映画『路上のルカ』ワールドプレミア上映会、アイナ・ジ・エンドと岩井俊二監督が作品への熱い想いを語る

映画『路上のルカ』ワールドプレミア上映会、アイナ・ジ・エンドと岩井俊二監督が作品への熱い想いを語る

2024年7月25日、新宿バルト9において、ドラマ『路上のルカ』のワールドプレミア上映会が開催された。 本作は、昨年劇場公開された音楽映画『キリエのうた』を、岩井俊二監督自らが再編集したディレクターズカット版で、全10話、5時間半を超える規模となっている。 上映会には、主演のアイナ・ジ・エンドと岩井監督が登壇し、作品への想いを語った。MCは東紗友美(映画ソムリエ)が務めた。

■ 映画『路上のルカ』ワールドプレミア上映会

▼冒頭のあいさつ

MCの挨拶の後、アイナ・ジ・エンドと岩井監督が紹介され、大きな拍手と共に登壇した。

まず、アイナは「はい、アイナ・ジ・エンドです。本日は短い時間でしたが、よろしくお願いします。」と挨拶。続けて、岩井監督は「はい、岩井俊二です。お暑い中、本当にお越しいただき、よろしくありがとうございます。本当にこれを作りたかったという、やっと皆さんにお届けできるので、本当に感無量です。ちょっと長い時間ですけど、ぜひ楽しんでいただいてください。」と、作品への熱い想いを語った。

本当に作りたかった作品

MCから、映画「キリエのうた」の仕上げ後も「路上のルカ」の編集作業に没頭していたという岩井監督の状況が明かされた。現在の心境を尋ねられると、岩井監督は「本当にこれを作りたかったという気持ちです。」と、感無量の面持ちで語った。


続けて岩井監督は、「小説と映画、どっちがどうとかって話がよくあるじゃないですか。まあそれは作品それぞれなんで何とも言えないんですけど、だいたい小説の250ページくらい書いちゃうと、もう2時間じゃ入らないですよね、どう考えても。」と、映画化における創作者としてのジレンマを吐露。その上で、「どこか悔しい思いを抱えながら作品作りをしている中で、自分の考えたことをそのまま表現できる機会は、実は多くない。」と続けた。そして、「ディレクターズカット版といえども、尺の制限があることが多い。しかし、今回の『路上のルカ』は、本当に自分が考えた話をそのまま出した結果、この長さになった。」と、本作への並々ならぬ想いを明かした。
そして、「『路上のルカ』、『キリエのうた』をご覧になった方も、まだ見ていないという方も、ぜひ楽しんでください。」と、観客へメッセージを送った。

▼広瀬すず「こんなに分厚い台本は見たことがない、収まるのかな」

映画「キリエのうた」の撮影から2年以上が経過した今、改めて振り返って印象的な出来事を尋ねられたアイナは、「広瀬すずさんが台本を受け取った時、『こんなに分厚い台本は見たことがない、収まるのかな』と驚いていた。」というエピソードを披露。続けて、「まさか5時間バージョンになって、『路上のルカ』というタイトルで新しく生まれ変わって世に出ていくことになるとは、あのすずちゃんの言葉から始まったのかなと思います。」と語り、感慨深い様子を見せた。
「キリエのうた」がほぼ初めての演技経験だったというアイナは、台本の受け取り方やセリフのタイミングなど、何もわからないまま撮影に臨んでいたという。 そんな中、広瀬すずをはじめとする共演者や、岩井監督の存在がアイナを支え、「ルカ」という役に没頭させていったという。

▼松村北斗さんとのエピソード

松村北斗とのエピソードについて尋ねられたアイナは、「松村さんとは『キリエのうた』がきっかけで、楽曲制作をすることになりました。」と明かした。「ガラス花」という楽曲で、BiSH解散前の多忙な時期から、解散後にかけて制作を行ったという。スケジュール調整が大変だったと思われるが、「お互い忙しい中でも、後悔のない作品を松村さんのおかげで、松村さんに花を添えるつもりでやりきれたかなと思います。」と、充実した制作期間であったことを語った。

▼岩井監督が明かす、現場の雰囲気「お互いに刺激し合っている様子が微笑ましかった」

アイナと松村のエピソードを受けて、岩井監督は「現場の雰囲気は素晴らしく、お互いに刺激し合っている様子が微笑ましかった。」と語った。
「キリエのうた」から「路上のルカ」へ、新たな視点と時系列で生まれ変わった作品。
「路上のルカ」は、映画「キリエのうた」を新たな視点と時系列で再構成した作品。映画では描かれなかったエピソードや、未公開シーンもふんだんに盛り込まれているという。

▼タイトルを『キリエのうた』から『路上のルカ』に変更した理由

映画「キリエのうた」を再構成したドラマ「路上のルカ」のワールドプレミア上映会において、岩井俊二監督が、当初「路上のルカ」としていたタイトルを、映画公開後に変更した理由を明かした。
岩井監督によると、「撮影中は元々は路上のルカっていうタイトルで、撮影の途中まで路上のルカってタイトルだった」と明かした。岩井組では台本の表紙が最近は真っ白であることが多く、クランクアップの際には、タイトルとサインを書いて、表紙を作ってお土産に役者さんに渡すのだという。

出演者の松村北斗にも、そのタイトルとサインを入れた台本を渡していたという。しかし、編集作業が進むにつれて、「キリエのうた」として作り上げた世界観と、「路上のルカ」というタイトルの間にズレが生じていることに気づいたという。

岩井監督は、「編集していくうちに、「キリエのうた」の方は「路上のルカ」というタイトルがあまり噛み合わなくて、多分今回の「路上のルカ」を見てもらうと分かると思うんですけど、これだけ物語の流れが違うと、タイトルも変えなきゃいけないなっていう考えが生じました。」と説明。
岩井監督は、タイトルについて「観客との約束であり、契約書のようなもの」と表現し、作品の内容とタイトルの一致性が重要であることを明かした。そのため、「路上のルカ」というタイトルでは、映画を見た観客にとって、面白かった映画も面白くなってしまう可能性があると判断し、「キリエのうた」というタイトルを選択したという。

▼泣く泣くカットされた未公開シーンも、ふんだんに盛り込まれている

映画「キリエのうた」をドラマとして再構成した「路上のルカ」には、映画では見られなかった未公開シーンがふんだんに追加されている。
岩井監督は、映画版では時間の制約上、泣く泣くカットしたシーンの数々を、「路上のルカ」でついに解き放つことができたと語る。
例えば、アイナ・ジ・エンド演じるキリエが歌う「憐れみの賛歌」のライブシーンは、映画ではフル尺ではなく途中でカットされていたが、「路上のルカ」ではより長く収録されている。 また、松村北斗演じる夏彦とのデートシーンも、映画ではカットされたものが追加されており、よりロマンチックな内容になっているという。
さらに、映画の編集段階で「本当に良かった」と監督が絶賛するも泣く泣くカットされた七尾旅人のシーンも、今回はふんだんに盛り込まれている。
岩井監督は、映画をやっていれば、断腸の思いでシーンをカットせざるを得ないことが多々あるが、通常の映画の尺が2時間であるのに対し、「キリエのうた」は3時間まで許されたことに感謝の意を表した。

▼アイナ・ジ・エンド、岩井俊二監督の「光」の表現に感嘆

アイナ・ジ・エンドは、「路上のルカ」の見どころとして、岩井監督の光の使い方を挙げた。アイナは、岩井監督が「夕日を操る天才」と表現し、太陽の光をどのように捉えるのかに命を懸けているかのような集中力で撮影に臨んでいたと語った。 特に「キリエのうた」で、夕日が微妙に傾きかけた瞬間や、日が落ちかけている中で松村北斗がセリフを言うシーンなど、自然光を効果的に使って登場人物を美しく見せる岩井監督の手腕に感動したという。照明をあまり使わずに自然光を生かした岩井監督の映像美を大きなスクリーンで堪能できるのは羨ましいと語った。

▼岩井監督が語る、撮影現場の雰囲気。「本当にただただ楽しかった」

アイナ・ジ・エンドが岩井俊二監督の光の使い方を絶賛したことに対し、岩井監督は「そんなところを見られてたんだな」と笑顔を見せた。
続けて岩井監督は、撮影現場を振り返り「ただただ楽しかった」「幸せな時間だった」とコメント。 出演者全員がいい雰囲気でセッションしてくれていたと語り、特にアイナと松村北斗が二人きりで演技をするシーンでは、ドローン撮影など距離が離れていることもあり、現場では何をしているのか分からなかったという。
しかし、後から映像を確認すると、二人だけの世界でしっかりと演技をしている姿に感銘を受けたという。岩井監督は「現場の空気感がキラキラしていた」と語った。

▼撮影現場は“リラックス空間”

映画「路上のルカ」「キリエのうた」の撮影現場は、和やかでリラックスした雰囲気に包まれていたという。

MCから「現場の雰囲気」について尋ねられると、岩井監督は「すごくリラックスしてたんじゃないのかなって思う」と回答。アイナ・ジ・エンドが緊張しているだろうと周囲が気を遣う中、広瀬すずをはじめとする共演者が率先して現場の空気を和ませていたことを明かした。

岩井監督は、撮影スタッフもリラックスした様子で仕事に取り組んでいたと語り、「本当に各現場の映画によってすごい個性的にやっぱり空気が違うんですよ。やっぱり今回の撮影にはそこに2つとない空気があったなと思い出すといい思い出だなと」と当時を懐かしんだ。

アイナもまた、現場の雰囲気について「本当に唯一無二だと思います。私は他を知らないんですけど、やっぱり自分は本当に心からキリエになっちゃってて」と語り、自身にとって特別な作品になったと振り返っている。

役柄に深く入り込んでいたアイナは、映画のキャンペーン期間中も「キリエの心」でいたために苦労したという。バラエティ番組などに出演する際も、うまく話せず、たどたどしい喋り方になってしまったと明かしている。

▼岩井監督、アイナ・ジ・エンドを大絶賛「唯一無二の世界観を持つ表現者」

岩井監督はアイナについて「ここ数年で一番リスペクトしている日本の表現者」と絶賛した。
アイナは歌手活動だけでなく、作詞作曲、ダンスなど多岐にわたる才能を持つ。岩井監督はアイナを「やれるだけじゃなく、そこにアイナ・ジエンドっていう唯一の世界を作っている表現者」と高く評価し、年齢差を感じさせずに現場に迎え入れたことを明かしている。

さらに「これからもどんどん飛躍して世界を驚かしてほしい」とアイナの今後の活躍に期待を寄せた。

▼二人からのメッセージ

トークセッションの最後に、これから作品を鑑賞する観客に向けてメッセージが贈られた。アイナは、「『キリエのうた』ではエンドロールがめちゃくちゃ好きだった」と自身の感想を述べ、「(観客の皆さんも)今日観た中で一番好きだったシーンを、SNSで報告してください!」と呼びかけた。1

続けて岩井監督は、「いよいよ『路上のルカ』がベールを脱ぎます。あとは観ていただくだけなので、ぜひ楽しんでください」と挨拶。そして、「感想などがあれば、ぜひアイナや私にガンガン送ってください」と語りかけ、会場を沸かせた。

▼フォトセッション

フォトセッションでは、来場者向けの時間も多く設けられ、登壇した二人もさまざまなポーズで楽しませた。

ラストはお客様席をバックにした自撮り写真を撮影

★岩井俊二監督のSNSアカウントにて、写真が掲載


■ 「路上のルカ」(全10話)

©2023 Kyrie Film Band

<あらすじ>
大阪で放浪生活を送っていた少女・ルカは小学校教師のフミ(黒木華)に保護される。
成長したルカ(アイナ・ジ・エンド)は姉の恋人だった夏彦(松村北斗)と北海道帯広で過ごし、女子高生マオリ(広瀬すず)との友情を育むが、彼女を待ち受ける運命は常に過酷であった。
東京に辿り着いたルカはミュージシャンとなり、“キリエ”と名乗り路上で歌い始める。
そこで再会したマオリは“イッコ”と名乗り、変幻自在なコスプレと男性関係で東京を生き抜いていた。
石巻、大阪、帯広、東京―。運命に翻弄されながらも懸命に生きるルカによって紡がれる壮大な歌の抒情詩。

<放送日> 7月28日(日)よる6時30分 独占TV初放送
<放送チャンネル名> 日本映画専門チャンネル

<キャスト>
アイナ・ジ・エンド 松村北斗 黒木華/広瀬すず
村上虹郎 松浦祐也 笠原秀幸 粗品(霜降り明星) 矢山花 七尾旅人 ロバート キャンベル 大塚愛 安藤裕子
江口洋介 吉瀬美智子 樋口真嗣 奥菜恵 浅田美代子 石井竜也 豊原功輔 松本まりか 北村有起哉

原作・脚本・監督:岩井俊二
音楽:小林武史
©2023 Kyrie Film Band

<日本映画専門チャンネル「路上のルカ」特設ページ>
https://www.nihon-eiga.com/osusume/rojo-no-ruka/

7月28日(日)よる6時30分 日本映画専門チャンネルにて、独占TV初放送

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