2024年10月12日、[東京・渋谷] シアター・イメージフォーラムにて、映画『ピアニストを待ちながら』の初日舞台挨拶が行われ、主演の井之脇海をはじめ、木竜麻生、大友一生、澁谷麻美、斉藤陽一郎、そして七里圭監督が登壇した。
■ 映画『ピアニストを待ちながら』初日舞台挨拶
司会者から、井之脇さんに対し、役作りやピアノ演奏について質問が投げかけられた。
「オファーを頂いた時は、まず七里監督の作品に出られることが嬉しかった」と井之脇さん。 続けて、「村上春樹ライブラリーでの撮影と聞いて、村上さんの世界観と七里監督の演出がどんな化学反応を起こすのか楽しみだった」と、出演が決まった時の高揚感を語った。
役作りについては、「多くのリハーサルを重ね、七里監督や他のキャストと話し合いながら、作品の世界観を理解することに努めた」と井之脇さん。
特に意識したのは、「夢の中にいるような、地に足がついていないような、それでいてどこか堂々としているような雰囲気」を出すことだったという。 さらに、「村上春樹作品に登場する主人公像のような、思考ばかりで物事が前に進まない男性像も意識した」と明かした。
劇中で披露されるピアノ演奏は、吹き替えなしで井之脇さん自身が演奏している。
「多くの作品でピアノを演奏してきたが、自分の生演奏を使っていただける機会は貴重で、とても嬉しい」と井之脇さん。
演奏する楽曲は、音楽家の宇波拓氏が作曲。 早めに楽曲を受け取ることができたため、練習時間を十分に確保でき、リハーサルでは他のキャストと一緒にダンスシーンの練習も兼ねて演奏したという。
井之脇さんの真摯な姿勢からは、役者として、そしてピアニストとして、作品に真摯に向き合う熱い思いが伝わってきた。
作中で印象的なダンスシーンを披露している木竜さんには、司会者からダンスシーンに関する質問がなげかけられた。
まず、「ダンスシーンについて、練習や撮影時のエピソードは?」という質問に対して、木竜さんは「リハーサルの期間を十分に取っていただけたので、井之脇さんが実際にピアノを弾いてくださっている音に合わせて練習できた」と、充実した練習期間を振り返った。
さらに、大友さんとの息の合ったダンスシーンについては、「大友くんと一緒に思考錯誤しつつ疲れたって言いながら足腰を動かしてダンス練習はしたので(笑)」と、笑顔で語り、「村上春樹ライブラリーを夜に、閉館後にお借りしてやってたので、なんか不思議な空間の中で体を動かすっていう、自分の体感したことない感覚が撮影ではあった」と、独特な空間での撮影体験を明かした。
また、木竜さんは新体操の経験者であることから、「新体操の経験はダンスに活かされたか?」という質問も。 木竜さんは「新体操とダンスは違うところもある」と前置きしつつも、「音楽に合わせてっていうところだったり、あんまりこう、絶対こう踊ってくださいって形がしっかり決まってるっていうわけではなかったので、それこそ大友くんは大友くんの踊り方があるし、私は私のっていうのを結構尊重していただいてたので、なんか自分が新体操やってた流れの延長では、踊りをさせてもらってたのかなとは思います。」と、新体操で培った経験が活かされたことを語った。
木竜さんとの息の合ったダンスシーンが印象的な大友さんには、司会者からダンスシーンに関する質問が投げかけられた。
「ダンスシーンについて、村上春樹ライブラリーという特殊な空間での撮影はいかがでしたか?」という質問に対し、大友さんは「稽古場では何回か擦り合わせをして、(井之脇さん演じる)瞬介のピアノとも合わせたんですけど、やっぱりあの、村上春樹ライブラリーに行ってやると、まあ、全然違うっていうか、なんか不思議です」と、独特の雰囲気を持つライブラリーでの撮影体験を振り返った。
ミステリアスな雰囲気を漂わせる絵美を演じた澁谷麻美には、司会者から役作りに関する質問が寄せられた。
「この作品に関わることになった時、私は村上春樹さんから一番遠い女だと思っていたので、大丈夫かなと不安もあった」と澁谷は語り、当初は自身が村上春樹の世界観と合致するのか戸惑いを感じていたことを明かした。
しかし、台本を読み込むうちに「すごく上手。女性を感じさせる世界を持ってる役だなって思って」と、絵美という役柄の魅力に惹かれていったという。
さらに、撮影前に七里監督から渡されたあるDVDを見たことで、さらに混乱させられたと語り、「本当にすごく混乱させられた作品でしたけど」と、独特な世界観を持つ作品への挑戦を振り返った。
最終的には「だんだんだんだんそのつかみどころのなさみたいなのを楽しんでいけたような気もするので、不思議なレイヤーの違う謎の女ができたんじゃないかなと思ってます」と、 澁谷は笑顔を見せ、つかみどころのない絵美という役柄を演じ切ったことへの達成感をにじませた。
つかみどころのないキャラクター、出目を演じた斉藤さんには、司会者から役どころに関する質問が飛んだ。
「出目という役柄をどのように捉えていましたか?」という質問に対し、斉藤さんは「考えれば考えるほど、どんどん分からなくなってくるので、途中から考えることをやめたというか、やめてはいないんですけど、でもずっと、ピアニストってなんだろう、みたいなことをずっと考えてましたね」と、役柄への葛藤を吐露した。
続けて、「待つとか、待ってるとかってどういうことなんだろう。ピアニストって誰なんだろうっていうの。なんでここにいるのかとか、考えだしたら、もうなんかよくわかんないし」と、劇中の出目と同様に、「ピアニスト」の存在について自問自答を繰り返していたことを明かした。
最後に、井之脇さんは観客への感謝の言葉と共に、映画『ピアニストを待ちながら』への想いを語りました。
井之脇さんは、この映画が制作されていた当時、そして今もなお、社会は大きく変化しており、「ここは何なんだろうみたいな、本当にいるのかいないのか、そこにいなくても不在なんじゃないかとか」 といった、様々な疑問や不安が渦巻く時代だと述べています。そして、そのような 「不確かさ」 が作品に詰め込まれていると語りました。
また、井之脇さん自身もこの映画のすべてを理解しているわけではないとしながらも、「難しく捉えずに、笑いながら見てもらえたらいいな」 と観客に語りかけた。
さらに、司会者から前日のヤフーの記事に掲載された「わからないことの大切さ」についての言及を受け、若者へのメッセージを求められる場面も。これに対し七里監督は「わからないっていうことを楽しむ。っていう余裕が必要なんじゃないかな特に若い人たちを見てるとすごく真面目なんでもう少し気楽にいこうっていうふうに思います」と回答。 現代社会では「分かりやすさ」が重視される風潮があるが、「わからない」ということにも目を向け、楽しむことの重要性を訴えた。
七里監督は、「この映画は、ここにいる5人だからこの映画になった」と、俳優陣への感謝の言葉を述べ、「不思議な夢を見た後、目覚めてから何だったんだあれはというふうに思うことって皆さんもおありだと思うんですけど、そういう感じでこのヘンテコな映画をあれは何だったんだろうというふうに考えてくださったら嬉しいです」と語りかけた。
映画『ピアニストを待ちながら』
ストーリー
目覚めるとそこは真夜中の図書館だった。瞬介(井之脇海)が倒れていた階段の両側には、
吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでい
る。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。途方に暮れた瞬介
は、導かれるようにして一台のグランドピアノを見つけ、そっと鍵盤を鳴らす。
やがて瞬介は、旧友の行人(大友一生)とその彼女だった貴織(木竜麻生)に再会する。
三人は大学時代の演劇仲間だった。行人と貴織はもう随分前からここにいるらしい。他に
も、見知らぬ中年男の出目(斉藤陽一郎)や謎の女絵美(澁谷麻美)もいる。行人は、この
状況を逆手にとって、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・
演するはずだった「ピアニストを待ちながら」。しかし、瞬介には気になることがあった。
確か、行人は死んだはずでは……?
出演:井之脇海 木竜麻生 大友一生 澁谷麻美 斉藤陽一郎
監督・脚本:七里圭
プロデューサー:熊野雅恵 企画:土田環 ラインプロデューサー:佛木雅彦
撮影:渡邉寿岳 照明:高橋哲也 録音:松野泉 黄 永昌 助監督:鳥井雄人
ヘアメイク:永江三千子 スタイリスト:小笠原吉恵
劇中戯曲:鈴木一平 原案協力:山本浩貴 振付指導:神村 恵
音楽:宇波拓 編集:宮島竜治 山田佑介
撮影照明助手:松島翔平 藤田恵実 吾妻天湖 撮影応援:村上拓也
照明応援:梶本康平 末永 賢 録音応援:弥栄裕樹
制作主任:大美賀均 制作進行:田中 聡 ヘアメイク助手:水上摂子
照明インターン:西田 陽 諏訪部友花 制作インターン:新井雅大 楠凜乃 長岡大秦
スチール:本多晃子 キャスティング協力:神林理央子
脚本協力:新柵未成 増田高虎 音楽協力:Margarida Garcia Bertrand Denzler 木下和重
協力:橙子猫・Orange Cat シネレント クリエイティブ・アート・シンク
コスモスペース SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ コギトワークス 映像通信
加藤大輝 長尾祐介 橋詰和幸 山倉一樹 棚沢努 早川翔人
早稲田大学国際文学館:十重田裕一 本間知佐子 西尾昌樹 針生彩
協賛:行政書士法人東京国際経営法務事務所
宣伝:平井万里子 宣伝デザイン:鈴木規子 予告編制作:日景明夫 HP制作:植田智道
WEB宣伝:ガブリシャス本田 宣伝協力:株式会社 BOTA
配給協力:チャーム・ポイント
制作・配給:合同会社インディペンデントフィルム
2024年/日本/カラー/61分/ヨーロピアンビスタ/5.1ch /DCP
©合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館
https://keishichiri.com/pianist
10月12日(土)シアター・イメージフォーラム
11月2日(土)シネ・ヌーヴォ ほか全国順次公開