2024年9月10日、TOHOシネマズ日比谷にて、映画『アナウンサーたちの戦争』の公開記念舞台挨拶が行われた。 昨年NHKでスペシャルドラマとして放送され話題を呼んだ本作は、8月16日より劇場版として公開、大きな反響を呼んでいる。会場には、主人公・和田信賢の妻である和田実枝子を演じた橋本愛さんが登壇。 フリーアナウンサーの原元美紀さんがMCを務め、作品への想いや撮影時のエピソードなどを語った。
橋本さんは、演じた和田実枝子について「気品があり、聡明で、凛とした強さのある女性」と語り、当時の社会状況の中で、女性アナウンサーとして信念を持ち自立していた姿に感銘を受けたとコメントした。
本作は、戦時下で“兵器”となっていった言葉と向き合ったアナウンサーたちの苦悩と葛藤を描いている。 橋本さんは、「戦争の悲劇を描くだけでなく、罪と向き合い、罪を描いた作品」と語り、その意義を強調した。 「過去の自分たちには直接関係のない人たちが犯した罪かもしれないけれど、間違いなく今に引き続きのこと。無関心でいることはできても、無関係でいることは絶対にできない」と、戦争という過去の出来事と現代を生きる私たちとの繋がりについて改めて考えさせられるメッセージを発信した。
言葉の力については「誰かの心を大きく変えてしまう力があることを知っていたからこそ、これまで言葉を使う方だった」と自身の過去を振り返りながら、本作を通して「何を言葉にしないかの大切さ」に気づかされたと語った。
初共演となった森田剛さんについては「以前から作品を見ていて、心から尊敬する俳優さんだった」と語り、「獣のようなエネルギー」と表現した。 「森田さんと和田信賢さんが、まるで一つの体の中に入っているような説得力があった」と、森田さんの演技力を絶賛した。
演出・一木正恵さんについては、橋本さんは10代の頃から一木さんの作品に複数参加しており「(一木さんは)私が本当に心の底から恥ずかしいと思うような、そういった年代の頃からご一緒していて、それで自分にとっては許せない自分をすごく肯定してくださっているような気がして、とても本当にありがたい」と信頼を置いていることを語った。
続けて、一木さんの演出について「今回は、お芝居というよりかは、もう本当にそこに渦巻くすべての、カメラに映るすべてのものに対してものすごい集中力で向き合われていた」と語り、本作にかける一木さんの強い思いを感じたと振り返った。
一木さんから橋本愛さん宛の手紙が代読され、一木さんの橋本さんへの熱い思いが明かされた。
一木さんは手紙の中で、橋本さんをキャスティングした理由について、「信頼関係があり、この人ならと任せられる客観性と熱量を相もった役者さん」だと考えていたことを明かした。作品の中で重要な役割を担う和田実枝子役は、橋本さんしかいないと確信していたという。
また、メディアの闇の歴史を描く本作を、一人でも多くの人に届けたいという強い思いから、作品制作に臨んだことも明かされた。
撮影現場では、キャスト陣が作品にかける一木さんの熱量を受けながら、日々全力で、人がいかに狂うのかを問いかけ、生々しく感情をぶつけ合って演技に臨んでいたという。
橋本さんの演技については、「揺るぎない対応力、柔軟な変化、そして決して穢れない心の美しさが、この映画の救いとなっている」と最大限の賛辞を送っている。
そして、共に作品を作り上げた橋本さんへの感謝の気持ちと、これからも「仲間」として応援していくという気持ちが手紙の最後に綴られていた。
橋本さんは、会場に集まった観客に向けて「この映画を自分で選択して、見ることを選んでここに来てくださった皆さんは、私にとっての仲間であり光」と語りかけ、「共に手を取り合って生きていることを思い出してください」とメッセージを送った。
■ 劇場版『アナウンサーたちの戦争』
森田剛主演! 報道は”真実”ではなかったー。 今の時代にこそ伝えたい、アナウンサーたちの苦悩と葛藤の実話が映画化!
【STORY】
太平洋戦争では、日本軍の戦いをもう一つの戦いが支えていた。ラジオ放送による「電波戦」。ナチスのプロパガンダ戦に倣い「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた。そしてそれを行ったのは日本放送協会とそのアナウンサーたち。戦時中の彼らの活動を、事実を基に映像化して放送と戦争の知られざる関わりを描く。
国民にとって太平洋戦争はラジオの開戦ニュースで始まり玉音放送で終わった。奇しくも両方に関わったのが 天才と呼ばれた和田信賢アナ(森田剛)と新進気鋭の館野守男アナ(高良健吾)。1941年12月8日、大本営からの開戦の第一報を和田が受け、それを館野が力強く読み、国民を熱狂させた。
以後、和田も館野も緒戦の勝利を力強く伝え続け国民の戦意を高揚させた。同僚アナたちは南方占領地に開設した放送局に次々と赴任し、現地の日本化を進めた。和田の恩人・米良忠麿(安田顕)も“電波戦士”として前線のマニラ放送局に派遣される。
一方、新人女性アナウンサーの実枝子(橋本愛)は、雄々しい放送を求める軍や情報局の圧力で活躍の場を奪われる。やがて戦況悪化の中、大本営発表を疑問視し始めた和田と「国家の宣伝者」を自認する館野は伝え方をめぐって激しく衝突する。原稿を読む無力さに苦悩する和田。妻となった実枝子はそんな和田を叱咤し、自ら取材した言葉にこそ魂は宿ると激励する。
しかし和田は任された学徒出陣実況をやり遂げようと取材を深めるもその罪深さに葛藤するのだった。そして館野もインパール作戦の最前線に派遣され戦争の現実を自ら知る事になる。戦争末期、マニラでは最後の放送を終えた米良に米軍機が迫る。そして戦争終結に向け動きだした和田たちにも…。
戦争を語る人がますます少なくなっている現代、 本作を通してまた新しいアプローチの考察と共感、そして感動を呼び起こし、決して風化させてはいけない戦争の事実に目を向けてほしいと願い、映画化の運びとなった本作。 先人の苦悩は、現代を生きる私たちにとって学びになっているのか。
政治・経済・社会状況、そしてエンターテイメントにおいても、なお連綿と受け継がれる「不都合な真実の隠蔽」と「不条理な大衆扇動」がまだそこには、ある。 本作が映画化となり、戦時中における放送と戦争の知られざる関わりを通して、そこに関与する人間たちの苦悩を私たちは突き付けられるだろう。
出演:森田 剛 橋本 愛 高良 健吾 安田 顕 浜野 謙太 大東 駿介 水上 恒司 藤原 さくら 中島 歩 渋川 清彦 眞島 秀和 降谷 建志 古舘 寛治 小日向 文世 脚本 倉光 泰子 音楽 堤 裕介 制作統括:新延 明 プロデューサー:城谷 厚司 林 啓史 撮影:佐々木 達之介 照明:水村 享志 美術:山口 類児 取材:網 秀一郎 大久保 圭祐 録音:高山 幹久 音響効果:最上 淳 編集:松本 哲夫 映像技術:齋藤 佑樹 VFX:髙﨑 太介 美術ディレクター:川村 裕一 衣装:竹林 正人 ヘアメイク:山田 容子 装飾:三代川 昭彦 持ち道具:小澤 友香 制作担当:蓮見 昌寿 助監督:長尾 楽 脚本協力:山下 澄人 演出:一木 正恵 テレビ版制作著作:NHK 製作協力:NHKエンタープライズ 製作・配給:NAKACHIKA PICTURES 2023年/日本/113分/カラー/ビスタサイズ/5.1ch
公式HP:https://thevoices-at-war-movie.com
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