単独上映にあたり監督自ら再仕上げ。映画『愛のくだらない』初日舞台挨拶。主演女優の親子に流れた気まずい空気。撮影時に遭遇した“甲種輸送”とは。

単独上映にあたり監督自ら再仕上げ。映画『愛のくだらない』初日舞台挨拶。主演女優の親子に流れた気まずい空気。撮影時に遭遇した“甲種輸送”とは。

10月30日、池袋シネマ・ロサにて、映画『愛のくだらない』の単独公開が開始。初日舞台挨拶が行われ、MCに橋本紗也加、野本梢監督に加え、キャストの藤原麻希、岡安章介(ななめ45°)、長尾卓磨が登壇。作品づくりの経緯や撮影中のエピソードを語った。本作は、野本梢監督自身に自らの発言で起こってしまった出来事を元に、様々な反省を映画にしたいと思って作られた作品。9月にテアトル新宿で上映されたものではなく、今回の上映にあたり監督自ら再仕上げを行っているという。

愛のくだらない
左から、橋本紗也加/長尾卓磨/藤原麻希/岡安章介/野本梢監督

■映画『愛のくだらない』

【ストーリー】
テレビ局で働く玉井景(藤原麻希)は、芸人を辞めてスーパーで働く彼氏のヨシ(岡安章介)と同棲している。体調不良で仕事をすぐ休み 、結婚に対してはっきりしない。そんな頼りないヨシを置いて景はついにある嘘を隠したまま家を出る。 ヨシからの着信が鳴り止まない中、番組制作に意気込む景だったが、出演をオファーしたトランスジェンダーの金井(村上由規乃)を取り巻くトラブル、嫉妬、意地の張り合い…。多忙を極める中で次第に周囲と歯車が狂い始めた景は、ヨシにすがろうとするも、電話に出ないヨシ。 家に押しかけると、見知らぬ女が。そしてヨシからある事実を告げられる--

■映画『愛のくだらない』舞台挨拶&トークイベント

初日舞台挨拶には、主人公・玉井景役の藤原麻希。その同棲中の彼氏役の岡安章介。景に仕事を依頼するプロデューサー・金城信吾役の長尾卓磨。MCとして劇中で景の友人・スミス椿役の橋本紗也加、そして野本梢監督が登壇した。

▼映画を観に来た両親と気まずい空気に…

藤原麻希
前回の上映(2021年9月、テアトル新宿)は緊急事態宣言下で、上映後の出口やロビーで映画を観ていただいたお客様とお話ができない状態でした。でも、私は地道に映画のレビューを読んでいました。普段お会いすることがない方からの多くの声をいただいて、参考にも励みにもなりました。
両親が観に来ていて、冒頭の(ラブ)シーンがあったので感想を言いづらかったみたいです。そこには触れずに、両親からやんわりと「良かったね」って言われて、若干気まずい空気が親子の間で流れたのを覚えています。

愛のくだらない
藤原麻希(主人公・玉井景 役)

野本梢監督
いい思い出になりましたか?

藤原麻希
そうですね(笑)

▼目指せロングラン!

野本梢
岡安さんはいかがでしたか?

岡安章介(ななめ45°)
こういった舞台挨拶やトークをすることはなかなか無い中、今はサインを求められても断らざるをえない時期なので、サインを書ける時期になったらまた来たいと思いますね。

愛のくだらない
岡安章介(萩原慶 役)

野本梢監督
ロングランを目指すということですね。

▼大阪での上映時の思い出

野本梢監督
田辺・弁慶映画祭セレクションで、テアトル新宿の後にシネ・リーブル梅田さんで上映しました。紗也加さんは大阪出身ということで、一緒に来ていただきましたが、いかがでしたか?

橋本紗也加
田辺・弁慶映画祭には、過去に行ったことがありましたが、コロナウイルスの影響で今回は参加できませんでした。ただ、過去に田辺・弁慶映画祭で出会った人がシネ・リーブル梅田に来てくれていました。そこで久しぶりに会うことができて、お声がけくださって、話すことができたので、それが嬉しかったです。

愛のくだらない
橋本紗也加(スミス椿 役)

▼作品作りのきっかけは?

橋本紗也加
野本監督は今まで短編作品をつくられてきて、今回、監督ご自身でのオリジナル脚本・長編作品を作られたわけですが本作のきっかけは?

野本梢監督
田辺・弁慶映画祭で四年前に紗也加さんが主演の『私は渦の底から』という同性愛の女性が主人公の作品を撮らせていただいて、その作品が「第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でグランプリ」でグランプリをいただいていて、作品の経歴として記載がされていたんですけど、あるイベントをするときに、その部分を取り下げてほしいといわれてしまったことがありました。
そのことについて「何でなんだろう…」と思っていたら、「“レズビアン&ゲイ”という言葉が入っていると、若い人や子どもたちに説明しづらい」と言われてしまったんです。それがショックだったとTwitterでつぶやいたら、反響というか炎上というか、「それはおかしい」と声を上げてくださった方がたくさんいらっしゃいました。
それがイベント主催の方への誹謗中傷につながってしまって、そういったつもりはなかったけど、どこかで火をつけてしまった自分がいたというところに反省をしたということが「第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」の後から今に至るまでありました。
自分のいろいろな反省を映画にしたいなと思って『愛のくだらない』をつくりました。

愛のくだらない
野本梢監督

▼藤原さんと野本監督の二人三脚

橋本紗也加
藤原さんと二人三脚で歩んでこられたというのが、大きいと思うのですが、その話をお願いできますか?

藤原麻希
作品を地道にやってきているんですけど、初期の作品をご覧になった方はいらっしゃいますか?

<会場で頷く方多数>

頷いてくださっている方がいらっしゃいますね。今でこそこういう劇場で上映していただけるようになっていますが、最初の頃は実験的な作品に取り組んでいたと言うか、まだまだ未熟だったので、実験的になってしまったという感じでした。プライベートで監督と出会って。「いつか一緒に映画を撮れたら良いね」っていう夢物語から、ようやく実現してここまでたどりつけました。俳優として好きなお友達二人を野本監督に紹介しました。今回の作品は特に、歴代の集大成のような方々がたくさん出演されていて、観るたびに幸せな気持ちになります。
なんとなく、ここで集大成だとは思っちゃいけないなと思いながら、もっともっと頑張らなくてはいけないなって励みをもらう作品です。

野本梢監督
こちらこそといった感じです。長編を撮るなら麻希さんで撮りたいという気持ちがずっとありました。自分のことを投影した作品だったので、それを委ねられるのは麻希さんだなって思いました。それがふたりでつくった“景”という役なんだなって思います。

藤原麻希
私は本来、野本監督とは間逆な人間なんですけどね。プライベートだと野本監督がずっと話しをきいてくれるタイプで、ずっと私が話していて、一緒にいると“景”っぽい要素はほとんどないんです。
ただ、多分、内に秘めた部分には彼女が書いた作品を私が演じるとああなるっていうものがあるかもしれません。同じB型でもこんなに違うんだというくらい間逆なんです。

▼岡安さんの芝居

野本梢監督
今回、こういった強い“景”という役でしたが、岡安さんが演じてくれるヨシさんがいて、より良いなと思いました。特に私が演出した覚えはないんですけど。

岡安章介(ななめ45°)
全部、監督の言うとおりにやりましたよ。

藤原麻希
全然、そんなことないですよ(笑)

野本梢監督
私が伝えたのは「ちょっとふざけすぎ」ぐらいのことだったと思います。何か参考にしたことはありますか?

岡安章介(ななめ45°)
僕はお笑い芸人をやっていて、まわりに先輩も後輩もいて、結構な確率で辞めていってしまう人がいました。そんな人達を間近でみていたので、自分の中に取り入れやすかったです。ちょっと昔の芸人っぽい雰囲気を出しつつもちょっと恥ずかしそうにする感じは自分の中ではいい感じだと思っていました。

愛のくだらない
左)藤原麻希 中)岡安章介 右)野本梢監督

野本梢監督
結構、演じられていたんですね。

藤原麻希
素だと思っていました。

岡安章介(ななめ45°)
私は現役のお笑い芸人ですから、まだ辞めていません!
そんなイメージと言ったものが、ちょっとありました。

藤原麻希
あまりにも自然に現場にいらしたので、演じている感じが全然しなかったです。

岡安章介(ななめ45°)
演じるという感じではなかったですけど、自分の中ではプランがありました。
監督には怒られなかったですよね。

藤原麻希
我々は笑いっぱなしでしたけどね。シーンのことあるごとに(笑)

野本梢監督
根矢さんとの病院で診察券を入れるシーンで、テイクごとに違うことをやられていましたよね。

岡安章介(ななめ45°)
いや、これは前もいいましたけど、根矢さんが仕掛けてくるんです。僕が普通に診察券を出しているのに、向こうからちょっかい出してくるんです。「あれ?さっきと台詞が違う…」って。
「じゃぁ、次はそうしますか」って持って行ったんです。私からは一切、何もしていません。「台本通りにやりましょうよ」って言うような顔(表情)で。

野本梢監督
いや、違ったと思います。

藤原麻希
ずっとこの調子でしたよね。

▼思い出のシーン、好きなシーン

橋本紗也加
思い出深いシーン、好きなシーンがありましたら、教えて下さい。

長尾卓磨
診察券のところですね。

愛のくだらない
長尾卓磨(金城信吾 役)

岡安章介(ななめ45°)
診察券のシーンは、劇中でそんなに大事なシーンじゃないよ。

長尾卓磨
岡安さんがなにかしてやろうっていうところがすごく印象に残っています。瞬間的な表情だったり。声の出し方だったり。それが蘇ってくることがあります。

藤原麻希
あんなになんともないシーンなのにみんなが思い描けるインパクトはありましたね。

▼“甲種輸送”?

長尾卓磨
あと電車がバックに走るシーンで、いつふざけるのかなと思っていました。
あそこが好きですね。あそこが二人の姿を没入しながら観る…。なんていうんでしょうね。すごいいいですよね…

橋本紗也加
岡安さんが一番興奮されていたシーンだって耳にしましたが。

岡安章介(ななめ45°)
僕は実は鉄道が大好きで。隠しているんですけど(笑)
あのシーンは、ちょうど東海道線が走ってくるんですけど、実は撮影中に西武鉄道の特急ラビューという、銀色で、正面のガラスが円くて、窓は足元くらいまである特急列車があるんですけれども、それが“甲種輸送”といって、工場から西武鉄道まで運ぶのにJRの東海道線を使ったんですよ。「うわ、すごいぞ!すごいことが起きていますよ!」って。その時に僕は撮って欲しかったです。

愛のくだらない
左)藤原麻希 中)岡安章介 右)野本梢監督

藤原麻希
絶対に、身が入らないですよね。芝居どころじゃない。
めちゃくちゃ熱量がすごかったですものね。

野本梢監督
現場は押しているし…

藤原麻希
ショッピングモールの閉店の音楽がずっと流れていて、撮影ができなかったんですよね。
駐車場の出口の車が出ていく音が鳴ったりね。音の問題がありました。特急ラビューどころじゃなかったんですよね。でも勉強になりました。“甲種輸送”っていうものがあるっていうことを知ることが出来ました。

岡安章介(ななめ45°)
あれはね、鉄道会社にお金を払って運ぶんです。間借りして線路を走らせるわけですから。

藤原麻希
あのあとYoutubeでみちゃいました。

岡安章介(ななめ45°)
甲種輸送をですか?やばいじゃないですか。Youtubeの履歴をあとでみせてくださいよ。甲種輸送をみちゃってるんだもんなぁ。監督、次回の作品は『甲種輸送』で。

▼映画を観に来る方へのメッセージ

藤原麻希
野本梢監督は上映するたびに作品をご自分で再編集して、磨きをかけていくタイプらしく。今回の作品も毎回変わってきていて、それがヒットする方とそうでない方もいらっしゃると思いますが、今回の作品はいろんなキャラクターがでていますので、どこかのシーンの誰かの感情に、リンクするものがあったりとか、何気ないことがすごい幸せなんだというものを感じていただける作品になっていると思います。今後も是非上映していただけるような作品でありたいと思いますので、応援の程、よろしくおねがいします。

愛のくだらない
左)藤原麻希 右)岡安章介

岡安章介(ななめ45°)
今日から3週間お世話になりますので、お友達をお誘いの上、是非、観てください。「あのシーンの前に“甲種輸送”があったんだ」と、2回目はまたちょっと違った観方ができると思います。今後ともよろしくお願いします。

愛のくだらない
上映後のキャスト・監督によるお見送り

■監督プロフィール

野本梢(のもとこずえ)
山形生まれ埼玉育ち。 学習院大学文学部卒。 シナリオセンター、映画24 区で脚本について学び、2012 年よりニューシネマワークショップにて映像制作について学ぶ。 人を羨み生きてきた為、奥歯を噛み締めて生きる人たちにスポットを当てながら短編映画を中心に制作を続けている。2020 年、初長編『透明花火』にて劇場デビュー。第14 回 田辺・弁慶映画祭にて、『愛のくだらない』が弁慶グランプリと映画.com 賞を映画祭初のW 受賞。

■映画 『愛のくだらない』(2020/日本/95 分)

新人監督の登竜門「田辺・弁慶映画祭」にて弁慶グランプリ・映画.com 賞 ダブル受賞!

『横道世之介』の沖田修一監督や『あのこは貴族』の岨手由貴子監督ら、これからの映画界を切り拓いていく才能を輩出する田辺・弁慶映画祭にて異例の弁慶グランプリと映画.com 賞をダブル受賞した期待作。
本作は”女性のキャリアと出産”という話では、ない。ひとりの30 代の人間が、忙しさや意地の張り合いから、仕事でもプライベートでも失敗しながら成長する姿を描く。キャストでは、監督の処女作から共にする藤原麻希に加え、お笑いトリオ・ななめ 45°の岡安章介が、誰にも言えない秘密を抱えた恋人役を好演。「生きづらさ」を感じている人々を描き続けてきた新鋭・野本梢監督が、自身のリアルな体験を元に描いた渾身の一作である。
一度炎上したら「厄介者」のレッテルを貼られてしまう今、見るべき話題作。

公式サイト: https://kudaranai-movie.com/
公式Twitter: https://twitter.com/kudaranai_movie

【キャスト】
藤原麻希/岡安章介(ななめ45°) 村上由規乃/橋本紗也加/長尾卓磨/手島実優/根矢涼香

【スタッフ】
脚本・監督・編集:野本梢 制作協力:ニューシネマワークショップ 製作:野本梢 株式会社 為一/株式会社 Ippo
配給:『愛のくだらない』製作チーム ©︎2020『愛のくだらない』製作チーム

2021.10.30 (土)より池袋シネマ・ロサにて公開!他全国順次公開!

愛のくだらない
劇場内に飾られたサイン入りバナーとキャスト・監督

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