2021年8月27日(金)テアトル新宿にて、「田辺・弁慶映画祭セレクション2021」(以下、弁セレ)が開始された。弁セレでは、第十四回の田辺・弁慶映画祭で受賞した若手新人監督にスポットをあて、特集上映が行われる。テアトル新宿での上映期間は、8/27金~9/16木。8月27日金の初日舞台挨拶の模様をレポート。
「田辺・弁慶映画祭セレクション2021」初日は、弁セレ恒例の「弁セレ監督大集合イベント」登壇者は、野本梢監督、三浦克巳監督、礒部泰宏監督、小川深彩監督、亀山睦実監督/MC:松崎ブラザーズ(映画活動家/放送作家・松崎まこと、映画評論家・松崎健夫) ※亀山睦実監督は、コロナウイルス対策として、帰国後の隔離期間のため、ビデオメッセージを投影しての参加
■「弁セレ監督大集合イベント」レポート
イベントは、亀山睦実監督ビデオメッセージから始まった。亀山監督は映画『12ヶ月のカイ』が米国アリゾナ州最大級のフェニックス映画祭・国際ホラー&SF映画祭のSFコンペ部門にて、最高賞を受賞。当日、日本に帰国していたもののコロナウイルス感染予防の隔離期間のため、コメント映像による参加となった。
▼亀山睦実監督ビデオメッセージ
テアトル新宿にお越しの皆さん、「マイライフ、ママライフ」の監督の亀山睦美です。『マイライフ、ママライフ』という作品はちょうど私が30歳になる頃に大学の同級生や高校のところの同級生たちのいろんな話をSNSで見ていて彼女たちの本当に思っていることをリアルに映画として物語としてちょっとエポックメイキングな作品にして残したいという思いから撮りました。
それ以外にも、本当にお話を作るにあたって、様々な女性の方のお話を聴かせて・取材をさせていただきました。なので、女性たちのとにかく本音が詰まった作品になっております。どのキャラクターも皆さん素敵に演じてくださっていらっしゃっています。
しかも鉢峰さん主演のおひとりの鉢峰さんは第一子をご懐妊されたということなど、本当に『マイライフ、ママライフ』同じような人生を歩んでいらっしゃいます。何かその辺りもすごくリアルなところも人間って面白いなと思うので、もしよろしければ作品を見ていただき、主演のお二人の他の作品や他の活動なども見ていただけたらより面白く見れるんじゃないかなと思います。
■田辺・弁慶映画祭2021セレクションの初日を迎えての各監督の感想
▼野本梢監督
すごいタイミングだと思います。初日の今日、お客様が全然いないんじゃないかと思っていました。
なので、今日、劇場までいらしていただいて、本当にありがとうございます。
▼三浦克己監督
僕はあっという間な感じがしています。僕は1月ぐらいからずっと準備をしていました。コロナっていう
こればっかりどうしようもないものがあり、この特集上映が開催できるのかなと思ってたんですけど、無事今日、初日の野本さんの回が迎えられて本当にほっとしてます。
▼礒部泰宏監督
上映が決まってからというもの、ずっと胃が痛いです。それがずっと収まらないですね。だからといって、早く終わってほしいとかではなく、むしろ楽しみです。ただ、やはり不安の方が大きいのですが、今日こういう状況の中、足を運んでくださったお客さんを見て、ちょっとだけ安心しました。
▼小川深彩監督
入選するだけでも本当に嬉しいです。田辺・弁慶映画祭にまさか入賞すると思っていなかったので正直言ってちょっとパニックしているところもあるんですけれど、ここにいることができて本当に本当に嬉しいです。
■松崎健夫が語る田辺・弁慶映画祭の傾向
MC:松崎まこと
毎年、田辺・弁慶映画祭は何らかの傾向があるということを言われていますけど、去年の場合は、ここにいる監督たちを含めて、作品にはどのような傾向がありましたか?
松崎健夫
受賞された方をみると、女性監督が多いのが特徴だと思います。田辺・弁慶映画祭って実はもう初期の頃から女性監督の作品がグランプリになっていたりするんです。昨今、ハリウッドで“男女の監督の比率を是正していきましょう”となっていることが、割と早くから田辺・弁慶映画祭では意識的ではなかったんですが、そういう作品を選んできたなっていうのがあったと思います。
今年はセレクションの5人の監督の中でも3人の女性監督が受賞していますから、それが特徴だと思いますし、磯部監督には悪いんですけど、三浦監督の作品も女性が主人公で男性社会に抗うっていう側面とかあるとすると、やはりそういう作品が出てくるのは、和歌山の地方都市でやってる映画祭なんだけども、世界の潮流と同じことが表れてることを感じます。
■監督への質問
MC:松崎まこと
第10回の映画祭で入選していて、去年グランプリだったんですが、改めて、10回目と今回の14回目は違うのでしょうか?
野本梢監督
まず応募した段階・賞が決まってない状態のときは、前回、賞をいただいている分、超えなきゃなっていうのはありました。そして今はそれとともに上映の重責がのしかかっているのを感じます。
MC:松崎まこと
三浦監督は学生の最後の頃に撮り始めて、3年がかりで完成させた映画なんですよね。
三浦克己監督
卒業制作で、ほぼ3年前に撮って、去年のちょうどコロナが始まった3月ぐらいに完成しました。
完成させないことには、やはり関わってくれた人に大変申し訳ないので、そこはちゃんとやろうと思いました。自分の中ではちゃんとやろうと思ってたんで、ようやくできたなという思いがあります。
時間がかかった分、こうやってテアトル新宿の大きなスクリーンでかけてもらうのはすごい嬉しいことです。
MC:松崎まこと
磯部泰宏監督は田辺・弁慶映画祭の常連俳優さんというか、田辺・弁慶映画祭の初期(第5回)の天野千尋 監督の『チョッキン堪忍袋』というグランプリ作品に出演されていましたが、当時都合が悪くて登壇ができなくて、去年は監督として登壇するぞと思ったらまたいけなくて、ようやくテアトル新宿にたどりつきましたが、どんなお気持ちでしょうか?
礒部泰宏監督
まさか自分が舞台に上がることはあったとしても、監督の立場として、こうやって皆様にご挨拶するような日が来るなんて思っていなかったので、何かすごく不思議な感覚です。
松崎健夫
監督が役者で応募してくる作品ってないことはないんですけれど、多くの作品は主人公がものすごくいいやつで、世の中こんなひどいのに、なんで俺こんなふうにやってるんだっていう正直なキャラクターを自分で作って演じられてる方がすごく多くて、僕はそういうのが好きじゃないんです。
磯部さんは自分で作ってるのに主人公にともすれば、感情移入ができないんじゃないかという嫌な奴をわざわざ演じて自分で演出されてるのかそこが素晴らしいなと思ってます。
MC:松崎まこと
さきほど、田辺・弁慶映画祭に入選するだけでも嬉しいといった話がありましたが、賞を獲ってから映画を2本撮っているんですよね?
小川深彩監督
10分の作品と『偽神』よりも長い50分の作品を撮っています。ホラーテイストなんですけど、めちゃめちゃ気持ち悪い画とか何かがワッと出てくるとかそういう描写はないので、どちらかというとサイコスリラー系だったりちょっとドラマよりだったりします。『偽神』は17歳の時に撮った作品です。
■作品のアピール
MC:松崎まこと
みなさん、あらためて作品のアピールをお願いします。
小川深彩監督
みなさんよろしくおねがいします。『偽神』という作品です。宗教と家族をテーマにしたちょっとホラーテイストな作品です。9月の11日、12日、13日にこちらテアトル新宿で上映されます。皆さんどうぞよろしくおねがいします。『偽神』を観に来たら、全ての日に。3作品とも観られます。
トークイベントもありまして、11日そして13日は『偽神』そして『2階のあの子(仮)』のキャストさんがいらっしゃいます。そして12日は豪華なゲストさんがいらっしゃいます。沖縄とか東京でも活躍されてる尚玄(俳優)さんとかプロデューサーでもある松島哲也(映画監督/プロデューサー/日本大学芸術学部教授)とかがいらっしゃいます。
松崎健夫
応募作品の中に、ホラー映画ってほとんど応募されてこないのが特徴になっていて、小川監督くらいの年齢の方が応募してくることもあまりないので、沖縄在住当時に、映画を作る仲間をどうやって集めたのか周囲の状況はどんな感じだったか聴かせてください。
小川深彩監督
私は高校から3年間、沖縄の制作会社でインターンシップをさせていただいて、そのときに「琉球トラウマナイト」という沖縄ローカルのホラー番組をみんなで撮っているところをお手伝いさせていただきました。沖縄のホラーのキャストスタッフさんは知っていたので、そこからアプローチしてお願いしました。
みなさんホラーは撮りなれている方々だったので、「シナリオの作り方もわかってるよ任せて!」といった感じでした。
礒部泰宏監督
タイトルが割とわかりやすく『いる』という作品と、新作の『みない』という作品なんですけど、なんでこういうタイトルにしたかというと、やっぱり見てもらう人にいろんな感想を抱いてもらいたいというような思いがありまして、いろいろ気持ちを込めて作っています。『いる』はサスペンスホラーコメディードラマみたいな感じなんですけど、『みない』は僕の中ではラブストーリーとして撮ってます。
上映は4日間あるんですけど、初日が天野千尋さんがゲストに来てくださいますし、2日目は『みない』の主演の指名の加藤紗希さん。3日目は、高橋泉(群青いろ/脚本家)さん、廣末哲万(群青いろ/映画監督、俳優)さん。4日目が越川道夫(映画監督、プロデューサー)さんと、連日アフタートーク、出演者の舞台挨拶もさせていただきますのでチェックしていただいて、ご来場いただければと思います。
三浦克己監督
『親鳥よ、静かに泣け』と『春にして頬を拭う』2作品ありまして、9月3日と5日に、『親鳥よ、静かに泣け』を上映させてもらって、新作『春にして頬を拭う』を9月4日と6日に、交互に上映させていただく形になってます。
舞台挨拶とトーク等もやりつつ、今回TBSラジオ賞を受賞できたのでTBSラジオの方で、スピンオフドラマという形で今回作らせてもらってですね。こちらの新作の『春にして頬を拭う』のスピンオフドラマを作らせてもらって、これ現在YouTubeで上がってるんですけども上映の際に、親鳥の上映の際にもこちらのスクリーンでかけていただくことがありまして、劇場でどういう感じでみえるかちょっと楽しみにしています。両方ともクライムストーリーです。
松崎健夫
時間かけて作っているという話でしたがインディペンデント映画とか自主映画って、配給とかが決まっていなければ締め切りがないわけなので、どこまででもその完成度を高めることができると思うんです。やはりこういう自主の映画祭のときって、「実は音がまだ完成してないんですけど応募しました」みたいなものがあって僕らすごく幻滅したりするんです。
この作品はきちんと実践されていてお仕事をされながら作品を完成させたその完成度の高さ、それが劇場で観たときにさらに高まって見えるんじゃないかと思っています。皆さん期待していただきたいと思います。
野本梢監督
この作品は、まず私が映画を制作していく中で、最初はいろんなイライラだとか何か作品にぶつけようとしちゃっていた部分があったんですけど、企画を進めていく中で、これって何か自分が原因だったんじゃないかなとか、このとき、私もこう友好的な態度をしていれば、これはうまくいったんじゃないかいろんな反省に繋がっていって、映画を撮っていく中で自分がこう気づかされていた部分がある映画になっています。
主人公の景(ケイ)と皆さんとでは、境遇や属性も違うと思いますが、どこかに何か一致する部分があったりとか、今まで自分1人で頑張って周りが見えなくなってしまって、何かそういう思いをしてる人もたくさんいるというところに、少しでも気が楽になってもらえたら嬉しいなと思っております。今日はあまり話せなかったので、松崎まことさんにインタビューしていただいたりとか、松崎健夫さんの映画評も掲載されているパンフレットも観てください。
■田辺・弁慶映画祭セレクション2021 受賞作品
【弁慶グランプリ/映画.com賞】
『愛のくだらない』野本梢監督
【キネマイスター賞】
『偽神』小川深彩監督
【観客賞】
『マイライフ、ママライフ』亀山睦実監督
【TBSラジオ賞】
『親鳥よ、静かに泣け』三浦克己監督
【俳優賞】
『いる』礒部泰宏監督
▼特集上映概要および最新情報リンク先
田辺・弁慶映画祭セレクション2021
https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/movie/0754600.html