ドラマ『コールミー・バイ・ノーネーム』脚本家・松ケ迫美貴インタビュー

ドラマ『コールミー・バイ・ノーネーム』脚本家・松ケ迫美貴インタビュー

2025年1月9日からスタートするMBSドラマフィル枠のドラマ「コールミー・バイ・ノーネーム」。その脚本を担当する松ケ迫美貴さんにお時間をいただき、脚本家に至るまでの経緯、連続ドラマの脚本初デビューの気持ち、原作のある作品の脚本・映像化にあたっての進め方についてお話を伺いました。

■ 脚本家・松ケ迫美貴インタビュー

▼1.松ケ迫さんの経歴について

インタビュアー:経歴を拝見すると、高校時代から小説を書かれていて、コンクールでの受賞経験も色々とおありだそうですね。小説家・脚本家を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

松ケ迫美貴:まず小説は小学生ぐらいから書き始めました。物語を考えるのが好きでノートに色々と思いついたお話を書くのが趣味でした。大学生ぐらいまでは趣味で創作活動をしていたのですが、社会人になったあたりからそんな時間もなくなってしまって。けれど、3年程前、コロナ禍などで家で過ごす時間が増えたことがきっかけで「もう一度なにかを書いてみようかな」という気持ちになりました。その時にチャレンジしたのが脚本です。ちょうど家にいる時間を持て余して、たくさん映画を見ていた時期だったので、「試しに書いてみよう」と思って始めました。そしたら、初めて書いた「白いヒカリ」という作品が新人シナリオコンクールの最終審査まで残ったので、もしかしたら自分に向いているのかもしれないと思って、色々なコンクールに応募するようになりました。

▼2.小説と脚本の違い

インタビュアー:小説と脚本の執筆は、仕事としてどのような違いがあるのでしょうか?

松ケ迫美貴:小説は自分で終わりを決められると思うんです。でも脚本はそれが映像化されて初めて完成するものですから自己満足だけではダメで、一般的に見て映像化された時に面白いかどうか、一歩引いた視点が必要だなと思っています。脚本は映像という完成形になるまで、必ず誰か自分以外の手が加わるものなので、みんなでストーリーを形にしていける、そういう楽しさがあるなと感じています。

インタビュアー:確かに、小説の映画化はよく言いますけど、脚本の映画化とは言わないですよね。脚本自体がもう映像のための元となるものというか。

▼3.得意な分野は?

インタビュアー:得意とする脚本や小説の分野についてお伺いしたいのですが、高校時代や大学の頃の作品を拝見すると「イノセント・ブルー」や「リリス・ピンク」など、色に関連するタイトルの作品が多いですね。当時から色へのこだわりがあったのでしょうか?

松ケ迫美貴:こだわりというより、自分の中で創作物に対してテーマカラーを決めた方が、作品のトーンが作りやすいと感じています 。例えば、初めて書いた脚本のタイトルも「白いヒカリ」という、とても分かりやすく色を使ったものです。今思うと安直で恥ずかしいのですが。

印象的なシーンに「これ」っていう色が決まっていると、場面設定がしやすくなるんです。 なので、オリジナル作品ではテーマカラーを決めて作ることが多いです。

インタビュアー:ちなみに、その色はどのように使われるのですか? 例えば、登場人物の服装や持ち物など?

松ケ迫美貴:モチーフとして作品に出てくることも多いのですが、 「この色だったらこういうモチーフ」みたいに決まっているわけではないんです。

インタビュアー:色の持つイメージは私たちの中にもありますよね。

松ケ迫美貴:そうですね。たとえば「赤」だと『血』を連想しやすいと思うのですが、直接血が出る描写を多用するのではなくて、一か所流血のシーンを入れたら、あとは『金魚』『ジャム』『花びら』『夕日』など作品に登場する様々なアイテムに赤を入れることで、象徴的に血を連想させていく…というようなイメージです。印象的なシーンを作る時に、パッと鮮やかな色を取り入れることが多いのですが、その色を全体にちりばめることでよりテーマ性みたいなものが伝わりやすくなると思っています。

▼4.松ケ迫さんと事務所への所属について

インタビュアー: 差し支えがないレベルで、事務所に所属した経緯みたいなものを聞かせてもらえますか?

松ケ迫美貴:新人シナリオコンクールに作品を出させていただいて、最終候補に2年連続で残ったんです。その時に事務所の方の目に留まって、そこから作品とかを読んでいただきました。

インタビュアー: そういえば同じ事務所の脚本家・ばばたくみさんをインタビューしたことがあるのですが、記事に対して、リアクションをいただいていましたね。

松ケ迫美貴: ばばさんのめっちゃファンなんです。尊敬できる方と一緒に仕事できる環境はとてもありがたいです。

▼5.「コールミー・バイ・ノーネーム」担当の経緯

インタビュアー: 今回のドラマ「コールミー・バイ・ノーネーム」の脚本担当の決定の経緯について教えてください。

スタッフ:今回、制作会社のスタジオブルーの瀬島プロデューサーと、「脚本家がこんなに増えて在籍しているんです」と話していた時に、「ちょうど控えている作品があって脚本家を探しているんです」と言われてたんです。
そこで、松ケ迫さんを提案してみたところ、「是非お願いしたいです」と言ってくださったという流れです。

インタビュアー:選ばれた時の感想はいかがでしたか?

松ケ迫美貴: 初めての映像作品で、しかも連続ドラマ全8話を一人で書くといったことが、すごい大抜擢だなって正直思いました。
また、「コールミー・バイ・ノーネーム」はGL、いわゆるガールズラブの作品で、初めて書いた「白いヒカリ」も女性同士の恋愛について書いた作品だったので、デビュー作でまたGL作品ができるのは運命的なものを感じました。

原作もすごく素晴らしい作品だったので、絶対にいいものにしようという強い気持ちで挑みました。

▼6.原作尊重とドラマ化:脚本制作過程

インタビュアー:今回のような原作漫画のある作品の脚本の執筆の難しさなどはいかがでしょうか、どういった方向性にすべきか色々考えるべきところがあると思っています。
原作に忠実にするか、それともアレンジするべきなのか、脚本家自身のカラーを出してみたいといったところもあるかもしれません。そういった観点で気にされたことはありますか?

松ケ迫美貴:やはり、原作があるものを映像化するってすごくデリケートなことだと思っているので、まず脚本に起こす前の段階で、原作から変えさせていただく部分を原作者の方にお伝えし、問題がないかの確認をとりました。
確認がとれた部分は変えて、それ以外は原作に忠実に8話分の脚本をあげて、そこからプロデューサーや監督と、連続ドラマとして楽しく見せるためにはどうするかといった点を話し合いました。

キャラクターを削ったり、ロケ地の関係上シーンを変更したりと、初稿と第2稿ではかなりガラッと内容も変わっています。そこからまた微調整を繰り返して、最終稿段階で再度原作者サイドに確認をしていただき、撮影に臨みました。

大変な作業ではありましたが、原作を映像化するにあたって丁寧に作っていきたいなと考えていたので、このように段階を踏んで作れたことはすごくプラスになったと思います。

▼7.枝優花監督と松ケ迫さんの対談

インタビュアー:監督は枝優花監督ですよね。枝監督も、女性を主要な登場人物とした作品作りを得意とする監督だと感じます。個人的には『少女邂逅』の頃から枝監督作品を観ていて気になる監督です。

今、松ケ迫さんからお話をうかがった中で、枝監督との話の中で出てきたエピソードでお話しいただけることがありましたらきかせてください。

松ケ迫美貴:枝監督は、カウンセラーみたいな方だなと思いました。学校でいうところの保健室の先生みたいな。すごく話しやすい方で、枝監督と話していると、自然と自己開示したくなるような不思議な感覚になります。
「この人なら自分を理解してくれる」といった安心感を与えてくれる素敵な方です。キャラクターについての掘り下げなども、すごく的確で。枝監督とディスカッションしていく中でキャラクター像が深められた部分が大きくあると感じています。

あと、もともと枝監督とプロデューサー陣は、すでにチームとして他のドラマでも組まれている方たちなのですごく仲が良くて。いつも笑いが絶えないというか、こんなに現場が楽しくていいんだって思えるぐらいすごく和気あいあいとした環境で仕事をさせていただいたので、初めて組めたのが、この方たちで良かったと本当に思っています。

MBSの上浦侑奈プロデューサーや、制作会社のスタジオブルーの瀬島プロデューサー、馬渕プロデューサーにもすごくお世話になりました。本当に感謝しています。

インタビュアー:いい出会いといい現場だったんですね。

▼8.脚本執筆環境とプロセス

インタビュアー:先日、とある脚本家同士の対談のなかで、脚本の執筆環境についての話題があり、松ケ迫さんにも聞いてみたいと思います。

脚本執筆にあたり、一人で考えるのか、誰かに相談して考えるタイプか。また、執筆環境は、自宅・事務所・喫茶店や図書館といったどういった場所で書くか、そういったお話を聞いてみたいと思います。

松ケ迫美貴:基本自宅で一人で書いています。
脚本執筆にあたっては、基本的には一旦自分で完結させます。その後「一旦、これで持ってきました」という形で、そこから相談してすすめていきます。自分の中で昇華していくスタイルですね。

インタビュアー:ちなみに執筆時には、音楽を聴きながら書くことはしますか?

松ケ迫美貴:いいえ、書いてる時はあまり聴かないですね。音楽を聴くのは気分転換の時です。音楽を聴いて落ち着いたりすることはよくあります。

インタビュアー:脚本を書く時に、頭の中で思い浮かべる映像は、誰のどういった視点か意識されたことはありますか?登場人物の視点なのか、登場人物を俯瞰する視点なのか、それよりももっと引いた視点なのか。

松ケ迫美貴:監督ほど緻密な視点があるわけではないと思うのですが、ある程度ドラマの映像を思い浮かべながら書いてます。

ただ30分の脚本でも30分の映像がずっと流れているわけではなく、動きがあるシーンは映像で思い浮かべているんですけれども、2人がただ喋っているだけのシーンでは、その映像ではなくて、文字ベースで考えてしまっていることが多いです。元々小説を書いていたので、その思考癖が残っているのかもしれないです。

なので、やはり後から「いや、このシーンを撮ると静止画になっちゃうじゃん」みたいなことがあります。そこはこれから脚本家としての思考癖をつけていきたいですね。

インタビュアー:難しいものなのですね。

松ケ迫美貴:難しいですね。監督に言われて初めて気づいたりもしますね。

▼9.名前当てから始まる切ないラブストーリー

インタビュアー:今回書かれている、作品の見どころや観る方へのメッセージをお願いします。

松ケ迫美貴:本作は名前当てゲームから始まる切ないガールズラブストーリーです。

まっすぐに追いかける愛と、近づけば近づくほど、離れていく琴葉という、正反対な2人のハラハラドキドキする恋模様を楽しんでいただきたいです。ミステリー要素もあり、目が離せないような展開になっていくと思うので、最後まで2人がどうなるんだろうと思いながら楽しんでもらえたらと思います。


ドラマフィル「コールミー・バイ・ノーネーム」放送情報

2025年1月9日(木)より順次放送スタート!【30分8話】

MBS 2025年1月9日(木)より毎週火曜25:29~

テレビ神奈川 2025年1月9日(木)より毎週火曜25:00~

テレビ埼玉 2025年1月13日(月)より毎週月曜24:00~

群馬テレビ 2025年1月14日(火)より毎週火曜24:30~

とちぎテレビ 2025年1月15日(水) より毎週水曜25:00~

チバテレビ 2025年1月16日(木) より毎週木曜23:00~

原作:斜線堂有紀「コールミー・バイ・ノーネーム」(星海社FICTIONS)
主演:工藤美桜 尾碕真花
監督:枝優花(「少女邂逅」「みなと商事コインランドリー」ほか)
脚本:松ケ迫美貴
音楽:原田智英
プロデューサー:上浦侑奈、瀬島翔、馬渕修
インティマシーコーディネーター:西山ももこ
LGBTQ監修:五十嵐ゆり
制作:スタジオブルー
製作:「コールミー・バイ・ノーネーム」製作委員会・MBS

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配信
FOD見放題にて独占配信
TVer、動画イズム 見逃し配信1週間あり

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