『ナナメのろうか』姉妹役 吉見茉莉奈・笠島 智インタビュー。完成した作品を観ての驚き

『ナナメのろうか』姉妹役 吉見茉莉奈・笠島 智インタビュー。完成した作品を観ての驚き

9月10日(土)、ポレポレ東中野にて、映画『ナナメのろうか』が公開初日を迎え、舞台挨拶が行われた。登壇者は、いっちゃんこと妹・郁美を演じた吉見茉莉奈、さっちゃんこと姉・聡美を演じた笠島 智、そして、深田隆之監督の3名。
今回、姉妹を演じたお二人にうかがったインタビューの内容を掲載いたします。

ナナメのろうか

■ 映画『ナナメのろうか』吉見茉莉奈・笠島 智インタビュー

▼本作への参加のきっかけ

-この作品に参加する事になったきっかけを教えてください。

吉見茉莉奈
深田監督からご連絡いただき、出演が決まりました。以前私が出演した舞台を深田監督が見に来てくれたことがきっかけだったようです。公演の時にはタイミングが合わずご挨拶もできなかったのですが…覚えていてくれたことがうれしかったです。

ナナメのろうか
吉見茉莉奈

笠島 智
今回、深田監督とご一緒するのは初めてでした。オファーを頂き、渋谷のカフェでの顔合わせが初めましてでした。私の過去の出演作を観てくださっていたこと、今回の作品について丁寧にお話してくださったことなど、良く覚えています。

ナナメのろうか
笠島智

▼感想:脚本を読んだ時。完成した作品を観た時

-脚本を初めに読んだ感想はいかがでしたか?また、完成した作品をご覧になっての感想もあわせてお教え下さい。

吉見茉莉奈
脚本については、ほとんどがト書で書かれている後半部分、映像で見たらどんな風になるんだろう…と思ったのを覚えています。完成した作品を見た感想は…ラストシーンが撮影時の想定と変わっていたので驚きました(笑)。

そして構成について。前半部分の撮影はずっと昼間だったし笠島さんと一緒だったのですが、後半部分は笠島さんとは別の日に夜の撮影。撮っている時の雰囲気も全く違って不思議な感覚でした。

笠島 智
「私、姉になれるかな」と思いました。聡美という役を演じたのですが、今まで演じてき た役柄は実は妹の立場が多かったんです。完成した作品を観て姉らしくあれたかはさておき、妹を演じてくれた吉見さんのおかげもあってどこか自然と長女特有の佇まいに近づけたような気はしました。完成した作品を初めて観たあと、、、驚きました。実は頂いていた脚本には完成した作品とは別のラストシーンがあって、その撮影もし終えていたんです。前半と後半で異なる世界というよりは、本読みからずっとご一緒していた身としてはまるで想像していなかったラストシーンで。ただ、完成したナナメのろうかのラストシーンは私大好きで、良いラストカットだと思いました。

▼登場する姉妹の生き方・考え方について感じたこと

-ご自身の役柄や生き方・考え方をどのように感じましたか?

吉見茉莉奈
変化も仕方ないと受け入れられるさっちゃん。に対し本当は変わらないままでいたいが、自分自身も周りの環境もそうはいかないいっちゃん…。それでも少しでも変化に抗いたいといういっちゃんの気持ちには共感できます。

ナナメのろうか

笠島 智
姉である聡美さんの今日に至るまでの細かな時間の積み重ねを一番感じました。結婚、出 産、祖母の家、はたまた祖母の介護だったりも、あったと思うんです。家族がいれば経験するであろうさまざまな「仕方のないこと」をきちんと受け止めようとしている。文句もいわず黙々と。そんな印象でした。同時に感じたのは、人知れず根を生やしてしまった孤独というか、そんな一面も強く残りました。あとは、姉妹であることと、大人の女性たちであることは時にこんなにもスリリングなのだ、とも思いました。

▼本作の姉妹をご自身と比較して

-演じた役とご自身を比較して似ているところ、似てないところがあるとしたら、それはどんな点ですか?

吉見茉莉奈
大事なこと、相談せずに1人で決めてしまうところは似ているなと思います。でも、私は人と意見が食い違ったときに、いっちゃんみたいにちゃんとぶつかれるのかどうかあんまり自信がないです。

笠島 智
似ていないところで言うと姉であることですね。私は実生活では兄がいる妹なので、人生のだいたいのことは兄の脇から覗き込み学んできました。性別は違いますが、どこか長男として過ごす兄の背中と長女として描かれる聡美さんの姿は重ねて見える時がありましたね。 似ているところ…一人きりになると顔つきが変わるところでしょうか笑。あとは良く笑うところも似ていると思います。

ナナメのろうか

▼本作で印象的な子どもの頃の遊び。ご自身の記憶にあるものは?

-子どもの頃の遊びで覚えている遊びについて、エピソードも含め教えてください。

吉見茉莉奈
「ごっこ遊び」か、シルバニアファミリーで遊ぶのが好きでした。昔から何かになりきるのが好きなのは変わってないですね。

笠島 智
私が小学生の頃は、一輪車が一大ブームでした。ピンクとか薄い紫とか赤とか各々の一輪車を持参して校庭で花のように舞っていた女の子たちの姿を良く覚えています。私は、その頃ちょっと好みが偏っていて日が暮れるまで走るか、竹馬の練習をしていました。しかも一人でです。
最終的には一本の竹馬でジャンプしながら校庭を一周できるまでになりましたし、運動会では毎年リレーの選手になることが出来ました。なので劇中の走るシーンはかつての思い出もあり燃えました。

▼深田監督の演出について

-監督の演出は、いかがでしたか?

ナナメのろうか
深田隆之監督

吉見茉莉奈
撮り終わるまで迷うことも多かったですが、監督も一緒に迷ってくれたし、ずっと俳優と一緒に模索し続けてくれたな…という印象です。

笠島 智
オファーを頂いた時から説明は受けていましたが、実際の撮影期間の倍以上の時間を「本読み」から「立ち稽古」で過ごしました。 私にとって初めてのことでしたが、それと同時にありがたく、贅沢な時間でした。同じ台詞のはずなのにその日その日で何か違って見える景色だとか、心情の変化だとか。今までは撮影前に独りで戦わなくてはいけない小さな気づきみたいなものも、全て全員で共有しながら進むことができた実感がありました。それは撮影に入ってからも変わらず、深田監督はその部分を一番大切にしてくれていた気がしました。

ナナメのろうか

▼『ナナメのろうか』というタイトルについて考えたこと

-『ナナメのろうか』というタイトルについて抱いた考えや思いについてお聞かせください。

吉見茉莉奈
脚本をもらった当初は「ナナメのろうか」の意味についてあまりよくわかっていなかったと思いますが、作品について考えるにつれ廊下がナナメに感じるいっちゃんも、傾いてないと感じるさっちゃんも、どちらも間違ってないんだな…と思いました。

笠島 智
私自身がかつて感じたことがあったので、その思い出が蘇りました。幼い頃過ごした祖父の家の床の一部が腐食か何かでふわっと柔らかい場所があって、そこで止まると真っ直ぐに立てないんです。次ここで立ち止まったら床が抜けてその向こうは底なしの穴になっているかもしれない、などとなぜか怯えていた記憶があります。
完成した作品を観ていると、私のこの思い出も何処かにいるようでした。もしかしたら観てくださる方にも私と同じように、ご自身のいつかの出来事がふと蘇ったり、そんなことが起こりうるのではないかなと思いました。

▼撮影時のエピソードを教えてください。

-撮影時のエピソードがありましたら、教えて下さい。

吉見茉莉奈
すごく時間にゆとりを持って撮影が進行したので、なんと脚本には存在しないシーンやカットまで撮れてしまいました。そして映画の中に違和感なく入っています。どのシーンかわかりますか?あと、リサイクルショップが大好きな笠島さんに、撮影帰りリサイクルショップに連れていってもらったのは良い思い出です。

笠島 智さま
実は、完成した作品にはもともと脚本にはないシーンが含まれているんです。当日現場で創り上げたシーンだったのですが、とても好きなシーンになりました。アドリブだったのもあって、そこではこっそり私の母の実際のエピソードを織り込ませてもらいます。

ナナメのろうか

▼撮影地の家について

-撮影地となった家の思い出について教えてください。

吉見茉莉奈
控室として使わせてもらっていた、一階の和室。居心地が良くて、笠島さんとたくさんおしゃべりしながら過ごしていました。キャスト・スタッフみんなで毎朝ラジオ体操した庭も好きです。

笠島 智
作中一切使用しなかったお部屋が唯一あります。普段はその部屋で朝の準備などをさせて頂いていました。うまく言えないのですが、その部屋が一番人の気配があって。窓からは庭とその向こうの通学路や空が見えて、その特等席にはちゃんと座布団が敷いてあって。なんだかずっと窓の向こうを見ていられるというか、この家の中で一番良い場所だよ、と教えてくれているようでした。    その部屋に戻るとなんとなく安心する。そんな空間でした。毎朝その部屋で妹役の吉見さんと隙間があればおしゃべりし、お煎餅齧ってぽかぽかと過ごしながら準備していました。   
あとはやっぱりお庭ですね。撮影期間毎朝、スタッフ全員でラジオ体操していたんです。あの時間は素敵でしたね。

▼ 映画を観にいらっしゃるお客様へのメッセージ

-映画を観にいらっしゃるお客様へのメッセージをお願いします。

吉見茉莉奈
姉妹たちと一緒に映画の中で迷子になって、その先に何か見つけてもらえたらすごくうれしいです。皆さまの感想を聞けるのを今からとても楽しみにいます。

ナナメのろうか

笠島 智
映画「ナナメのろうか」に気持ちを向けてくださりありがとうございます。この作品は、ある束の間の時間を描いていま す。そしてこの時間というのは、数年経てば思い出せなくなってしまう時間なのかもしれません。でもその束の間の時間を揺れ動く二人の姉妹と、それをじっと見つめてきた古いお家の姿は、観てくださるお客様一人一人の思い出のどこかに形は違えども存在している気がしています。この作品を通して、忘れてしまっていた時間やいつか抱えたことのある想いと再び出会ってもらうような機会となれば嬉しいです。

ナナメのろうか

■ 映画『ナナメのろうか』作品情報

それぞれの”いま”をきる姉妹。どもの頃にはもう戻れない

あらすじ
改装される予定の祖母の家に来た姉妹、聡美(演・笠島 智)と郁美(演・吉見茉莉奈)。妹の郁美は妊娠し、シングルマザーになる決意をしていた。2人は家に残された物を片付け始めるが、昔遊んだおもちゃ箱を見つけ、こどもの頃のように遊び始める。しかし、お腹の子どもをめぐってお互いの溝が露わになり、2人は家の中ですれ違い、会えなくなってしまう。嵐の夜の中、姉妹は暗闇の中でお互いを呼び合うのだった。

クレジット
出演
吉見茉莉奈 笠島 智

スタッフ
監督・脚本・編集:深田隆之 撮影:山田 遼 録音:河城貴宏 照明:小菅雄貴 助監督:高橋壮太 制作:南 香好 音楽:本田真之 整音:黄永昌 カラリスト:山田 遼 英語字幕:上條葉月 配給:夢何生 製作:√CINEMA

公式webサイト:itchan-and-satchan.com  

予告編:https://youtu.be/-V4hFSxIS7M

9/10(土)~9/23(金) ポレポレ東中野にて、レイトショー上映

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