ドラマ『ライオンの隠れ家』脚本家・一戸慶乃インタビュー

ドラマ『ライオンの隠れ家』脚本家・一戸慶乃インタビュー

10月スタートのTBS金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」で連続ドラマデビューを果たす脚本家・一戸慶乃。俳優の専門学校を経て、一時は俳優を目指していたという異色の経歴を持つ。 今回の作品では、自閉スペクトラム症の弟と暮らす兄のもとに、「ライオン」と名乗る謎の少年が現れることから始まる、愛とサスペンスに満ちた物語を紡ぐ。 本作で描く「家族」や「兄弟」の物語のたどり着く先は?

■ ドラマ『ライオンの隠れ家』脚本家・一戸慶乃インタビュー

▼経歴について

◆お名前について

ーインタビューの冒頭で、よくお名前の由来をうかがっています。一戸さんは、慶乃というお名前ですが、どういった由来があるのでしょうか?


一戸慶乃
子供の頃に両親から聞いたのですが、喜び事、晴れやかな事があるように、という願いを込めて名前を考えてくれたそうです。

◆脚本家に至るまでの経緯について

ー プロフィールを確認させていただいて、俳優専門学校を卒業して、一般企業で派遣社員として勤めながら、よしもとクリエイティブカレッジに入っているという流れで、俳優を目指していたのかなとか、その後、いわゆるスタッフ系の仕事を目指したのかなという流れを感じました。俳優専門学校に入学のきっかけのあたりから聞かせていただければ。


一戸慶乃: 幼い頃からすごくテレビっ子で、バラエティーももちろんですがドラマもすごく好きで見ていました。その流れで漠然とエンターテイメントの業界に憧れを持つようになって、10代の時に俳優になりたいと思って、専門学校で3年間演技の勉強をして卒業しました。


ー 俳優業一本では生活することが難しいと耳にします。一般企業でお勤めしながらといった背景にはどういったものがありましたか?


一戸慶乃: 3年間勉強する中で、自分のメンタル的にもフィジカル的にも演技の仕事は難しいな、向いてないかなということを感じました。そこから、「じゃあ自分は何をやって生きていけばいいんだろう…」みたいな迷いの時期が結構長くありました。
それが20代前半です。その時期に派遣社員で働いたり、アルバイトしたりという時期があって、その一環としてよしもとクリエイティブカレッジに通い始めました。そこで脚本の書く楽しさに気づいたんです。


ー 俳優になるにあたっての難しさを感じたところから、それでもエンタメ業界で働きたいと思った葛藤などについて聞かせてください。


一戸慶乃: 一時はやっぱり、高い壁というか、自分はそっちの道には向かない人間なのかなって思っていたんですけど、大好きなドラマや映画を見て育ったので、どこか捨てきれないものがありました。
なので、最終的にエンタメ業界の道に挑戦したという感じでした。

◆学校での学び

一戸慶乃: よしもとクリエイティブカレッジ自体は構成作家とかテレビ制作とかそういったお笑いに関するバックヤードの方の学校だったので、脚本の勉強というのは基本的にはなかったんです。ただ、“こういう仕事もあるから知ってみよう”といった脚本に関係する授業がひとつだけあって、それがすごく楽しかったんです。
NSCというお笑いの学校があるんですけど、その生徒さんたちが卒業公演をやるのですが、その中に演技の講演もあって、「その脚本を書きたい人いるか?」みたいな話になったときに、やってみたいと思って書いてみたらすごく楽しくて、そこからですね。脚本を書くようになったはじまりは。

ー そういったクリエイティブな活動は、それ以前にどこかでおこなっていたことはあるんですか?


一戸慶乃: クリエイティブな活動は、それまでは正直やったことはなかったですし、脚本家っていう仕事について、意識したことも目指したこともなかったので、その時に初めて出会ったという感じです。
ただ、ものづくりみたいなのは好きで、自分でちょっと絵を描いたりとか、それでグッズを作ってみたりとか、本当に趣味程度ですけど、やっていました。

◆脚本執筆のネタ・素(もと)となるものは?

ー 脚本を書くにあたって、自分の中から湧き上がるもののベースとして、数多くの書籍やシナリオ、脚本を読んだり、いろいろなものを吸収して自分のものにしていくといったプロセスが考えられますが、一戸さんの脚本執筆のベースにはどのようなものがありますか?先ほどもお話のあった、TVがお好きで、生活の中で見ているものが自然と自分の中で再構成されて、一戸さんナイズされて書いているようなイメージでしょうか?


一戸慶乃: そうですね。自分で書くときは、もちろんそういう作品も参考にはするんですけど、いろいろなところから刺激を受けながら…それは作品だけじゃなくて周りの人との関わり合いだとか、自分自身が思っていることだとか、そういうところからも考えたりしています。

ー一戸さんとして、描きたいものや、自分の中で「これが得意だ!」といったジャンルがありますか?


一戸慶乃: ジャンルでいうと、人間ドラマだったり、あとラブストーリーが得意とはまだ経験も浅いので言い切れないんですけど、好きなので、そういったジャンルはやっていきたいと思っています。
「こういうのを作ってみたい!」みたいなところで言うと、どこか生きづらさみたいなものを抱えているような人たちにちょっとでも支えというか、何か一瞬でも安らぐひとときになるような作品が作れたらなというのは常に思っています。

◆脚本コンクールへの応募について

ー 脚本に関して、コンクール等での受賞歴があると思います。これは、よしもとクリエイティブカレッジを出た後に応募をはじめてみた流れでしょうか?


一戸慶乃: よしもとクリエイティブカレッジを出た後、脚本のコンクールがいろいろあることを知って、チャレンジしてみたいと思いました。脚本の学校に通っていたわけではないので、コンクールへの応募は本当に初めてで何の知識もない状態でした。
それでもまずは書くことが大事だと思い、コンクールには締め切りもしっかり設定されていますし、チャレンジしていこうと考えて、コンクールに応募をしてみました。


ー 現在の事務所への所属の経緯など、時系列的なものも含めて聞かせていただけますか。


一戸慶乃: 現在の事務所に所属したきっかけは、城戸賞というコンクールで受賞した作品を事務所のスタッフさんが見つけてくださって、そこからお声掛けいただいて事務所に所属することになりました。

◆コンクールの特性を調べたうえでの応募

ー コンクールの応募にあたって、ご自身で調べて応募先を選択されているのではないかと思うのですが、応募するコンクール選びのポイントはありますか?

一戸慶乃: 最初はコンクールの“色”みたいなものはわからなかったのですが、1年、2年と続けていったところで、なんとなくですがそれぞれのコンクールの“色”が、過去の受賞作を読むことでわかってきました。
それで、自分に合うかどうか、“自分には多分合わない”って思ったコンクールには応募しないと決めて徐々に絞っていき、自分に合いそうだなと思うものに集中して書くようにしました。


ー コンクールの受賞作は、過去作も読めたりするところが多いので、研究ができそうだなと思いましたが、やはり傾向を調べていらっしゃったんですね。

一戸慶乃: 自分の中だけの仮説ですけど、調べてみて、“この方向性だから自分がそこに合わせる”というよりは、“自分の書く脚本がきっとここのコンクールだったら見てもらえるんじゃないか”と考えていました。

ー 審査員の方たちの特性がわかるというか、研究すればするほど、賞の受賞の確率も上がるようになりそうですね。

▼ドラマ『ライオンの隠れ家』について

◆脚本担当決定の経緯

ー 今回の「ライオンの隠れ家」というドラマ。脚本担当の決定の経緯をうかがいたいと思います。


一戸慶乃:城戸賞の作品を読んでくださったプロデューサーの方からSNSでご連絡いただいて、実際にお会いして企画の話をうかがいました。本当に城戸賞のおかげです。

ー ちなみに、執筆された脚本の映像化や舞台化の経験はありましたか?


一戸慶乃: 以前、テレビ朝日さんでミニドラマの企画があって、参加させてもらった作品が映像化されたことは一度あるのですが、それはもともと企画やストーリーも割としっかりと決まっているものでした。今回の『ライオンの隠れ家』がオリジナル脚本で連続ドラマとしては初めての経験になります。

◆連続ドラマのデビュー作

ー 今回、徳尾浩司さんと共同脚本の執筆をすることになると思うのですが、おふたりの役割みたいなところをきかせていただけますか。


一戸慶乃: 基本的にはどちらか1人が初稿を書き、それを元に方向性やテーマを膨らませて、ある程度形が決まったらもう1人の方にバトンタッチして、また直しをしたりアイデアを入れたりという作業をしました。
そしてまた打ち合わせを経て、もう一回戻してみたいな感じでラリーをする形で作っています。
あがってきた初稿を仕上げている間に、もう1人が次の話を始める…みたいな感じなので、初稿が順番に回ってくる感じです。

◆あらたな分野への挑戦

ー サスペンス的な部分もあるとのことですが、そういった分野も初めてになりますか?


一戸慶乃: サスペンスは初めてです。おそらく徳尾さんはご経験はあると思いますが、みんなで考えながらすすめていっています。

◆脚本執筆の過程

ー 今回の作品は、弟のために生きる兄と、自閉スペクトラム症の弟、ライオンと名乗る男の子の出現という人物構成があると思うのですが、これらはどの時点で出来上がっていったのでしょうか?


一戸慶乃: 基本的には3人の人間模様といったところは、最初にお声掛けいただいた企画書の時点から決まっていて、兄弟愛とか家族愛とかを描いていこうということになっていました。


ー 企画、脚本執筆、キャストの決定といった観点ではどのような順序で決まっていきましたか?


一戸慶乃: 今回の場合は企画があり、先に脚本を執筆していく中で、少しずつキャストの方が決まっていきました。

◆キャスティングと脚本執筆

ー キャストが決まる前と後で、脚本の書き方は変わったりするものでしょうか?実際の役者さんへの当て書きの要素が出てくるといったことがあると思うのですが。


一戸慶乃: 今回、当て書きみたいなことはしてないんですけど、キャストが決まることで、キャラクターを想像しやすくなったので、書く上で、「こういうことを言いそう…」とか、「こういうことをしたら、きっと面白いよね」みたいなものが具体的に想像できるようになりました。なので、打ち合わせでもそういう会話が増えました。


ー 自分が書いた脚本とか文字でキャストの方々が動くという感覚はどのような気持ちですか?


一戸慶乃:予告を見たんですけど、予告の15秒とか30秒だけでも文字だったものが人間としてそこに存在しているといったことは、単純にすごく嬉しいなって改めて思いました。
キャストの方の存在が大きいですけど、文字だったものが映像化されること。そのすべて。美術だったりとか、もちろん監督もそうですが、全部が合わさってこういう形になるんだっていう感動がありましたし、そういう方たちの仕事はすごいと思いました。
見てる方にとっては私が何作目であろうと初めてだろうと関係ないと思うので、どちらかというと、目の前の作品を最大限良くすることを意識しています。

◆学んだこと

ー 共同脚本ということで、経歴の長い徳尾さんと一緒に脚本を書いていて、学びであるとか、得られたものはありますか?


一戸慶乃: 本当に学びばかりですね。ダメなところをずっと言われると何がいいのか迷ってしまうと思うのですが、徳尾さんは客観的に私が書いたものに対して意見してくださいますし、打ち合わせ中も、その後でも、“いいところはいい”と言ってくださいます。
何が良くて何がもっと改善できるのかというところを客観的に見てくださる…
そういう意見はすごく勉強になりますし、構成や話を展開させていく部分は、徳尾さんが書いたものを見るだけでも本当に勉強になります。

◆ドラマを観る方へのメッセージ

ー ドラマを見る方へのメッセージや見どころ、伝えたいことをお願いします。


一戸慶乃: 見どころは、兄弟のふたりだったり、ライオンくんだったり、その3人の関係性だったり…
見守りたくなるような人たちだと思うので、見る方もそっとあたたかく見守る…といった感じで見ていただけたら…
3人が存在しているだけで、本当に私は愛おしいなと思っているので、そういうところを楽しんでいただきたいなと思います。

一戸慶乃


■ 作品紹介

金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』

▶平穏に暮らす兄弟が「ライオン」と名乗る謎の男の子と出会い、“ある事件”に巻き込まれていく ヒューマンサスペンス!
TBSでは、10月11日(金)よる10時から柳楽優弥主演の『ライオンの隠れ家』がスタートする。本作は、柳楽演じる市役所で働く平凡で真面目な優しい青年・小森洸人(こもり・ひろと)と坂東龍汰演じる自閉スペクトラム症の美路人(みちと)の兄弟が、突然現れた「ライオン」と名乗る謎の男の子との出会いをきっかけに“ある事件”に巻き込まれていくヒューマンサスペンス!
柳楽、坂東、子役の佐藤大空のほか、齋藤飛鳥、柿澤勇人、入山法子、岡崎体育、尾崎匠海(INI)、平井まさあき(男性ブランコ)、森優作、桜井ユキ、岡山天音、でんでん、向井理という個性豊かなキャストが出演。芝居力の高い俳優たちが織りなす温かなヒューマンドラマと、先が読めないスリリングなサスペンス展開が心地よく絡み合う完全オリジナルストーリーの作品をお届けする。

■番組概要
[タイトル]金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』
[放送日時]10月11日(金)スタート 毎週金曜よる10:00~10:54
[スタッフ]
製作:TBSスパークル、TBS
脚本:徳尾浩司(『私の家政夫ナギサさん』『おっさんずラブ』シリーズなど)
   一戸慶乃(第47回城戸賞準入賞「寄生虫と残り3分の恋」)
主題歌:Vaundy「風神」(SDR/Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
編成プロデュース:松本友香(『私の家政夫ナギサさん』『この初恋はフィクションです』『ユニコーンに乗って』など)
プロデュース:佐藤敦司(『恋する母たち』『インハンド』『G線上のあなたと私』など)
演出:坪井敏雄 ほか(『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』『妻、小学生になる。』『私の家政夫ナギサさん』『凪のお暇』など)
編成:吉藤芽衣、中野翔貴

[出演者]
(こ)(もり) (ひろ)(と):柳楽優弥

()(もり) ()()():坂東龍汰

牧村(まきむら) ()():齋藤飛鳥

ライオン:佐藤大空(たすく)(子役)

(たか)() (かい)():柿澤勇人

須賀(すが)() かすみ:入山法子

貞本(さだもと) (よう)():岡崎体育

(あま)() (ゆう)():尾崎匠海(INI)

(ふな)() 真魚(まお):平井まさあき(男性ブランコ)

()()(でら) (たけ)(ひろ):森 優作

・・・

()(どう) (かえで):桜井ユキ

X:岡山天音

・・・

(よし)() (とら)(きち):でんでん

(たちばな) (しょう)():向井 理


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[公式サイト]https://www.tbs.co.jp/lionnokakurega_tbs/
[公式X]@kakurega_tbs
[公式Instagram]lionnokakurega_tbs
[公式TikTok]@lionnokakurega_tbs

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