたかと思います。来年公開に向けて頑張りますので、ぜひ応援・宣伝協力などをよろしくお願いします。
いまおかしんじ
何か訴えたい社会的なテーマがあるわけでもなく、しょうもない話だと思うんですけど、人と人が出会って、何かは分からないけれど、会ったり会わなかったりして、でもそういうことが僕は大事なことだと思うし、今後生きていく上でも何かしら助けになるのかもしれないし、そういうところを観た人みんなにちょっとでも届けばうれしいなと思います。
中村守里
愛される作品になればいいなと思っています。特にまなみさん本人がどういう気持ちで観られたか分かりませんが、どういう風に感じるのか気になります。
監督は熟成しながら内容をものすごく考えながら、いろいろな人が監督の作品に携わっていて、丁寧に作り上げた作品なので広がっていけばいいなと思っています。来年の公開も楽しみにしていてください。本日はありがとうございます。
青木柚
元々この作品は、『まなみ100%』というタイトルじゃなくて、『凡人を嫌う、POPな狂人』(『“平凡”に恋するPOPな狂人』)みたいなタイトルもあって、普通とか平凡さや枠に入れないみたいなテーマが大きくあって、僕は逆に自分自身はなるべく普通でいたいって思ってしまうタイプです。
ボクという(キャラクターの)言動が万人に通じるようなものではないとは思うのですが、その中に10年間の恋のピュアさや、大人になれなくて置いていかれてしまったり、僕みたいに普通になりたいとか、ボクのように普通が嫌だとか枠や概念みたいなものにはまるのがしんどいといった感情も物語に入っていると思います。
ポップに楽しみつつ、共感するところも多いと思います。10年という長い時間を通しての映画なので、自分の今思っているものや、昔に思っていたことや、いろいろなものが皆さんの中で繋がっていく映画になったらいいと思います。そういった人、いろんな方に観ていただきたいと思っています。
僕はこの映画で初めて全シーンに出演するという、主演でもなかなかない経験をやらせてもらったんですけど、全シーンやってわかったのがスタッフさんて、それを毎回、現場でやっているんだなっていうのが本当に一番強く感じた作品です。
決してめちゃくちゃ多い人数で作った映画でも、莫大な規模で作った映画でもないんですけれど、川北さんの個人的な思いから、ギュッと人が監督のピュアな映画作りへの想いに導かれて、そこに一緒にやりたいという気持ちでできた映画です。
そういった映画が多くの方に届くことが、俳優をやらせてもらっている自分からしたら一番嬉しいことなので、公開は来年になるんですが、「こういう映画もあるんだよ」というように、いろんな楽しみ方で広がっていったら良いなと思っております。今日は足元の悪い中お越しいただき、ありがとうございました。
川北ゆめき監督
劇中で使っている『虹』という曲は実際に僕が中学校の時に、(合唱コンクールで)隣のクラスが歌っていて感動した曲で、(映画の中で)使いたいという背景がありました。自分の人生や年代の話なので、自分の年齢に近い人に一番共感してもらえるのかなと思っています。
映画監督に限らず、自分の好きな人や人生を映画にしたいという思いは、きっと誰もがみんな一度は思いついたことがあるのではないかと思います。でもそれはすごく難しくて、思いつきはするけれど、なかなかできないと思います。
スタッフの方や役者といった人の力を借りて、ここまで完成させることができたので、やはりこの場に立ってみてすごい僕は幸せな人だな、幸せな経験をさせてもらったなと改めて思いました。だからこそ、みんなに返すためにも、この映画を少しでも多くの所で上映して、いろんな人に観てもらって知ってもらうということをする義務があるんだなっていうのを改めて感じた次第です。
もしよろしければ、映画を観終わった後に、面白かったよとか、また友達を連れてきてもらうとか、そういった協力をもししてもらえたら嬉しいなと思います。よろしくお願いします。
映画『まなみ100%』
監督=川北ゆめき
脚本=いまおかしんじ
撮影=近藤実佐輝
衣装=小宮山芽衣
音楽=大槻美奈
出演=青木柚、中村守里、伊藤万理華、宮崎優、新谷姫加、菊池姫奈、日下玉巳、下川恭平、藤枝喜輝、野島健矢、オラキオ、濱正悟、諏訪珠理
2022年/SPOTTED PRODUCTION配給/90分
©まなみ100%製作委員会
公式Twitter https://twitter.com/100manami100