「Mothers マザーズ」は、「母」をテーマに、5人の脚本家が自己資金で制作したオムニバス映画です。 各脚本家がそれぞれ異なる視点から「母」を描写し、多様な「母」の姿を観客に届けることを目指しています。 インタビューでは、「ルカノパンタシア」の監督であり、「Mothers マザーズ」の企画を立ち上げた難波望、出演者の嶋村友美、森山みつき、藤井太一が参加し、本企画の立ち上げ、作品の内容、キャスティング秘話、撮影エピソード、そして映画を通して観客に伝えたいメッセージについて語りました。
■「ルカノパンタシア」監督、キャストインタビュー
▼01 映画製作のきっかけ
映画製作のきっかけについての対話
インタビュアー:本プロジェクトで、“母”をテーマに選んだ理由、本当の根幹分を聞いてみたいと思います。
難波監督:私は2022年公開のオムニバス映画で”おっさんの違和感”をテーマにした「おっさんずぶるーす」という、オムニバス映画の一編で脚本を書かせていただきました。藤井太一さんとの出会いの作品なんですが、それがすごく面白い企画で、監督の個性が爆発した魅力的な作品でした。
私がオムニバス映画を創るなら何がいいかなと思ったときに、母をテーマにしたら脚本家たちのオリジナリティ溢れる作品になるんじゃないかなという期待感がありました。人は誰しも母から生まれてくる訳ですが、作り手それぞれ母への想いや関係性も異なりますので。
▼02 オムニバス映画制作における監督の視点
オムニバス映画としての構成に関して
インタビュアー:作品に対して、みなさんどのような過程で参加されていらっしゃるのでしょうか?
難波監督:キャスティングに関しては、各作品オーディションだったり、オファーだったり、ばらばらです。自作に関しては、私は自分が脚本に携わる作品のオーディションや撮影現場には必ず行って、俳優のお芝居を見させていただいているので、その中から作品に合っていると感じたみなさんに声をかけさせていただきました。
インタビュアー:オムニバス映画として、5本の作品で構成され、それが「Mothersマザーズ」としてトータル的なバランスを考える上で、様々な作品、作風みたいなもので構成される点について考えるところがあったのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか? 例えば、サスペンス、コメディなど、ジャンルがいろいろあると思うのですが、構成のバランスを考えての作品作りの依頼の仕方ですとか、構成をどのようにお考えになったのでしょうか?
難波監督:映画の楽しさを堪能できるオムニバスにしたかったので、いろんなジャンルの入った作品にしたいと思っていました。そのうえで、各脚本家の作風も大枠では理解しているつもりでしたので、基本的には自由に書いていただきました。
もし似たジャンルが多くなったら、自分がそれに合わせて違うものを書いて調整しようと思っていました。あとは、映画らしい作品に仕上げることには強く意識していました。
インタビュアー:そういうコントロールや、いろいろな声がけをされているのですね。
難波監督:たかはCさんなら楽しいコメディを書いてくれるだろう、高橋郁子さんなら彼女らしい無二もの世界観を持った作品を創ってくれるだろう、武田恒さんなら彼らしい魅力的な人間ドラマを書いてくれるだろうという予測は立てていました。その予測は当たったと思っています。
▼03 映画製作秘話:俳優たちの言葉・感想
インタビュアー:役者の皆さんへの質問です。脚本を最初に読んだときの感想と、撮影・編集を終えて完成した作品を見たときの感想、2つをセットで聞きたいと思います。
嶋村友美:脚本は内容が途中でちょっと変わりましたよね。海凪があんな感じではなかったんですよね。
難波監督:初稿は、そうでしたね。
嶋村友美:私はその点をすごく覚えています。初稿から海凪に幅が出たというか、でも、それでこの話にすごく深みが増したと思っています。
だけどそこで、たぶん(森山)みつきちゃんも私も、役者としての負荷が増したなと思ったのを覚えてます。あとは「海に入るんだな…」ってずっと思っていました。
「海のシーンがあって冬の海に入るぞ、寒いぞ」って。撮影が12月の頭だったから、どうなるんだろう…と思ってそこはドキドキしていました。
撮影当日は、本当に荒れた海だったから、「これで撮れるのか?」くらいな勢いでしたけど、雨が降っているわけじゃなくて天気は良くて、最後の夕日で、結局あれだけの波があった方が、画的にもすごく良かったから、いろいろなことが相まって今日の映像になったから、そういう意味でも本当にがいっぱいあったなって思っています。
藤井太一:まず思ったのは、3人で家族でいた時の家族感というか、どういう家族だったのかというのかをしっかりと持っていないと、ただ感情が流れていくだけで終わる作品になってしまうかなって。
なので、自分がどうやりたいというよりは、自分の中で持つべきものをしっかりもって行きたいなと思っていました。
初めて脚本を読んだ時にそう思った中で、リハーサルもあるし、家族写真も撮るということがあって、これがものすごく大きかったですね。
会ってすぐに撮影になったとしたら…ということを危惧していたというか、それで家族感が出ないと怖いなと思ってましたので。
初めての共演だったので、お二人がどういう方かっていうのも正直にいって、存じ上げてなかったところがありましたから。その怖さっていうか不安感が、リハーサルと家族写真の撮影があったおかげで払拭されました。
お話の中としては、3人で一緒に画面の中でいることは多くはないのですが、そのベースにあったもの、幸せなもの、幸せな時間っていうのを踏まえた上での“今”っていうのがすごく見えました。
だから、安心したというか、作品を見たときに自分が不安に思っていたことは解消されたなと思って、奇跡のような感じでしたね。
森山みつき:私自身は母子家庭で育っているので、3人…父、母、娘みたいな家族像が、ちょっと想像しづらかった部分がありました。劇中は仲のいいシーンも多いじゃないですか。でも私自身は実際は、ずっと反抗期という感じで育ってきたので、だからこそ、改稿した時にすごく自分とリンクするところがありました。
話はかぶってしまうかもしれませんが、家族写真を撮りに行った日は、本当に奇跡の日でした。
公園ではすごく綺麗な黄色とか赤の落ち葉があって、その葉っぱを使って3人で遊んだり、お父さんの頭にはっぱを乗っけて、「たぬき!」みたいなのやったりとか(笑)
私自身、子どもの頃に友達の家に遊びに行った時に、家族ってこんなにあったかいんだって、すごく衝撃を受けた経験が何回かあるんですけど、そんなあたたかさが自分自身に起こっているような、今でもこの日を思い出すと涙ぐむようなすごく温かい日だったんです。
▼04 俳優選定と役作り
出演者へのオファーに関する対話
インタビュアー: ちなみに、皆さんはどのように作品に参加されたのでしょうか?
それぞれどんな気持ちでオーディションに参加されたとか、どんな風にお声掛けいただいたのかとか、声掛けいただいた時の感想みたいなものを聞いていこうかと思います。
嶋村友美:最初のころに難波さんが“オーディションをする”ってSNSにあげていらして。「絶対に受けたい!」と思って、それからずっと難波さんのSNSをチェックしていました。そうしたら、「(出演を)お願いしたい」というメッセージが届いて、「オーディションじゃないのかな?」と。「私でいいんですか?」と思いました。もともとは、「オーディションを受けて勝ち取ろう!」と思っていました。
森山みつき:私は難波さんとの出会いは、2020年くらいですよね。別の作品のオーディションを受けに行ったその時に、監督は違う方ですが難波さんが脚本を書かれていた作品のオーディションに行きました。その作品は役を勝ち取ることはできなかったのですが、それがきっかけで前回の『地上30メートルの恋』(オムニバス映画『オトギネマ』)という作品に参加させていただいて以来の出演です。
藤井太一:まずはオファーでいただいて、役を作ってくださったっていうことでした。難波さんから言われたのが、「この作品は女性二人の作品だ」と。「だけど、どうしても出てほしいので、役を作りました」っていうお話でした。
それで、まあ、正直、嬉しいのは嬉しいんですけど、言い方が悪いですが、それがもし、本当に無理矢理に付け足したような役だったら、お断りも考えなきゃと実は思っていました。
難波監督:補足させていただくと、もともと藤井さんの役はなかったんです。森山さん演ずる役のお兄ちゃんの設定があったんですけど、それだとどうしてもうまくいかなくて、「これお兄ちゃんじゃないなぁ」と思った時に、藤井さんの顔を思い出して元夫の役を作って書き始めたら、これならいけると手応えがあって、もう藤井さん以外ないって感じで脚本を書いてオファーしたんです。
藤井太一:うれしいですね。ありがとうございます。
難波監督:嶋村さんについては、主人公にキャスティングにする時点で、ある意味で嶋村さんの映画になると考えました。ですから、その魅力を可能な限り引き出すためにも、歌うシーンは作りたいなと思いました。
▼05 森山さんとお母さんのエピソード
母親に関するエピソード
嶋村友美:世の中に、お母さんっていっぱいいるじゃないですか。私のお母さんもお母さんから産まれてるし。だから子どもを産むのは、みんなが「痛い、痛い!」って言ったって、みんなが産んでいるんだから大丈夫だろうと思ってたんです。
で、いざ自分がその場面になって陣痛が始まって、「うーん」ってなったら、あまりの痛みに私は耐えられそうもなくて、本当にもう一回覚悟を決めないと、私はもしかしたら死んじゃうかもしれないというくらいになりました。
でもお腹はこんなに大きいし、これは出さなきゃいけないなと思って、もうとにかく死ぬ思いでした。甘く見ていたんですよね。だってうちのお母さんは3人も産んでいるし、全然大丈夫だろうみたいな感じだったのですが、とんでもなかったです。
だから本当に産み終わった時に、お母さんにありがとうって言いました。産んでくれて本当にありがとうって、自分が子供を産んでみて、それがやっと分かったっていうか、そんな思いして産んでくれたんだなって。
インタビュアー: 森山さんはお母さんとのエピソードはいかがですか?
森山みつき: 小学生まで団地の5階に住んでいて、時間にも厳しい家だったので「何時までに寝なさい」と、きちんと寝かされていたんですけど。
ある日夜中に叩き起こされて。すごい嵐の日で、ベランダの窓いっぱいに稲妻が広がって見えたんです。雷って音も大きいし、怖いイメージだったんですけど、その時に見た稲妻が本当に本当に綺麗で…部屋の電気を全部消してベランダの前に母と二人で座って見たその光景を今でも鮮明に覚えています。
▼06 難波さんとお母さんに関するエピソード
インタビュアー:難波さんはいかがですか?
難波監督:人にもよると思いますが、男性って母について語ることが苦手な人が多い気がするんですよね。もちろん感謝しているっていうのはあるんですけど。
エンドロールの前に「すべてのお母さんに感謝します」という文言を英語で表記しているのですが、直接は言えないけど、そこはそうした想いを込めました。
嶋村友美:お母さんって、感謝をされないんですよね、多分。「やって当たり前じゃない?」っていうところがあるから、ああやってきちんと言葉にされると、世のお母さんはグッとくる気がしました。だって、いて当たり前だし、何しても当たり前だし。日々、お弁当作ったり、ご飯作ったり、掃除してもありがとうなんて言われないし。
▼07 母と歌、嶋村さんの場合
嶋村友美さんと「母親」について語った対話
インタビュアー:クラウドファンディングのWebページ中のメッセージを取り上げて聞いていこうと思います。嶋村さんが、このプロジェクトについて、「ワクワクする」っていう書き方をされていらっしゃいましたが、そのワクワクの気持ち、どんなふうなワクワク感・期待するものがあったのでしょうか。
嶋村友美: 脚本家の人たちがお金を出し合って、自分たちで制作したり、監督を選ぶ。また、自分がやるとしてもそうですけど、それってなかなかないことだと思うんです。脚本家の人たちが主導して一つのものを作り上げていくって。
その過程にはおそらくいろいろなことがあるかもしれませんが、面白いと思うし、藤井さんにしても、みつきちゃんにしても、自分も一緒にそうやって一つのものを作ることができたらいいなと思って参加しました。みんな素敵な役者さんたちだったので、それはもうワクワク以外はなかったです。本当に楽しくて、「ルカノパンタシア」の家族は素敵に仕上がったと感謝しています。
インタビュアー: 嶋村さんといえば、歌(オペラ、ミュージカル)ですが、劇中で母親として歌う経験だとか、歌うにあたってどのような点に気を遣いましたか?
嶋村友美:歌を歌うにあたって、オペラ歌手のように歌ってしまったら全然違うし、そうではない、きちんと路佳が歌っているってことを思って歌いました。
本当にありがたいと思いました。劇中で歌をうたうシーンを入れてくださって。
インタビュアー: 母親と言うと、誰の記憶にもある子守歌という点もよいですよね。
嶋村友美: そうですね。やっぱり歌いますものね。子どもをなんとか寝かせつけようと思って、もう必死になって。
「寝てちょうだい。ほんとに寝てちょうだい…」と思っているから。
▼08 お客様にむけたメッセージ
インタビュアー:お客様向けのメッセージをお願いします。作品の受け取り方は観た方次第というところはあると思いますが、みどころや、伝えたいことなど、メッセージをお願いします。
嶋村友美:自分もお母さんではありますが、私からみた“お母さん”って「完璧だ」って思っています。私の実のお母さんもお母さんとしてすごかったと思いますが、自分がお母さんになったら、とんでもなく未熟だし、ただの人間だし、ダメダメだし、でも、何だろう、それでいいんじゃないかなって思いました。
お母さんと関わってない人って世の中に一人もいないじゃないですか。だから、誰かが何かしらの気持ちをつかまえて、きっといろんな思いになれる映画だと思うので、ぜひ観に来てください。
藤井太一:すべての母親と、すべての母親を想う方々に観てほしいと思っています。
森山みつき:“オムニバス映画”自体にちょっとした抵抗感がある人って 一定数いると思うのですが、やっぱり今回は“母”というテーマももちろんあると思うし、各作品の流れだったり 作品自体がすごく見やすい形になっていると思うので、オムニバス映画に抵抗感がある人でも 一回観に来て欲しいなと思います。
5作品で一本の映画というふうに見てもらえればいいと思います。
難波監督:「ルカノパンタシア」は、娘を想う母のお話ですが、見た人それぞれが大切な人に想いを馳せられる、そんな優しい作品になればと願っています。
またエンディングテーマの作曲を星爪梨沙さんにお願いしたのですが、5本をまとめるような作品ではなくて、星爪梨沙さんによる母をテーマにした6つ目の作品で映画を締めたいと依頼しました。
5編を包む素敵な楽曲になっていますので、エンドロールが終わるまで席で楽しんでいただけたら嬉しいです。
オムニバス映画『Mothers マザーズ』
2025年1月25日~新宿 K’s cinema
ケイズシネマでの上映は、1日2回上映
1回目 15:50~ イベントなし
2回目 20:30~ 連日舞台挨拶あり
2025日2月7日~シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』
2025年2月21日~愛知 刈谷日劇
2025年3月15日~大阪 シアターセブン
映画『Mothers マザーズ』
テーマは「母」
5人の脚本家が自己資金で企画・制作する
オムニバス映画製作プロジェクト!
映画『Mothers マザーズ』は、映画・テレビ・舞台などで活躍する脚本家たちが
自己資金により企画・制作したオムニバス映画です。
それぞれの脚本家が「母」をテーマにしたオリジナルの短編脚本を執筆し、
それを自ら映画化して、ひとつにパッケージしたユニークなプロジェクトから誕生しました。
母として、ひとりの女性として、息子として、夫として、それぞれ立場から母を描いたこの作品は、
ご覧になる人それぞれの在り方によって見え方も異なることと思います。
大変ささやかな作品ではありますが、私たちの自信作となっております。
ぜひご期待ください!
公式サイト https://mothersfilm.studio.site/
2025年1月25日(土) ~新宿 K’s cinema 公開!
➤ K’s cinema 舞台挨拶|登壇者のご案内
2025年2月1日(土)~シナリオ会館
➤ 2月1日(土) 15:00~ 公開記念
5人の脚本家によるトークイベント決定!
2025年2月7日(金) ~下北沢 シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』
➤シモキタ『K2』トークショー&舞台挨拶
スペシャルゲストのご案内
2025年2月21日(金) ~愛知 刈谷日劇
2025年3月15日(土) ~大阪 シアターセブン
その他 順次公開