人と人とのつながりで映画『アリスの住人』へ。伴優香「この映画は私の中で絶対大きなものになる」

人と人とのつながりで映画『アリスの住人』へ。伴優香「この映画は私の中で絶対大きなものになる」

12月4日から映画『アリスの住人』の上映が池袋シネマ・ロサで上映されている。本作で主人公たちが生活するファミリーホームへ、卒業後も手伝いにやってくる多恵を演じた伴優香さんに取材の機会をいただき、本作制作および参加の経緯を伺った。
『アリスの住人』の脚本には、伴さん自身の叶えたいことが大きく関わっているという。ワークショップの参加から、脚本づくりのために監督と話し合ったことについてお話を伺いました。

アリスの住人
伴優香(白戸多恵 役)

■人と人とのつながりで

▼『アリスの住人』への参加のきっかけ

-本作参加のきっかけに、澤監督主催のワークショップオーディション(以下、WSオーディション)があったと思います。参加の有無、応募の経緯について教えて下さい。

伴優香
ワークショップには4日間のうちの最初の2日間に参加しました。参加のきっかけは、つぐみの父親役の大山大(おおやまひろし)さんから、「澤監督っていう面白い監督がいるんだけど、今度、ワークショップオーディションやるから来なよ」と教えていただいたことになります。
そこで、「ぜひお会いしてみたいです」という流れになったんです。人と人との繋がりで出会えました。

▼ワークショップオーディションに参加しての感想

-1、2回目は脚本を使わないワークショップだとうかがっていますが受講してみていかがでしたか?

伴優香
ワークショップではテーマだけ渡されました。「コンビニで買い物をしてください」と言われたんです。「え?なんだそれ?」と思いました。並んでる間に財布を出す人とか、私はレジに着いてからかばんを下ろしてお金を出したんですけど、1人ひとりの細かいところに澤監督はすごく気づくんです。全てをきちんと肯定した上で、「もっと次はこうしてみて」と提示してくださる方で、温かい方だなと思いました。

アリスの住人

▼伴優香さんの「叶えたいこと」

-本作出演にあたって、「出演する役者さんの叶えたいことを叶えられる映画」という企画が監督の発想としてあったと伺っています。伴さんの場合は、映画のキャストのコメントにも書かれていましたが、話しづらそうな感じを受けました。差し支えなければお聞かせください。

伴優香
上映期間の最後まで、映画の舞台挨拶をする時にも言うか言わないかで迷っているところでもあるんです。私の父がお酒をすごく呑む人で60歳になる前に亡くなったんです。父は「お医者さんにこれ以上呑み続けると死ぬよ」って言われている中で、それでも呑み続けていたんです。
その行動を私は理解ができませんでした。死ぬことよりもお酒なんだというところに理解に苦しみました。監督に「叶えたいこと」を聞かれたときにこう思ったんです。父に「なぜそんなにお酒を呑んでいたんだろう」と聞きたかったんですけど、それを聞けずに亡くなってしまったので、監督に「叶えたい」と言ったのは、「父親がなんであんなにお酒を呑んでいたのか知りたい」という話でした。

-監督のインタビューやコメントを読んでいると、今回の作品に深く関係している「役者さんが叶えたいこと」が伴さんのものではないかと考えていました。

伴優香
監督には、「父親がなんであんなにお酒を呑んでいたのか知りたい」ということしか伝えていませんでした。脚本を書く段階の時に澤監督と電話で父親との思い出をずっと話しました。それが映画の中ではお父さんがきちんと答えてくれるんです。
それは監督の優しさなんだろうなと思いました。もちろん、父親が本当にそう思っていたかわからないんですけど、多恵も浄化されたでしょうし、私自身も「そうだったのかな…」と思えた一瞬がありました。

-ドキュメンタリー分野出身の澤監督ならではのものを感じますね。映画のキャッチコピー「傷ついた天使の希望と再生の物語」は、元々の発想である「役者さんの叶えたいことを叶えられる映画」につながるエピソードがあるんだなと思いました。映画を観た人たちが救われるとか、恵まれた家庭環境の人たちでも、こういう児童虐待の状況やファミリーホームの制度を知らない人にも知らせるきっかけになれば、という考えがあるんだなと感じました。

アリスの住人

▼脚本を読んだ時、仕上がった映画を観ての感想

-脚本をもらって最初に読んだときと、仕上がった映画を観ての感想と二つあると思うのですが、それぞれ、教えていただけますか?

伴優香
私は監督と脚本を作る段階からかなり連絡を取り合っていました。澤監督には私自身のことを根掘り葉掘り聞かれたんですけれども、その聞き方が嫌ではありませんでした。私は監督の温かさを知っていたので、「この人にだったら話していいな」と思えたのが私の中で大きかったです。
私は今まで泣きながら人に話したことがあまりありませんでした。自分の思いだったり、父親に対する嫌悪感だったりとか、そういうことを結構バーッとお話して、話し過ぎたなとかちょっと思いました。台本を読んだときに、本当に些細な一言をとても大事に書いてくださっていて、監督に話してよかったなと思いました。
適当に話の大きな所だけが脚本に書かれるのではなく、私がボソッとつぶやいたことの一つひとつをセリフにしてくださいました。台本を読んだ段階で、この映画は私の中で絶対大きなものになるんだろうなと思いました。私も、今までの過去とか、そういうのが無駄じゃなかったんだなって思いました。

-伴さんはこの作品に一番の思い入れのあるキャストだと感じました。

伴優香
本当にそうだと思います。

▼伴優香さんの好きなシーン

-映画の中のお気に入りのシーンを教えて下さい。

伴優香
つぐみがとった行動をしゅはまさんが止めるシーンが好きです。その日私達はそのシーンを残して、先に撮影を上がったんです。ただ皆さんと帰るために控え室にはずっと残って待っていたんです。その時に2人の声が聞こえて来た時に、全員が静かになったんです。
その直前まで会話をしていたんですけど、二人の声が聞こえた瞬間に、全員が静かになってその声をずっと聴いていました。しゅはまさんの怒るでもなく、ただ止めるではなくて、本当に家族であろうとしている姿というか、声だけで届いてきました。
それをあらためて映画で観た時に、その包容力に「温かい人だな」って思いました。だから多恵はファミリーホームを出てからも手伝いをしていたんだろうなと思いましたね。でっかいです。愛が。

▼共演者同士で交わした話

-共演者同士で話したエピソードはありますか?

伴優香
樫本琳花も人見知りで、私も人見知りなんです。撮影の序盤にファミリーホームのシーンの撮影で仲良くなる前に撮影が終わってしまった感じが少しあります。でも、終わってからは樫本さんとたくさんご飯に行っています。私達は海にシーンの撮影に行く時に、車の中で、トランプゲームをして遊んでいます。
海のシーンでは撮影してない時は、天白ちゃんが隣にいたのでずっと遊んでいました。天白ちゃんもあんまり口数が多い子じゃないんですけど、楽しかったみたいで、とてもニコニコしていて可愛かったです。いっぱい写真を撮りました。

▼映画を観にいらっしゃるお客様へのメッセージ

-映画を観にいらっしゃるお客様へのメッセージをお願いします。

伴優香
私自身、長編の映画でこれだけのメインキャストで演じさせていただいたのが初めてです。そこに、私の人生が反映されていて、相当思い入れがある作品になっています。絶対に、東京と名古屋の上映だけでは終わらせたくないです。皆さんのお力を貸してください!
確かに決して軽い気持ちでは観られない映画なので、「仕事終わりに観るのはちょっと…」と思われる方もいると思うんです。ただ重い作品ではなくて、人との関わり方とか、そういうものに疲れた人とかにも寄り添える作品だと思います。是非、たくさんの方に観てもらいたいです。

アリスの住人

■映画『アリスの住人』 作品情報

STORY
実父から性的虐待を受けたつぐみは、その事実を母親に打ち明けられなかった。その後悔とトラウマに囚われながらファミリーホームで過ごしている。もうすぐ高校卒業し社会に出ていかないといけない社会に出る準備をしないといけない年齢。今ある日常をどのように変えていけばいいか…。そんなある日、賢治という青年と出会う。自分が飲み込まれそうな気持ちになるという理由から海へ行ったことがないと話すつぐみに賢治は海へと誘うが、つぐみの心の準備は間に合わず断念する。徐々に賢治に惹かれていくつぐみだが、思いもよらぬ悲劇が待っていた・・・

キャスト
樫本琳花 淡梨 しゅはまはるみ 伴優香 天白奏音
久場寿幸 合田純奈 みやたに 大山大 萩原正道 太田翔子
蓮田キト 荻野祐輔 小春 るい乃あゆ 獣神ハルヨ 森下さゆり
遠藤史也 たなかあさこ 小澤雄志 赤江隼平 山下徳久 大石将弘 山谷ノ用心

スタッフ、クレジット
原案・脚本・監督・編集:澤佳一郎|助監督:曽我真臣 合田純奈|撮影:温水麻衣子 髙田裕真
録音:川上翔生|ヘアメイク:蓼沼仁美 片山智恵子 藤澤和紀|音楽:伊藤求
制作:大石知恵 久場寿幸 高瀬満寿保|Executive Producer:宮崎和紀|後援:一般社団法人 日本ファミリーホーム協議会 主題歌:『群衆の中の猫』作詞・作曲:尾崎豊 編曲:Tomi Yo 唄:レイラーニ
英題:Resident of Alice|©2021 reclusivefactory
製作・配給:reclusivefactory〔2021|日本|カラー|DCP|アメリカンビスタ|ステレオ|64分〕

公式Twitter https://twitter.com/film_of_alice

公式サイト https://www.reclusivefactory.com/alice

伴優香Twitter https://twitter.com/ban_yuka0707

伴優香instagram https://www.instagram.com/ban_yuka0707/

12月4日(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

アリスの住人

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