映画『とおいらいめい』Q&A。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022。

映画『とおいらいめい』Q&A。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022。

2022年7月17日(日)、SKIPシティ 映像ホールにて、映画『とおいらいめい』が上映され、上映後に監督、キャストによるQ&Aが行われた。その模様を掲載。

とおいらいめい
左から)田中美晴、大橋隆行監督、吹越ともみ

■ 映画『とおいらいめい』監督、キャストによるQ&A

▼あいさつ、自己紹介

-それでは早速ゲストの皆様および主演のお二人とのQ&Aを始めたいと思います。まずトリプル主演をされました次女・花音(かのん)役の田中美晴さん。続きまして長女・絢音(あやね)役の吹越ともみさん。最後に大橋監督、舞台までお願いいたします。ありがとうございます。
ではまず初めにそれぞれ本日ご来場の皆様に一言ずついただきたいと思います。

大橋隆行監督
2時間半、本当にありがとうございました我々も大きなスクリーンで見る機会が今回初ですし、またお客様と一緒に見るのも初めてだったので、もうなんか、気持ち悪くなりながら見ていました。ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
ありがとうございます。

とおいらいめい

吹越ともみ(長女・絢音役)
長女の絢音役を演じました、吹越ともみです。今日は夜遅くまで本当にありがとうございます。
お手洗いなど皆さん大丈夫ですか。もうちょっと、はい。私も頑張りますのでよろしくお願いします。

とおいらいめい

-はい、ありがとうございます。では最後に花音役の田中美晴さん、よろしくお願いいたします。

田中美晴(次女・花音役)
花音役の田中美晴です本日お暑い中へお越しいただきました。ありがとうございます。少しの時間ですが、ぜひ楽しい時間を過ごせたらなと思いますのでよろしくお願いします。

とおいらいめい


-はい。ありがとうございます。それでは早速皆様の方からたくさんのご質問されたいことあるのではないかというふうに思いますので、Q&Aの方に入りたいと思います質問のある方ございましたら、挙手でお願いいたします。

▼質問:髙石あかりさん演じる“音”と最初は距離があるところから、家族・三姉妹になっていく部分について、監督はどのような演出をされましたか?

大橋隆行監督
どうしてましたかねぇ…
この映画は、2020年の3月にクランクインをして、1週間ぐらい岡山の方でロケをしたんですけど、その時にはまだ本当コロナ前だったので、おうちの方で、合宿みたいな感じでやっていったんです。
3人それぞれ、もう家族のように仲良くなるっていうのは、割とスッ…とやってくれたのかなあとは思うんですよね。それぞれのお芝居の雰囲気が個性的というか、かぶらない良いバランスだったので、僕はもう、“このシーンではどれぐらいの距離感が欲しいか”というところを、絶えず考えて、あとはもう3人のお芝居のアンサンブルといいますか、そういったもので、いいなと思うものがたくさん撮れたので、気にしていたのは距離感だけだったかなと思います。

▼質問:姉妹を演じられたお二人は、撮影の際にどういった準備をされましたか?

吹越ともみ
監督がおっしゃっていたように、合宿か修学旅行の気分でした。スタッフさんもごちゃまぜで一緒にみんなで頑張ったっていう思い出がすごくあります。
私も距離感だけは、大切にしたいと思っていたので、お芝居するにあたって気をつけた記憶はあります。
あと個人的には、(髙石)あかりちゃんと(田中)美晴ちゃんもそうなんですけど、すごくかわいくて、かわいいに伝染されてしまうので、普段のプライベートのSNSを覗き見しないようにしていました。

とおいらいめい

田中美晴
まず私からするともうお姉ちゃん・吹越さんもあかりちゃんもすごく可愛くて、三姉妹で幸せだったなって思いが強いです。やっぱり寝食を共にしていたのもあって、おのずと距離感も縮まって、お料理も一緒にやったんですけど、やっぱりおねえちゃんはおねえちゃんでちゃんとしっかり、朝一番早く起きて、いつもお料理を手伝ってくれていましたよね。

とおいらいめい

吹越ともみ
お腹がすいてるだけで(笑)

田中美晴
私はそこを「ぁ、やっぱりおねえちゃんだ」と思いながら、ちょっと手伝う程度で、妹みたいに甘えさせていただきました。
そんな感じで、自然と…というのが多かったです。

■質問:舞台作品から映画になるまでのきっかけからの過程を教えてください。

-私の方からまず大橋監督の方に質問させていただきたいと思います。
この作品は、世界の終わりというテーマと同時に家族の創成みたいな、非常に対照的なテーマを見事に融合させていたというふうに思うんですけれども、原案として2020年に我々の映画祭で『あらののはて』という監督作を出品していただいた長谷川朋史監督、この作品では撮影監督も務められていると思うんですけれども。
2004年の舞台というのが原案にあるというふうに伺ったんですけども、実際にこういった形で映像作品・映画になるまでのきっかけからの過程を教えていただけますでしょうか?

大橋隆行監督
僕は普段ブライダルの方で撮影の仕事をしているんですけど、そちらの方で長谷川さんとは知り合いました。それは2018年だったと思うんですけど、当時僕の作品が池袋シネマ・ロサの方でレイトショーで公開していただいていたタイミングで長谷川さんが僕の作品を見てくれて、興味を持ってくれたのかな…。
元々、長谷川さんはご自身の舞台を映画として残したいっていうふうに思っていたようで、作品を観て面白がってくれた長谷川さんが、「こういう台本があるんだけど、映画にしてみませんか?」と声をかけていただいたのがきっかけで映画化がスタートしました。
なので、2018年から4年かけて、ここまでたどりついた感じです。

-舞台の方は演出も長谷川さんがされていたそうですね。

大橋隆行監督
作・演出、ちょろっと出演もされていたようです。

-今回、映像・映画としては監督が大橋さんですけれども、逆に長谷川さんが撮影監督に徹しきった
形でされていらっしゃったんですか。

大橋隆行監督
そうですね。「どういじってもいいよ」って言ってくれて、「その代わり、撮影は自分にさせてくれ」っていう唯一の注文がそれでした。
原作の舞台の台本からはいろいろと変えさせていただいて、映画にしたという感じになっています。

-実際にどういったところを映像化するに当たって、特に大きく変えられたのでしょうか。

大橋隆行監督
原作の方は双子の姉妹が主人公でして、一幕一話もの。主演のお2人は明日彗星が落ちてきて世界が終わるという状況を知らないっていうお話だったものを、完全にロケに変えて、三姉妹に変えて、
3人は近々世界が終わることを知っているというふうに、自由にやらせていただきました。

-かなり大胆に、設定から何から全て変わっている感じなんですね。

大橋隆行監督
家族になっていくっていう部分は、「ここは守らなきゃな」って思いながら、やっていましたね。

■質問:ロケ地に岡山県の牛窓を選ばれた理由とロケ地の思い出をお聞かせください。

大橋隆行監督
牛窓選んだ理由なんですけど、原作で撮影監督の長谷川さんは元々岡山の出身の方です。僕の作品を観てくれたときに、「瀬戸内海の風景が、君には合うんじゃないか」っていうお言葉をいただきました。
僕はずっと関東周辺でロケをしてきたんですけど、そろそろ場所探しにも限界を感じていたタイミングだったので、ちょうどいいきっかけだなと思って岡山の方に行ってみたらすごく良かったので、メインは岡山で撮ろうっていう感じになりました。

-これは言いそびれましたけど、世紀末感の重さみたいなものが町に漂っていて、すごいなと思いました。

大橋隆行監督
ありがとうございます。
めちゃめちゃ探したので、昔ながらの風景の感じがすごくいいなと思っています。
時間が止まった感じというか、それはもうぜひ作品に取り入れたいなっていうのがあったので、そう言っていただけると、嬉しいですね。ありがとうございます。


ー本当に美しいロケーションだったというふうに思いますけれども、吹越さんと田中さんの方にお一方ずつ実際のロケ地での思い出をお願いします。

吹越ともみ
私は岡山の隣の広島県出身で、瀬戸内海の海には、なじみがあったので、懐かしい感じといいますか、見たことがあるような風景だなあと思いながら、帰ってきたような気分になって撮影していたと思います。海はやっぱりすごい綺麗でした。

とおいらいめい

田中美晴
まず海がすごく綺麗だったので、自然とゆったりとした気持ちになって、みんな穏やかに撮影ができたかなっていう形で、あとはご飯が美味しかったです。
あのサワラが美味しくてですね。
岡山ってサワラが有名なんですよね。

大橋隆行監督
すごい美味しかったですよね。

田中美晴
お刺身が特に美味しくて、みんなでたらふくいただいた記憶があります。

▼質問:数多くの食卓のシーンについて

-今ちょうど食べ物が美味しいというお話があったので、ちょっと私の方から一つの聞いてみたいと思っていたのが、この映画は食卓を囲んで食べるシーンが繰り返し多用されていたと思うのですが。
これはどういう思いでそういうシーンを入れたのか、これだけの数を入れたのか、すごく不思議でした。

大橋隆行監督
さっきも話題に出たんですけど、2014年に『押し入れ女の幸福』という短編の方で、SKIPで上映していただいたんですけど、そのときに、お話が数百年というスパンを30分の短編で描くということをやっていたんですけれども、時間経過を表すのに、食事の変化を描くとすごくやりやすいなっていうことに気づいて、それ以降、割とどの作品でも食事のシーンを撮るようになったんです。

セリフを使うことなく、誰が誰と何を食べるかっていう情報で、今の状況を端的に説明できるなっていうのをすごく食事のシーンに感じるのと、あとシンプルに、俳優さんによってどのぐらい食べるのかどうかっていうのが結構違ってきて、それを見ているのも面白いんで、割といつもやってますっていう感じですかね。

とおいらいめい

▼質問:シネスコサイズの選択について

-シネスコサイズを使った意図が、監督の意図だったのか撮影の方の意図でこういうフォーマットを使ったのかどちらでしょうか

大橋隆行監督
今回のシネマスコープというサイズなんですけど、シンプルに好きだっていうのが一つあるんですよね。上映前にサイドのカーテンがグワーっと開く感じがすごく好きで、映画館で観てるなっていう気持ちになるというのがあります。
あとはやっぱり岡山の風景をちゃんとダイナミックに美しく収めてほしいなっていうところがあったので、撮影の長谷川さんと最初に相談をして、「シネスコで行きたいです」とお伝えした感じです。

▼質問:三姉妹の女優と子役の関係について

-登壇されてる女優さんは三姉妹とも、とてもすごく良い画になったんですけど、子役の方の演技が、めっちゃくちゃ良かったと思うんですよ。特に今回の場合、登壇されてる2人の女優さんに対する、子役の方がいらっしゃるっていうことで監督は、子役の方にどう演出したのかわからないんですけれども、例えば、自分の子どもの頃の演技をするわけなので、俳優同士の間での何かコミュニケーションだとかそういうのはあったのか、とっても、リンクしているなっていう感じがしたんです。別の人格じゃなくて本当に登壇されている女優さんの子ども時代の感じっていうのはすごく観ていて受けたので、そういったところの演出だとか、それからあと俳優同士の何かがあったのかっていうのを伺えればと思います。

-次に子役の演技ですけれども、監督の方から子役の方への演出の面と、俳優さん・吹越さんと田中さんは実際にその自分の少女時代を演じられた方との何かコミュニケーションが、現場であったのかの二つを聞いてみたいと思います。

大橋隆行監督
ちょっと後半の回答とかぶってくるんですけど、実はロケが始まった段階では、まだ子役は決まっていなくてですね、1週間岡山で撮り終えて、関東に帰ってきてからキャスティングが始まった感じなんです。
お二人と子役の二人があったのは、完成試写の段階だったんです。オーディションに来ていただいた十数名の子供たちの中から、お芝居をしていただいて、いいなって思った2人を今回選んだんですけど、たまたまお2人と雰囲気が似ている二人が最終的にとても良かったっていう、ラッキーな部分があって、現場にいても現場にいる2人とすごく雰囲気が似ているというか、お姉ちゃんはやっぱり真面目なんですよね。子役の方も。
花音役の子は本当に自由に走り回っているような子で、田中さんがどうこうという話ではなくて、大人と子どもを近づける苦労は特にしなかったっていうのがすごくやりやすかったですね。

あと、演出面で言えば、割と2人に自由にやってもらったところがあります。夏ロケが子役たちと髙石あかりさんとがいたんですけど、撮影イン前の1日を使って、ロケ地の海で3人で遊んでもらって関係性を作ってもらった上で現場に入ったので、割と髙石さんが2人を構って、現場でもワイワイやってる感じがもう、3人が兄弟みたいになっていました。
多分それで雰囲気が和らいだんだと思うんです。子どもたちも割と伸び伸びやってくれたので、
僕としては見守っていたっていうところが強いですかね。

-すごい奇跡みたいだったんですね。いま、回答になってしまったと思うんですけど、そういう意味で言うと、全く子役の方々とのコミュニケーションはなかったということですが、実際に、自分の少女時代を演じられている子役のあの少女たちをご覧になられた自分自身、どういうイメージでしたか?実際に映画の中で。

吹越ともみ
すごく不思議な感覚で、私の幼少期の小さいときとは全然似てないんですけど、「私、こんなにかわいかったかな」って錯覚してしまうぐらいかわいくて、似せてくださっていました。
お芝居もそうなんですけど、特に花音と姉の前髪の感じだったりとか、私のほくろも、ちび絢音ちゃんは実はほくろを描いてくださったりして、ビジュアル面でもヘアメイクさんが寄せてくださったので、素直に感動しましたし、やっぱり大人の絢音としてはすごく嬉しかったです。

とおいらいめい

田中美晴
ちょっと似たような感じなんですけど、初めて試写会で、まず映像で私達2人が小さいときを
演じてくれてるのを見て、何か感動してしまって、自分なのに、「かわいい!」って。
二人ともかわいらしくて、「こんな幼少期だったんだ私達…」と思っていたら感激していましたし、
試写会で初めて会えたときは、感無量という感じでしたね。すごく嬉しかったです。

■質問:コロナの影響と、コロナ禍のいま、本作を観る意義について

-コロナ禍の現状と相まって胸に迫るものがありました。
撮影もコロナの影響で中断されたということを見ましたけども、どんな影響があったのか。
また、今、コロナ禍がちょっとずっと復活してきて、感染がひろがっていますけれども、いま観てもらう意義をどのように感じていらっしゃいますか。

大橋隆行監督
実際、撮影に関しては、3月に1週間ぐらいロケをして、関東に帰ってきたんですけど、そのタイミングぐらいで緊急事態宣言に入りました。
本来であればそのままシェルターのシーンや家の中のシーンを撮る予定だったんですけど、撮れなくなってしまいました。「どうしようか」とスタッフ間でいろいろ話し合った結果、「まあ仕方ない年末に持ち越そう」ということになりました。
その間にずっと、できることは全部準備しようということで、僕はずっと編集をやりながら、シェルターもロケ地が決まっていなかった段階だったので、役所とかいろいろ動き始めてからあちこち探したりとかっていう感じで、本当に1年がかりで撮った作品になりますね。

とおいらいめい

でもそれが逆にプラスに働いたというか、ゆっくり冷静になって、作品のことをいろいろ考える時間が作れたので、ここはいらないなっていうシーンを切ったり、逆にこういうのがあった方がわかりやすいかなっていうところを出したりとか、演じていた皆さんがどうだったかわからないんですけど、演出する側としてはすごくいい時間だったなって感じます。

「今このタイミングで」とのことなんですけど、割と僕はいつも“別れを意識した人たちがどう生きていくか”ということにすごく興味があって、そういうのを描いてるんです。普段、皆さんはそういうことを考えないのかなって今までずっと思ってたんですけど、やっぱりこういうふうに今、コロナやウクライナの情勢があって、“死”みたいなものを身近に感じる環境にあるっていうのが、良くはないんですけど、僕の作品を見ていただく上では、一歩近づきやすい状況にはなってくれているのかなってちょっと思ったりはしています。決していい状況ではないんですが。

ー最後に大橋監督の方から一言、代表していただけますでしょうか?

大橋隆行監督
改めまして今日は長い時間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
スクリーン上映と配信のハイブリッドを推している映画祭の公式の場でこういうことを言うのもあれなんですけど、本当にあの大きなスクリーンで見ていただきたい作品になっています。
決してとは言わないですけど、テレビとかスマホで観ずに、何とか劇場に足を運んでみていただきたいなとすごく思います。
ゆったりと流れる時間をとても魅力的な三姉妹をはじめキャストの方が揃っていただきました。あと、瀬戸内の美しい風景も収めていると思います。
ゆっくりなんですけど、3人が過ごす時間を一緒に味わってもらえる、こういう真っ暗な中の大きなスクリーン、大きな音を、そういう環境でぜひ見ていただきたいなと思います。
まだあと1回上映が残っていますが、その先にですね、8月の27日から池袋シネマ・ロサという劇場でですね、4週間のレイトショーで公開になりますので、どうかよろしくお願いします。
皆様の感想もぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。
改めまして本日は本当にありがとうございました。

作品紹介 https://www.skipcity-dcf.jp/films/intl03.html

とおいらいめい

映画祭カテゴリの最新記事