映画『思い立っても凶日』上映後トーク、芋生悠さん、本作の感想と自身の初監督作映画『解放』について語る

映画『思い立っても凶日』上映後トーク、芋生悠さん、本作の感想と自身の初監督作映画『解放』について語る

2024年7月30日、シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』にて、映画『思い立っても凶日』の上映後トークイベントが行われ、俳優の芋生悠さんをゲストに迎え、田村魁成さん、野本梢監督が登壇。本作を観た感想や、芋生さんの初監督作『解放』についてトークを展開した。

■ 映画『思い立っても凶日』トークイベント ゲスト 芋生悠

俳優の芋生悠さんが、2024年7月30日、シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』で行われた俳優・⽥村魁成さん主演映画『思い立っても凶日』のイベントに登壇した。

田村さんと芋生さんは、実は同い年。 イベントでは、芋生さんが、田村さんと野本監督の映画『思い立っても凶日』を観た感想を語った。

芋生さんは、同作品について「野本監督らしい独特な世界観で、主人公の不運が続くストーリーなのに、最後は心が温まる作品だった」とコメント。 特に印象に残ったシーンとして、村上さん演じるキャラクターに起こったアクシデントのシーンを挙げ、「ドキッとするシーンなのに笑えてしまう。なぜティッシュを持っているのか、主人公に対するなにかがあるのかな」とそのシーンに対する感想を述べた。

芋生さんと野本監督の出会いは、芋生さんが17~18歳の頃。 当時、野本監督が、石橋夕帆監督作品に関係するイベントで、芋生さんと出会ったことがきっかけだったそう。 野本監督は当時から芋生さんのファンであり、「ぜひ一緒に映画を撮りたい」という思いを抱いていたことを明かしました。 そして数年後、二人は短編映画『朝をこえて星をこえて』という作品で念願の映画制作を果たした。

同作品は、芋生さん演じる謎の少女と、ベテラン俳優・山下ケイジさん演じる男性がW主演を務める作品。 芋生さんは劇中で披露したダンスシーンの振り付けを完璧に覚えていた一方で、山下さんは全く覚えていなかったというエピソードも飛び出し、会場を沸かせました。

イベントでは、芋生さんが来年の公開に向けて準備を進めている、自身初の監督作品『解放』についても語られた。 同作は、クラウドファンディングで資金を募集中とのこと。 芋生さんは、舞台経験を通して、体の動きや表現について考えるようになったことが、同作を制作するきっかけになったと語りました。 また、作品に込めた思いとして、「体の解放と同時に、心の内側にある魂の解放もテーマにしている」とコメント。

イベントの最後には、芋生さんは「映画を楽しんでいただき、毎日嫌なこと、不運なこといろいろ起きると思うんですけど、何かこう一つ楽しいことだったり、何かいいところ、人のいいところだったり、何か見つけて、一日一日を幸せに過ごしてください」と観客へメッセージを送りました。

▼ティッシュ早抜きシーンに隠された秘密

劇中には田村さん演じる主人公・誠がティッシュの早抜きでギネス記録に挑戦するシーンが登場する。田村さんは、実際のギネス記録では片手で行うルールであることを、撮影後に知ったことを明かしました。 劇中のほとんどのシーンで両手を使っていたことや、箱に触れてはいけないルールがあることを知らずに撮影していたため、「ずっとズルをしているんです」と野本監督が明かし、会場の笑いを誘いました。  

現在、ティッシュの早抜きのギネス記録は橋本環奈さんが保持しており、田村さんは「(自分も橋本さんも)練習は一切していない。」、「ティッシュを早く取る映画を作ったのですが、観ていただけませんか?」と、橋本さんのマネージャーにDMを送ったことを明かしました。

▼芋生悠さんの中学時代の空手の経験談

田村さんと芋生さんが同い年であることから、過去の経験について語り合う場面があった。 田村さんから「生きてきた中で、うまくいかなかったなとか、こういう日があったんだよね、というのがありますか?」と問われた芋生さんは、中学時代に約10年間続けていた空手を辞めたことを挙げました。

「中学時代とか、何もしたくないという時期があって、勉強も嫌で…。空手も、もう行きたくないってなってやめた。そこは結構心残りがあって、もうちょっと熱中するものがあったらよかったなって」と、当時の心境を吐露しました。

芋生さんは、空手を続けていた理由ついて、「天才って言われていたんですよ。それですごいかっこいいじゃないですか。嬉しいじゃないですか。“私、天才なのかも…”と思ってやってたんですけど、なかなか勝てなくなって、すごく挫折して。“もう、いいや!”みたいな」と、空手を辞めた経緯を明かした。

「今思えばそんなに大したことじゃないのに、もっと頑張っとけばよかったなって。そんなに上手くいかないことなんてあるじゃんって今思えば」と、現在の心境を語りました。

これらの発言に対し、映画で監督を務めた野本さんは「中学時代の運動とかって、すごく自分の中のシェア率が高くて」と、当時の芋生さんの気持ちを代弁しました。 芋生さんも「そうそうそう。高すぎて、自分とシェアしすぎてて」と、当時を振り返りました。

現在はまた空手をやっているという芋生さん。 「10年やってると、いつ“型”をやってくださいって言われてもすぐできるし、ふらついたときとかも (体幹がこうね)」と、過去の経験が現在の活動にも活きていることを明かしました。 さらに「アクションシーンとかやるときも空手が染み付いてて動きやすいし。助かってます」と、俳優業との意外な共通点についても言及しました。 

▼主人公・誠への印象

イベントでは、映画を観た感想について、芋生さんは「登場人物が個性的で、誰かに共感するというよりは、自分とは違う人たちがいるなと思いながら見ていた」とコメント。 

特に、ティッシュを使ったパフォーマンスに熱中する主人公・誠の姿に「ティッシュに一生懸命になれる感じがかっこいい。この人の信じる才能って何なんだろうと思いながら見ていました」と感想を述べた。 一方の野本監督は、誠に対して「絵を描いたりギターを弾いたり、中途半端で嫌だった」とバッサリ。 これには会場からも笑いが起こった。

▼⽥村魁成、撮影中の苦労を明かす

作品の内容に絡み、田村さんは撮影中の苦労を明かした。 制作の裏側では、自ら小道具の準備や片付けまで行っていたといい「自分で持ってきて、自分で広げて、自分で片付けて、自分で持って帰って、何やってるんだろうと思いながら…」と、当時の心境を吐露した。 しかし、芋生さんは「でもなんかそれが気持ちいいというか、なんか嬉しくないですか?」、「自分の手で掴んでそれをみんなに届けたい」と、田村さんの行動に理解を示した。

▼芋生悠、監督作『解放』への意気込み語る

イベントでは、近年増加している俳優が企画・プロデュースする映画制作の現状に触れ、芋生さんが来年公開予定の監督作『解放』について語る場面も。 

芋生さんは来年公開予定の映画『解放』で、初めて監督を務めることを語った。 本作は、舞台経験を通して感じた「体の不自由さ」をもとに「体の自由・体の解放」と「魂の解放」をテーマに、自分で表現したい・見つけたいという思いから生まれた作品だと語った。 現在、制作資金を募るクラウドファンディングを実施中

映画『解放』公式SNS
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田村さんと芋生さんが映画制作への思いを共有

田村さんから「(芋生さんは)お芝居から入って、そこから監督をしようと思ったきっかけにはどのようなものがありましたか?」という質問が投げかけられると、芋生さんは、「監督をしたいというのはずっと言ってたのですが、監督をしたいって漠然としていて、なかなか動けなくて、ちょうど描きたいものがポンと出てきて、それをきっかけに、監督ではなく、とにかく映画が作りたいというところから企画を自分でやって勢いで行動した」と経緯を説明した。

それに対して田村さんは、「最初は監督ではなく、いきなり脚本を書きはじめてわからなくなった。結局、一人で作っていると“これはなんのために?”と考えることが自分の中にあって、そんな中でも走り続けた結果がこの作品」と自身の経験を語った。

芋生さんも「私も、漠然と監督をやりたいと考えていた時期があった。しかし、実際に映画を制作しようとした時に、本当に大切なのは『監督になりたい』という漠然とした思いではなく、『何を撮りたいか』という明確なビジョンを持つことだと気づかされた」と語った。

田村さんは、「楽しい話が撮りたい」というところをきっかけとし、企画ほどにはなっていないふわっとした原案をもって、野本監督に相談したという。「野本監督が楽しくないと辞められてしまう」と思って出てきたエピソードトークが、ティッシュの早抜きやマルチ商法の勧誘を受けることが多い話だったそうだ。

また、芋生さんは初監督の経験を通して、編集作業の難しさに直面したことを告白。「現場でワーっと盛り上がってやったところが、編集だと『あれ?』ってなることがあって、現場での冷静さが必要だなっておもいました」と語り、舞台とは異なる映像作品ならではの難しさを感じたと振り返った。
さらに「役として没頭するのはいいけど、もう一人の自分みたいなのが必要だなっていうのを学びました。大変でした。自分でカットかけて。」と、俳優としてだけでなく、監督として客観的な視点を持つことの重要性を学んだことを説明した。

イベントの締めくくりに芋生さんは「毎日、嫌なことや不運なことはたくさんあるけれど、この映画を観てくださった方が、何か一つでも楽しいことや人の良いところを見つけて、幸せに過ごしてくれたら嬉しい」と観客へメッセージを送りました。

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