12月1日、パルテノン多摩小ホールにて、釜山国際映画祭コンペティション部門に出品された映画『ひとりたび』の国内初上映イベントが開催された。上映後には、石橋夕帆監督、岩田奏さん、主演の岡本玲さんの中学時代を演じた石山愛琉さんが登壇し、舞台挨拶が行われた。
■ 映画『ひとりたび』
▼ストーリー
東京で働く32歳の美咲(岡本)は10年間勤めていた会社に居づらくなり退職。将来が見えないまま実家に帰ることにする。懐かしい友人と会った際に同窓会が開催されることを知り同窓会に参加するが、その同窓会で初恋の相手が2年前に亡くなっていたことを知る。空っぽであった美咲の心が、初恋の思い出で埋め尽くされていく……。
▼監督・キャストによる舞台挨拶
石橋監督は、今作がコロナ禍で生まれた企画であり、当初から岡本さんを主演に想定して制作したことを明かした。 また、これまで学生を題材にした作品が多かったが、今回は社会に出て感じる生きづらさに関心が移り、30代の女性を主人公に選んだという。
今回、登壇がかなわなかった岡本玲さんからは、ビデオメッセージが届いた。
岡本玲ビデオメッセージ
皆さんこんにちは、岡本玲です。この度、映画『ひとりたび』が、TAMAシネマフォーラムで上映されたこと、とても嬉しく思います。 今日は残念ながら、仕事の都合でそちらにうかがえず、すみません。皆さん、上映後ということで、いかがでしたでしょうか。この映画は、数年前に石橋夕帆監督が企画書を持って、「私で映画を撮りたいんだ」とたずねてきてくださり、そこから始まりました。 数ヶ月に一回、監督とお茶して、今こういうことを考えているとか、この作品のここの部分で、こういう日常だとこういうことがあったら…というころから何か思うことがあるよね、とか、少しずつ膨らましていって、今があります。 それって、当たり前じゃなくて、ここまで完成したこと、そしてたくさんの方に見ていただけていること、本当に感謝感謝だと思います。 監督、諦めずに、私を使って撮ってくださってありがとうございます。 大人になるとなにがあってもなかったフリができるというか、傷ついていないフリができるようになってくるんですけど、でもどうしても、どこか心だったり頭だったり、手の先っぽだったりとか、そういうところにどうしても溜まっている何かがあって、そこを乗り越えないと進めないときがあって、そういう映画だと思っています。 きっと皆さんにとって少しでも大切な時間になってくれたら嬉しいです。 また皆さんに直接感想を聞きたいです。 今日はありがとうございました。 岡本玲でした。 |
岩田さんは、劇中の何気ない会話の中に登場人物たちの心情が隠されている「木の下のシーン」が印象的だったと語った。
石山さんは、MDプレイヤーなど、自身が経験したことのない時代のアイテムが登場することに苦労したエピソードを披露した。
和歌山県で行われた撮影では、地元のソフトクリーム「グリーンソフト」を出演者全員で楽しんだことや、エキストラが足りないため、石橋監督が自ら声をかけ、出演交渉したという裏話が明かされた。
映画初出演となる石山さんは、多くの人の支えによって撮影を終えられた喜びを語り、今後の俳優活動への意欲を示した。
岩田さんは、TAMA映画祭で自身の出演作が上映された際に、足立紳監督に色紙を渡したエピソード(渡した色紙を後で読んでもらうはずが、壇上で足立監督が読み始めたこと)を披露した。
参考記事
石橋監督は、多摩映画祭のラインナップの素晴らしさについて触れ、今回、新作を上映する機会を得られたことに感謝の意を表した。 釜山国際映画祭での上映については、観客の温かい反応や、作品への深い質問に感銘を受けたという。
キャスティングについて、石橋監督は、中学生役の俳優陣はオーディションで選考したと説明した。
岩田さんは、オーディションで監督とテーブルを挟んで台本を読み合う形式が新鮮だったと振り返り、自身の趣味であるシャーペンについて熱く語ったエピソードを披露した。
石山さんは、オーディション時の石橋監督の明るい人柄が印象に残っていると語った。
最後に、岩田さんは、自身も大好きな作品なので、ぜひ多くの人に観てほしいと語った。
石山さんは、来年公開予定の本作を多くの人に観てもらい、様々な感情を抱いてほしいと呼びかけた。
石橋監督は、本作が、過去の出来事によって傷ついている人々を肯定する作品であることを強調し、来年の劇場公開に向けて期待を寄せた。
映画『ひとりたび』
- 2024年/Ippo製作/イーチタイム配給/94分
- 監督=石橋夕帆
- 脚本=上村奈帆
- プロデューサー=田中佐知彦
- 撮影=関瑠惟
- 美術=畠智哉
- 音楽=山城ショウゴ
- 編集=小笠原風
- 出演=岡本玲、長村航希、坂ノ上茜、岩田奏、石山愛琉、日高七海、里内伽奈、中山求一郎、長友郁真、濱田マリ、原日出子、平田満
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