1月11日(土)、池袋シネマ・ロサにて、ドキュメンタリー映画『デヴィッド・ボウイ 幻想と素顔の狭間で』の上映後トークイベントが行われ、ボウイ評論の第一人者であるサエキけんぞう氏(作詞家・アーティスト)が登壇した。
本映画は、ボウイがグラムロックの寵児から世界のスターダムにのし上がるまでを、当時の仲間たちの証言を交えながら描いた作品。サエキ氏は、元妻でプロモーターのアンジーや、バックバンド「スパイダーズ・フロム・マーズ」のメンバーであるトレヴァー・ボルダー、ウッディ・ウッドマンゼイらのインタビューが興味深いと語り、彼らの発言から「スパイダーズ・フロム・マーズがいかに素晴らしいバンドであったか」が理解できると述べた。
■ 映画『デヴィッド・ボウイ 幻想と素顔の狭間で』
<イントロダクション>
2016年1月、肝癌により69歳で死去したデヴィッド・ボウイ。その2日前の誕生日にアルバム『ブラックスター(★)』をリリース、グラミー賞5部門を受賞するなど最後まで創作意欲を失わなかった伝説のロックスターの初期の時代を回想する。60年代後半、ボウイはグラムロックの先駆者として注目を集め、2枚目のアルバム『スペイス・オディティ』が大ヒット。その奇抜なファッションとパフォーマンスで世界を席巻していく。
本作では、BBCのプロデューサーのジェフ・グリフィンらがボウイがいかにしてスターダムに上り詰めていったかを語るほか、バックバンドの「スパイダーズ・フロム・マーズ」として、ボウイと一つの家に住み、ボウイのアルバム制作やツアーに参加したハービー・フラワーズ、ウッディ・ウッドマンゼイが、制作秘話や解散までを証言。なかでもボウイとともにグラムロック文化とファッション・スタイルを築いていき、「5人目のバンドメンバー」と言われる、元妻でプロモーターのアンジーが語るボウイとの出会い、ボウイの実像、ヒットの舞台裏は興味深い。
親日家として知られるボウイが日本の衣装やメイクに興味を持ち、それをファッションにどう加えていったかも語られる。加えて、オフショット写真、初期のライブ映像や写真など、グラムロック時代のボウイの変遷を辿る資料も多数収録。ウッドマンゼイが「ゴールに着いた時よりゴールを目指す時間の方が幸せ」と話す、デヴィッド・ボウイが、グラムロックの「革命児」から世界の「大スター」へと駆け上るまでを、共に過ごした当時の仲間たちが語る、光と陰のストーリー。
■ 上映後トークイベント
登壇:ボウイ評論の第一人者・サエキけんぞう(作詞家・アーティスト)
MC:汐月しゅう
サエキは、本作の魅力の魅力について、「(「5人目のバンドメンバー」と言われる、元妻でプロモーターの)アンジーは相当味わい深いし、(バックバンド「スパイダーズ・フロム・マーズ」のベースの)トレヴァー・ボルダーや、(ドラムの)ウッディ・ウッドマンゼイのニュアンスなんかも、グッとくる。あの発言の中に、裏を見れば、やっぱりスパイダーズ・フロム・マーズは素晴らしいバンドだったんだということがわかる。70年代に我々は、スパイダーズ・フロム・マーズはローリング・ストーンズと並ぶ、下手したら凌ぐバンドになるかもしれないという可能性を感じていた。そういう発言が香ばしい」と話した。
本作の補足として、「ボウイが73年の7月にジギー・スターダストを突然封印するということが劇中にも描かれているが、スパイダーズ・フロム・マーズを解散するということは別で、封印した後もスパイダーズ・フロム・マーズの活動は続いている。ボウイを代表する『ヒーローズ』のジャケットを撮影したのは、日本の鋤田正義さんで、スタイリストは高橋靖子さん(通称:ヤッコさん)。日本ツアーにも同行していたヤッコさんは、ずっと付き添っていたので、ボウイと(ギターの)ミック・ロンソンは『子犬のように戯れあっていた』と表現されていた。その一方で、スパイダーズ・フロム・マーズは解散。この映画の中でもメンバーの恨み節として出てくる。映画『ビサイド・ボウイ〜ミック・ロンソンの軌跡〜』によると、スパイダーズ・フロム・マーズバンドが解散した理由はお金で、ジギー・スターダストのツアー中メンバーの一人がとてつもない値上げを交渉したらしい。マネージメントサイドと決裂して、バンドは続けられなくなった」と解説。MCの汐月が、「ステージ上でボウイが気まぐれで解散を言い始めたみたいに言われていますよね?」と話すと、サエキは、「全部ボウイが背負ってしまっている」と答えた。
本作の見どころの一つが、元妻でプロモーターのアンジー自身のインタビュー。サエキは、「ボウイが音楽出版社預かりの作詞家だったときに、ヘルミオーネ・ファージンゲールという人と会って、フェザーズという3人組を結成。すごく綺麗な人で、映画の仕事がきて、22歳の時にボウイは人生最大の失恋をすることになる。天女のようなヘルミオーネの失恋の後に現れたのが(のちに妻となる)アンジー」と解説。
本作のエンディングについて聞かれたサエキは、「ここに出てきている幾つかのアンジーの話にしても、断片的だが我々を刺してくる内容。結構強引なことを言わなくてはこの映画の結論にならないところがあって無理なので、ヒントだけを残して終わっている」と解釈していると話した。
▼予告編
映画『デヴィッド・ボウイ 幻想と素顔の狭間で』
<ストーリー>
音楽史における最も革新的で影響力のあるアーティストの一人、デヴィッド・ボウイ。後に妻となるアンジーは、当時、マーキュリー・レコーズの大学生のインターンながら、ボウイとの契約を命じられ、見事締結。舞台衣装からボウイの見せ方まで全てを仕切る。エレキギターのティム・レンウィックは、「ボウイをロックスターにしようなんて誰も考えていなかった」という当初から、生の会場で熱い公演をする自信がなかったボウイをサポート。ドラムのウッディ・ウッドマンゼイらは、ボウイの個性的で感傷的な特別な曲を聴き、「僕たちの仕事はこれをロック風に演奏すること」と最高のアレンジを施した。
演劇的なバックグラウンドを持つボウイは1972年には『ジギー・スターダスト』をリリース、架空のロックスター「ジギー」となり、ステージでの奇抜な衣装やメイク、パフォーマンスによってファンの間で神格化されていった。当初200人の動員だったボストンで、宣伝ツアー終盤には20,000人を動員。しかし、実際にレコードが売れ始めるまでには2年位遅れがあった。
そんな矢先、ベースのトレヴァー・ボルダーが「いまだに納得いかない」というアルバムをボウイが制作し、ボウイは1973年7月3日のイギリスでの最終公演を最後に「ジギー」終焉を宣言。デヴィッド・ボウイを初期から支えていたバックバンド「スパイダーズ・フロム・マーズ」も解散させられてしまい…
監督:The Creative Picture Company
出演:デヴィッド・ボウイ、スパイダーズ・フロム・マーズ(以上、アーカイブ)、
トレヴァー・ボルダー、ウッディ・ウッドマンゼイ、アンジー・ボウイ、ティム・レンウィック、ハービー・フラワーズ、ジェフ・グリフィン
2007年/イギリス/64分/カラー/1.85:1/ステレオ/英語
原題 “David Bowie: Up Close and Personal”
字幕監修:朝日順子
配給:NEGA ©SHORELINE ENTERTAINMENT
公式サイト:https://davidbowiedoc.com/
公式 X:https://x.com/davidbowie2025
公式 Facebook:https://www.facebook.com/davidbowiedoc/
1月10日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開