11月14日(木)、渋谷のユーロライブで『火の華』の完成披露試写会が行われ、上映後には、主人公の島田東介を演じた山本一賢さん、小島央大監督が登壇し、QA付きのトークイベントを開催した。本作は、実際の報道に着想を得た<平和国家>の暗部に斬り込む衝撃作。2024年12月20日(金)にテアトル新宿、ユーロスペース、丸の内TOEIほか全国公開。心に傷を負った元自衛官に迫る、隠蔽された過去の闇とは――。
■ 映画『火の華』完成披露試写会 舞台挨拶
『火の華』は、自衛隊日報問題を題材にしたチャレンジングなテーマ、徹底リサーチに基づく圧巻のリアリティ、主演・山本一賢の凄まじい役作りが口コミを呼び、マスコミ試写は毎回大盛況。岡山天音、藤原季節、瀬々敬久、児玉美月、山崎雅弘、南スーダン派遣施設隊元幹部自衛官の小山修一ほか17名の著名人からの激賞コメントが届くなど、2024年の日本映画界のラストを締めくくる“ダークホース”的な存在感をじわじわと発揮し始めている。
11月14日(木)、渋谷のユーロライブで行われた完成披露試写会では、上映後に、主人公の島田東介を演じた山本一賢さん、小島央大監督が登壇し、QA付きのトークイベントを開催した。
▼ワールドプレミア
この日がワールドプレミアとなった本作。
小島監督は「映画を撮影するときも編集するときも、映画自体をひとつの生きもののような感じで捉えているんです。こいつが何を欲しがっているのか、どこへ向かっているのか、映画と会話をするように作っていく感覚で。今日でようやく作品がひとり立ちし、今は巣立ちの瞬間にいるような気持ちですね」とプレミア上映を終えたばかりの心境を吐露。
また、本作の経緯については「まずモチーフとしてやりたいなと思ったのが、花火職人の物語でした。花火、火薬、日本における文化的な意味合いを知っていく中で、新潟県長岡の花火を見させていただいた時に、花火が持っているテーマ性が浮かび上がってきて、ようやく“なぜこれを撮ろうと思ったのか”を自問自答する形になって。もともと弔いという意味合いを持っている花火が、どのような物語になるだろう?と考えました」と述懐。
そうして、命を奪う「暴力性」を持つ鉄砲と弾丸。死者への慰霊や鎮魂を意味し、「平和性」を表す花火。相反する“火薬”をモチーフにすることに行き着いた監督。ニューヨーク育ちの監督にとって、テレビではPTSDを抱えた兵士のニュースが頻繁に報じられるなど、PTSDの問題は常に身近にあったそう。「花火で救われる人もいれば、PTSDを発症してしまう原因にもなり得るという矛盾をはらんだところに着目しました」と本作の成り立ちを明かした。
▼前作『JOINT』に続く2度目のタッグ
2021年に公開され、新藤兼人賞を受賞するなど高く評価された『JOINT』に続く2度目のタッグとなった監督と山本さん。今回山本さんは、出演だけにはとどまらず、共同企画・脚本にも名を連ねている。
共同での作劇について、監督は「山本さんが島田東介目線の主観的な感情や記憶を書いて、僕がそこに客観性を盛り込んでいきました」。
一方、山本さんは「最初は現場仕事から始まって、そこから銃を取り出す……って、また『JOINT』と同じ展開じゃねえか?と思った」と会場を笑わせつつ、「人生の壁と向き合っているところは、前作も今作も同じですね」とコメント。
また元自衛官で、新潟で花火師となる役を演じるにあたり、実際に小千谷の花火師に花火作りを学んだという山本さん。「取り扱いが怖かったんですよ。練習もいっぱいして、多少上手くなっていたんですが、よく考えたら、島田は上手になってはダメな役。なんで練習しちゃったんだろうね?(笑)」と茶目っ気たっぷりに振り返った。
▼火、花
また、火だけでなく、花もモチーフになっている本作。中でも、島田を表す花として夏椿が登場するが、これは山本さんが出したアイデアなのだとか。
「花火って、儚いからこそ美しいと言われていますよね。映画も人生もそう。そんな儚さを象徴する花として、夏椿に出会いました」と明かす山本さんに対して、「山本さんってロマンチストなんですよね。そんな山本さん自身の価値観がこの映画にフィットしているし、そのおかげで唯一無二の作品になったと思います」と監督。
▼『JOINT』からの盟友
そんな2人に加え、本作プロデューサー兼中国マフィアのボス役で出演もしているキム・チャンバさんは『JOINT』からの盟友。3人の関係性について、監督は「まっすぐに意見を言い合える同志。支え合っている三角関係なのかなと思います」と説明。
一方、山本さんは、「央大は『才能がすごい』と言われているんだけど、結構泥くさいんですよ。努力家ですし。インテリだけどストリートなところも好きだなぁって。ニューヨーク育ちで東大の建築学科卒業と聞くと、ちょっとイラッとしたりもするけど(笑)“良い映画を作ろう”という目的が一緒だから仲良くできる」と、監督の魅力を明かした。
それを聞いていた監督は「努力家って言われるのは嬉しいですね」とはにかみながら、「『火の華』は、若いスタッフたちで作った映画。 “後世にずっと残る映画を作ろう!”と、みんなの情熱と才能が結集した映画です」と自信をのぞかせた。
▼お客様からのQ&A
その後の観客からのQ&Aでは、鑑賞直後の余韻冷めやらぬ熱のこもった質問が数多く飛んだ。
劇中で英語台詞に日本語字幕がついていないシーンがあり、その意図を問われた監督は「世の中が平和になってほしいとか、愛をもって人間と接しようとか、ある種、綺麗ごとだと思われがちなことを、あえてちゃんと声に出して言えるような世の中になってほしいと僕は思っていて。そんなセリフを誰に託したいかと考えました。そして、字幕がつくと、どうしても(翻訳者の)“解釈”がついてきてしまう。英語がわからなくても何か伝わるものがあるんじゃないかなと思い、字幕なしで編集しました」と明かした。
また、X(旧Twitter)に“島田東介”というアカウントが存在するのを指摘された山本さんは「恥ずかしいっすね。“島田がSNSをやっていたらこんなことを書くだろう”という役作りの一環として、独断でやっていた。その時の島田の思いを書き連ねていました」と述懐。
これは監督も知らなかったようで、「よく見つけましたね」と驚いていた。
今回、映画をいちはやく鑑賞した観客からは、鑑賞直後のSNSやレビューサイトですでに「生涯忘れられない1本」「今年の1位」と絶賛の声が相次いでいる。
2024年も残りわずか。今年最後の映画と花火は『火の華』で締め括ってほしい。『火の華』は、2024年12月20日(金) テアトル新宿、ユーロスペース、丸の内TOEIほか全国公開。12月13日(金) 新潟県先行公開。
映画『火の華』
<作品概要>
2016年に実際に報道された「自衛隊日報問題」を題材にした映画『火の華』は、元自衛官の壮絶な経験とその後の宿命を克明に描いた完全オリジナルストーリー。日本映画ではほぼ扱われることのなかったPTSDの深刻さを見据えながら、<戦う>ということや<平和>の在り方、そして人間の本質までを問いかける。
監督は、長編デビュー作『JOINT』(2021年)で新藤兼人賞銀賞に輝いた小島央大。長編2作目となる本作では、企画・脚本・編集・音楽までを手がけている。主人公の島田には、『JOINT』でも主演を務めた山本一賢。元自衛官の葛藤と再起を等身大で演じ、圧倒的な存在感を放つ。さらに二人の盟友キム・チャンバが『JOINT』に続いてプロデューサー・出演者として加わり、才気溢れるチームが再集結した。そして脇を固めるのは、柳ゆり菜、松角洋平、ダンカン、伊武雅刀ら実力派俳優たち。
日本伝統の<花火>をモチーフにした本作。登場する打ち上げ花火は、長岡花火ほか世界クラスで活躍する花火師の監修の元、全て実写で撮影している。また、元自衛官やジャーナリストに数々の取材を敢行し、徹底したリサーチの基、自衛隊や武器の世界も忠実に再現。細部までリアリティを追求した撮影と演出が、花火師と自衛隊の世界を重厚に彩る。
<あらすじ>この魂に救いは在るか?
2016年、PKO(国連平和維持活動)のため南スーダンに派遣された⾃衛官の島⽥東介。ある⽇、部隊が現地傭兵との銃撃戦に巻き込まれる。同期で親友の古川は凶弾に倒れ、島⽥はやむなく少年兵を射殺。退却の混乱の最中、隊⻑の伊藤が⾏⽅不明となる。しかし、この前代未聞の“戦闘”は、政府によって隠蔽されてしまう。
それから2年後、新潟。悪夢に悩まされる島⽥は、闇の武器ビジネスに加わりながら、花⽕⼯場の仕事に就く。親⽅の藤井与⼀や仲間の職⼈たち、与⼀の娘・昭⼦に⽀えられ、⼼に負った傷を少しずつ癒していく島田。花火師の道に一筋の光を⾒出した矢先、島田に過去の闇が迫る…。
山本一賢
柳ゆり菜 松角洋平 田中一平 原雄次郎 新岡潤 キム・チャンバ
ゆかわたかし 今村謙斗 山崎潤 遠藤祐美 YUTA KOGA ダンカン / 伊武雅刀
監督・編集・音楽:小島央大 企画・脚本:小島央大、山本一賢
主題歌:大貫妙子&坂本龍一「Flower」(commmons/Avex Music Creative Inc.)
エグゼクティブプロデューサー:成宏基 プロデューサー:キム・チャンバ アソシエイトプロデューサー:前原美野里
撮影監督:岩渕隆斗 撮影:巻島雄輝 学 美術:原田恭明 照明:渡邊大和 録音:加唐学 ヘアメイク・キャラクタースーパーバイザー:橋本申二
衣裳:YK.jr 視覚効果:大塚裕磨 カラリスト:亀井俊貴 音響効果:柿添真希 制作担当:青木翔平
宣伝プロデューサー:山口久美子 宣伝協力:平井万里子 山口慎平 宣伝デザイン:成瀬慧 予告制作:谷口恒平
製作・配給:アニモプロデュース 制作プロダクション:雷・音 OUD Pro. 配給協力:東京テアトル
2024年/日本/シネマスコープ/5.1ch/カラー/124分
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公式HP:hinohana-movie.com X(旧Twitter)/Instagram:@hinohana_movie
2024年12月20日(金) テアトル新宿、ユーロスペース、丸の内TOEIほか全国公開
12月13日(金) 新潟県先行公開