“母”の小説を“娘”が監督し映画化した【特別な作品】『とりつくしま』9月6日(金)から公開

“母”の小説を“娘”が監督し映画化した【特別な作品】『とりつくしま』9月6日(金)から公開

東直子の同名小説を、娘の東かほり監督が映画化した『とりつくしま』が2024年9月6日(金)より新宿武蔵野館にて劇場公開。予告編と、東かほり監督、原作者の東直子、本作に出演する小泉今日子、そして歌人の俵万智からのコメントが解禁。

■ 映画『とりつくしま』

もう一度、この世を見つめることができるとしたら

死んでしまったあと、モノになって大切な人の近くにいられるとしたら……。あなたは何になりますか? 亡くなった人に、「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。

▼映画『とりつくしま』と多くの反響

映画『とりつくしま』は、東直子の小説『とりつくしま』(筑摩書房)を原作に、娘である東かほり監督が脚本・監督した“特別な映画”です。2007年に発行された小説『とりつくしま』は、すでに失われた人生のかけがえのない記憶がよみがえり、切なさと温かさと哀しみ、そして少しのおかしみが滲み出る11篇の短篇集です。海外も含めファンも多く、シネマプロジェクト作品として映画化を発表した際には様々なところから多くの反響がありました。

▼東かほり監督と本作

東かほり監督は、長編デビュー作『ほとぼりメルトサウンズ』(2021)が、第17回大阪アジアン映画祭、第22回ニッポン・コネクション(ドイツ)などに選出、その後劇場公開もされ、今、大注目の監督。

母が生み出した原作の11篇の中から、「トリケラトプス」「あおいの」「レンズ」「ロージン」の4篇を紡ぎ、オリジナルストーリーを加えて映画化しました。

▼今年3月に行われたイベント上映について

2024年3月、新宿K’s cinemaにて行われた全5回のイベント上映では、全回満席が続出。小泉、監督、東直子のアフタートーク回は発売開始直後に即完するほどの話題となった。
また5月には 『ほとぼりメルトサウンズ』に続き、本作『とりつくしま』がニッポン・コネクション(ドイツ)のNIPPON VISIONS部門に選出。満を持しての劇場公開となる。

▼予告編解禁

新宿武蔵野館での公開決定に合わせ、『とりつくしま』予告編を解禁いたします。人生が終わってしまった人々の前に現れ、とりつく“モノ”をいっしょに決めていく“とりつくしま係”。インナージャーニーが歌う主題歌「陽だまりの夢」に合わせて、夫のお気に入りのマグカップになることにした妻、だいすきな青いジャングルジムになった男の子、孫にあげたカメラになった祖母、ピッチャーの息子を見守るため、野球の試合で使うロージンになった母の姿が綴られていく、やさしい予告編に仕上がっている。

▼コメント

監督、原作者、小泉今日子、そして歌人の俵万智のコメントが到着

東かほり (本作監督)
いのちは本当に突然、うそみたいに消えてしまうことがあります。

洗濯物をたたんだり、顔を洗ったり、ドラッグストアで買い物したりしている時にふと、あぁ、もうあの人は日常に存在しないんだと実感したり。思い出す瞬間って、何気なくて残酷です。
原作の『とりつくしま』を読んだとき、もしかしたらモノになってそばにいるのかもしれないという救いがありました。
10代の私は、母に何度もひどい言葉をぶつけていました。
その頃に母が書いていた物語に、今は救われているので、母親は偉大です。
とりつく“モノ”が主役のお話しを映画化するにあたり、モノ目線を考えながら横になって動かずじっとしていたら、隣の部屋で父がラジオ体操をしていて、ドアの隙間から飛び跳ねる瞬間だけ手が見えたり、頭がみえたり、絶妙に表情が見えなくてもどかしかったんです。でもなんだか見えないからこそ想像して微笑ましくもありました。きっとこういうことなんだろうなと思いながら、脚本や撮り方に活かしました。
私なりのモノの眼差しや、日常のおかしみも込めています。
本公開ができること、心からうれしいです。
大切な人や、見守ってくれているかもしれないモノたちを想いながら観ていただけたらしあわせです。たくさんの方に届きますように。

[監督プロフィール]
グラフィックデザイナーをしながら映画監督としても活動。監督作『湯沸かしサナ子、29歳』(19)で第9回きりゅう映画祭グランプリを受賞した他、オムニバス映画『バウムちゃんねる映画祭』(21)にて『電力が溶けるとき』を監督。初長編映画『ほとぼりメルトサウンズ』(21)は、第17回大阪アジアン映画祭、第22回ニッポン・コネクション(ドイツ)、第14回ソウル国際シニア映画祭(韓国)、第6回JAPANNUAL(オーストリア)に選出された。


東直子(原作)
 『とりつくしま』は、魂がとりついた「モノ」が主人公だけに、映像化は難しいだろうなと思っていました。でも、役者さんの繊細な表情や声に寄り添うやさしい映像に、自分でも驚くくらい自然に入り込んでいました。亡くなった人の心を想像しながら書いていた時のことをずいぶん思い出しました。ついでに、かほりが生まれてから今日までのことも、ずいぶん思い出しました。
 映像を通して生と死を疑似体験することで、生きることにも、死ぬことにも、少しだけ心を楽にしてくれる、そんな映画になったのではないかと思います。
 私はいつかこの映画を「とりつくしま」にして、未来の観客の魂に寄り添ってみたいです。


小泉今日子(“とりつくしま係”役)
父親の葬儀が終わり、娘である私たち三姉妹が火葬場へ向かう黒塗りの車に乗り込むと、なぜか私の目の前に西陽を浴びて金色に光る小さな蜘蛛が糸を伝って降りてきた。幻覚?と思い,姉たちの方を見ると二人にも確かにその蜘蛛が見えているようだ。「お父さんだね」と、長姉が小さな声で呟き、妹たちは妙に納得したのだった。それから私がピンチに陥ると必ず蜘蛛が現れる。現れるだけで何をしてくれるわけでもないのだが、30年も前に死んだ父親と未だに関わっている気分になる。たくさんの時間を費やして人は人と関わる。だからさようならもゆっくりと味わいたい。『とりつくしま』は、そういうことをとても丁寧に素敵に描かれている映画です。


俵万智(歌人)
本歌取りだ、と思った。
元の歌の一部を受け継ぎながら、さらに展開を加える和歌の技法である。
「とりつくしま」という原作の卓抜なアイデアを活用しつつ、映像には新しいリアルと味わいが息づいていた。
死を扱いながらも、温かくユーモアのある世界。
とりつく側の視点をこんなふうに描くのかという驚きとともに、残された側にも踏みこんでいるところが魅力だった。
見送ったばかりの父を思うとき、笑顔になれたことにも感謝している。
たぶん私ではなく、母の何かにとりついていることだろう。


■ 作品概要

映画『とりつくしま』

【あらすじ】
人生が終わってしまった人々の前に現れる“とりつくしま係”は、「この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ」と告げる。夫のお気に入りのマグカップになることにした妻、だいすきな青いジャングルジムになった男の子、孫にあげたカメラになった祖母、ピッチャーの息子を見守るため、野球の試合で使うロージンになった母。

人生のほんとうの最後に、モノとなって大切な人の側で過ごす時間。

==============================================

出演:
橋本紡 櫛島想史 小川未祐 楠田悠人 磯西真喜 柴田義之 安宅陽子 志村魁 小泉今日子
中澤梓佐 石井心寧 安光隆太郎 新谷ゆづみ 鈴木喜明 千賀由紀子 佐藤有里子 宇乃うめの 山下航平
山田結愛 村田凪 田名瀬偉年 富士たくや 富井寧音 松浦祐子 大槻圭紀 平松克美 熊﨑踊花 大古知遣

監督・脚本:東かほり 原作:東直子『とりつくしま』(筑摩書房)

撮影:古屋幸一 照明:加藤大輝 録音:Keefar 美術:畠智哉 スタイリスト:中村もやし ヘアメイク:山田季紗

助監督:平波亘 制作:小林徳行 スチール:西邑匡弘 編集:中村幸貴 音楽:大江康太 小金丸慧 入江陽

宣伝デザイン:東かほり ラインプロデューサー:田中佐知彦 アソシエイトプロデューサー:大久保孝一 児玉健太郎 鈴木喜明

プロデューサー:市橋浩治 特別協賛:海色の地図 ラディアスセブン
主題歌:インナージャーニー「陽だまりの夢」
制作:Ippo 製作:ENBUゼミナール 2024年/©ENBUゼミナール
http://toritsukushima.com

2024年9月6日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開

とりつくしま

映画カテゴリの最新記事