7月2日(土)、新宿K’s Cinemaにて、映画『初仕事』の初日舞台挨拶が行われた。登壇者は、澤田栄一、橋口勇輝、武田知久、白井花子、小山駿助監督の5名に加え、撮影当時、赤ん坊で、現在8歳になる中村安那ちゃんがスペシャルゲストとしてステージに上がった。
本作は、監督・主演を務めた小山駿助が、“写真機が発明された時代、遺体を写すという行為が世界各地で発生した”という歴史的事実に触れたことから企画が始まった作品。
現代の日本で、現実的に私たちの世代がそのような切実な必要性を持つとしたら、それはどのような人物か。また、そのような絶望に打ちひしがれている人間に相対した場合、私たちにはどのようなことが可能なのか。この特異な題材に正面から取り組まれた物語で、各映画祭での上映時、幅広い年代に支持された。
■映画『初仕事』初日舞台挨拶
▼ごあいさつ
-まず監督・主演の小山さんからお願いします。
小山駿助(監督、安斎役)
壇上から失礼します。監督・主演を務めました。小山駿助と申します。
今日はお越しいただきありがとうございます。
今回撮影した映画ですが、映画は作るだけじゃなくて作ったあと、この数か月間が忙しくて、一緒に走っていただいたいろんな方々に感謝したいと思います。どうもありがとうございました。
澤田栄一(山下役)
はい。本日はお暑い中、ご来場いただき誠にありがとうございます。山下役を務めさせていただいた澤田栄一と申します。そうですね、劇場公開の本日初日ということでご来場いただきありがとうございます。
小山監督をはじめ、田幸プロデューサー、宣伝に関わってくださったスタッフさん、皆さんにこの場を借りてお礼申し上げたいと思います。
橋口勇輝(和夫役)
本日はお暑い中ありがとうございます。和夫役を演じました、橋口勇輝です。
本当にこのような形で公開することができて嬉しく思います。たくさんの人に届くように、もっともっと頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
武田知久(北館役)
北館役の武田知久と申します。本日はお越しいただきましてありがとうございました。
橋口さんもおっしゃったように、皆様に感謝するとともにより多くの方々に届けばと思っております。
よろしくお願いします。
白石花子(真知子役)
こんにちは。真知子役の白石花子です。今日暑い中、皆さん来ていただいて本当にありがとうございます。気付いたら公開になっていて、すごいびっくりしてます。そしてすごく嬉しいです。これから2週間上映しますので、2回3回、観にきてください。
ありがとうございます。
▼作品制作の経緯
-小山監督に対して、作品の経緯などについてからまず伺っていければと思うんですけれども、亡くなったお子さんと依頼されるお父さんと、撮影するカメラマンの交流が流れる本作。
人の死を写真に収めるというテーマはどのあたりから選び取ったとか経緯的なことを伺えればと思うのですがいかがでしょうか。
小山駿助
映画のテーマって、作るには意図的に選ぶもの以外にも、アンテナを張ってというか、生活している中で、題材を汲み取っていくものだと思うんです。
そういう面で言うと私は仕事中にたまたま、今回のような亡くなった方のお写真を撮っておくという文化のようなものを知りました。
かつて写真・写真機という機械が発明されて、世界中でその記録がメインとして残っているのは、ヨーロッパが多いんですけれども、そういった文化というか、ある種風習、習俗のようなものが発生した時期があったことを図書館で仕事をしているときにたまたま見かけました。
これを現代の日本で実際に行ったらどうなるのかなというコンセプトから、考えて作っていきました。
▼監督兼主演を務めた理由
-ありがとうございます。監督だけでなく、安斎役で主演も務められています。その理由は?
小山駿助
自主映画ですので、意思伝達に時間をかけず、自分でやってしまえばいけるということが制作上の理由としはありました。
他にも例えば、前日に他のメンバーの画角を全部撮影し終わった後に、照明やセットだけ残しておいてもらって、次の日に私1人で現場に行ってカメラを回して、自分で「よーいスタート!」をかけてやること、若干離れ技的なところに使えるというのが大きな理由でした。
▼監督兼主演で苦労したこと
-監督・主演を兼ねたことで苦労されたこととかありましたら教えてください。
小山駿助
はい。その分、意思伝達を他のスタッフなり役者の方にきちんとしなければいけないことです。そのための絵コンテの執筆が撮影前日の深夜や撮影が始まる1時間前ぐらいまでずっとオフィスでやっていることがありました。そこが一番苦労したところだと思います。
▼役柄についての解釈と演技への反映
-澤田さんにお伺いできればと思います。中盤から娘への執着を忘れようとする安斎と、カメラマンの山下、その対比が面白いなと思ったんですけれども、役柄について、どのように解釈して演じられましたか?
澤田栄一
そうですね。安斎役の小山監督とは、元々映画研究会という大学のサークルの同期でして、気心が知れた仲ではあったんですけれども、自分自身、役を作り込むということはあまりした記憶はありません。
自分自身、仕事や映画に臨む現場になると、すごい集中してしまうというか、“ガッ”となってしまうような傾向があります。そういったところをわかって、少し当て書きをしてくれたのかなと思ってます。
-小山監督、そのあたりはいかがですか。
小山駿助
ありがとうございます。
そんな感じになりますね。仲間内でやってるとどうしても。
▼ご自身と演じた役
-自身と共通するようなところはありますか
澤田栄一
そうですね、撮影していたのがその8年という最初に話があったと思うんですけれども、私が20代前半の時期だったので、『初仕事』っていう、初めて仕事に臨むという、ちょうどその時期だったので、わからないながらも、がむしゃらにやっていくのが、現場においての感じでした。そのように過ごしていた印象があります。
-続いて橋口さんお伺いできればと思います、山下を見つめる優しい視線がすごく印象的な和夫という役柄でした。最初小山さんから脚本を渡された時に、「何が書いてあるのかわからない」ということをおっしゃったということを聞きましたけれども、演じてみていかがでしたか。
橋口勇輝
何が書いてあるかわからなかったです。
脚本の初稿をいただいたのが、僕が大学5年生の時のことです。
薬学部や医学部ではなく、留年をしていたんですけれども、5年生のときに部室で台本をいただいたときに、今よりもっと、言い方が乱暴なんですけど、着膨れしてるような、いろんな要素が、もっとたくさん詰め込んであって、それを読んだ時に、「これは何を書いてあるんだろう?」っていうところがいっぱいありました。
小山くんは僕のことを本当によく知っているので、僕がわからないことも理解してくれて、「そんなわかろうとしなくていいよ」と最初に言ってもらいました。
山下の上司として、“見守る”じゃないですけれども、そういったところがあるんです。
当時23歳で、やっぱり自分は分かったような気になって、もう少し年齢層高めに設定して演じようとしたりするのかなと思ったんですけど、小山くんに「わからないところはわからないところでいいから、ただちゃんと見続けてくれればいいから」って言われたので、ちゃんと見続けようということはすごく意識しました。
-武田さんにお伺いできればと思います。北館というすごくセリフ回しも不思議な、安斎に負けず劣らずの不思議な役柄だったと思うんですけど。演じてみていかがでしたでしょうか。
武田知久
澤田さんと同じようなことにはなるのかもしれないですけど、その当時の私自身っていうものが見ると、すごく良くも悪くも非常に投影された、これから何をしていっていいのかわからないみたいな人間でした。
今もあまりかわっていませんが…そのような状況だったものですから、自分の一部分であるなという感じで、当時も思っていた節はあると思います。
-小山さんはそれを聴いていかかでしょうか?当てがき的な部分があるのでしょうか。
小山駿助
武田くんはこういう役が得意なので、私としては、何も苦労した覚えはないです。
-白石さん、最後に役柄を演じてみて、印象深い撮影時のエピソードがあれば、ぜひお話いただければと思うんですがいかがですか?
白石花子
私が台本を読んで思ったのは、あまり主軸メンバーと関わりはないんですけども、橋口さんを尻に敷く役だなって思ったので、とにかく尻に敷こうと思って、日々、日頃から実践していました。
あとはもうとにかく元気に撮影現場に行って、元気よく、お芝居をするっていうのを心がけておりました。
▼スペシャルゲストの追加登壇
-はい、ありがとうございます。もうすぐあっという間なんですけどもそろそろお時間になってしまうんですけど、もう1人登壇者の方がいらっしゃいまして、撮影が8年前と言ったんですけど、赤ん坊を演じられた中村安那ちゃんが8歳になりまして、本日、いらしていただいておりますので少しだけご挨拶いただければと思います。
映画をご覧いただいた皆さんに一言何かいただけますか。
中村安那
こんにちは中村安那です。映画で赤ん坊の役を演じました。
ありがとうございました。
-小山さんいかがですか、撮影当時からこんなに大きくなられて。
小山駿助
感動です。
-撮影中のエピソードはありますか
小山駿助
もちろんあります。
私よりも多分カメラマンが一番大変だったと思います。今日いないんですけれども。ほとんど画面を動かさない・カメラを動かさないでやってたので、僕が無理難題というか、「安那ちゃんが動くんですけど、カメラは動かないでください」、「一生懸命動かないようにしてください」っていうふうに言った覚えがあるので、それが一番大変だったと思います。
▼お客様へのメッセージ
ー最後に皆さんから一言ずついただいて終了できればと思います。
白石花子
こんなふうに公開できて、とにかく嬉しいです。暑いですけれども、2週間これから全国に行くと思うので、映画自体を応援していただけたらと思います。ありがとうございます。
武田知久
僕自身、この8年、この中で映画と全く関係ないときも、そのセリフ、いろんなセリフを思い出して反芻してみたりする瞬間がめちゃくちゃ多くて、僕にとって大切な作品です。
みなさんお帰りになると思うんですけど、いろいろと反芻していただいて、いろいろ考えていただいて楽しんでいただければ嬉しいかなと思っております。ありがとうございました。
橋口勇輝
本日はご来場いただきありがとうございました。まだ、この映画はここが始まりというかスタートになるので、よかったらご友人の方たちやご家族の皆さんに今日見た感想をぜひお伝えいただいて、ケーズシネマは2週間上映していて、横浜でも月末にあるのでよかったら皆さんに感想を伝えてあげていただければと思います。ありがとうございました。
澤田栄一
ありがとうございました本当に自主制作映画等というところから始めていますけども、一同、そこに甘んじることなく、小山くんが8年間何度も、あきらめかけたこともあったと思うんですけど、粘って粘って出来上がった自信作だというふうに思っています。
皆様の心にどのように届いたのかがすごく気になっておりますので、SNS等でつぶやいていただけたら、血眼になってエゴサさせていただきますので、よろしくお願いします。
小山駿助
この映画はおそらく“刺さる”っていうか、届く人というか。
私の中ではこういう人が観たらいいんじゃないかなというのが結構あるんですけども、そういうのをおそらくこの場では言わない方がいいと思っています。
そういう方にたどり着くような映画であればいいなと思っています。
近くで大切な方が亡くなった・なくした方が一日でも早く、平常時と同じような生活に戻れるようになればいいなと思っています。
作り終わって、見ていただいて、お客様に対してありがとうございましたっていうことぐらいしか、私には語彙がないというか、それしか言えないです。観ていただきまして、ありがとうございました。
■ 映画『初仕事』 作品概要
ストーリー
写真館のアシスタントである山下は、赤ん坊の遺体の撮影を人づてに依頼され、良い経験になるかもしれないと依頼を受ける。赤ん坊の父親であり依頼主でもある安斎は、始め若い山下に戸惑うも、正直で実直な山下に心を許し、撮影が始まった。遺体の状態を考えると時間がないという状況も、山下の使命感に拍車をかけ、美化すべきでないという倫理観は、目の前の状況に吹き飛ばされる。 一方、安斎も次第に自身を突き動かしていたのが未練だったのではと気づき、山下を止めようとするが…。
キャスト・スタッフ
出演:澤田栄一 小山駿助 橋口勇輝 武田知久 白石花子 竹田邦彦 細山萌子 中村安那
監督・出演・脚本・絵コンテ・編集:小山駿助
撮影:高階匠 照明:迫田遼亮 録音:澤田栄一 メイク:細山萌子 衣装:細山貫之 美術:田幸翔
音楽:中村太紀 助監督:田幸翔/遵真平 プロデューサー:田幸翔 角田智之 細山萌子
配給宣伝◆ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
2020年|日本|94分|16:9|HD @2020「初仕事」
公式HP https://www.hatsu-shigoto.com
澤田栄一 小山駿助
橋口勇輝 武田知久 竹田邦彦 白石花子 細山萌子 中村安那
監督・出演・脚本・絵コンテ・編集:小山駿助
照明:迫田遼亮 録音:澤田栄一 小山駿助 美術:田幸翔
衣装:細山貴之 助監督:田幸翔 逵真平 英語字幕:須藤英理菜 ポスター:中村友理子
プロデューサー:田幸翔 角田智之 細山萌子
2020 / 日本 / カラー/ 94分 / 16:9 / HD
7月2日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー