映画『幽霊はわがままな夢を見る』大後寿々花インタビュー。監督の「もっとこうしてみたい」に応えたい。

映画『幽霊はわがままな夢を見る』大後寿々花インタビュー。監督の「もっとこうしてみたい」に応えたい。

映画『幽霊はわがままな夢を見る』が、6⽉29⽇より渋⾕ユーロスペースほか全国順次公開。本作は、⼥優を夢⾒て上京するも、夢破れ故郷・下関に戻ってきたユリに不気味な⻘年と元同級⽣・お菊がつきまとうようになる。今回、ユリの元同級生・お菊を務めた大後寿々花さんにお時間をいただき、初めての訪問となった下関での撮影のエピソードをうかがいました。

大後寿々花

■ 映画『幽霊はわがままな夢を見る』大後寿々花インタビュー

映画『幽霊はわがままな夢を見る』ストーリー
女優を夢見て上京するも、夢破れ故郷・下関に戻ってきた富澤ユリ(深町友里恵)。友達もなく仕事もなく、やむなく父・昌治(加藤雅也)が経営する【カモンFM】を手伝う事に。ところがここは倒産寸前で怖いスポンサーが閉鎖を迫っていた。さらにユリの周りに不気味な青年と元同級生・お菊(大後寿々花)がつきまとうようになる。そんな折にスポンサーから提案され、地元に残る怪談「耳無し芳一」をモチーフにラジオドラマに取り組む事になるが…。

©︎株式会社トミーズ芸能社

▼大後寿々花さんの名前の由来

-まず、本サイト恒例のお名前の話から進めさせていただきます。“大後寿々花”というお名前は本名だそうですが。名前の由来にはどのような話があるのでしょうか?

大後寿々花
いくつか理由を聞いた記憶があるのですが、一番覚えているのは、私は夏生まれ(1993年8月5日生)で、涼しい夏に生まれたところから、”すずか”で、その漢字を変えようとなって、“寿々花”だときいています。

―生まれた季節や、その当時のことをあらわしたお名前なんですね。

 ※ちなみに1993年の夏は、80年ぶりの大冷夏だったといわれています。
 (参考: https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10601484&contentNo=1 )

▼作品出演の経緯

―本作への出演のきっかけ、経緯をお聞かせいただけますか。

大後寿々花
はい。この作品はお話をいただきました。台本と企画書を一緒に頂いて本を読んで、お話が進みました。


―お声掛け頂いた時のことで覚えていることはありますか?


大後寿々花
マネージャーさんから、「今までにない役だと思うので…」っていう一言が添えられていて、どういう役なんだろうと思って読んでみたら、「なんだこりゃ?」ってなったのを覚えています。
―なるほど、SNSで公開されていた動画でのコメントと話が繋がりますね。


【参考】
(お菊は)今まで出会ったことのないタイプの女の子だったので

大後さんのセリフに注目。台本を手にした場面での口の動きや表情、台本を開いてトントンとたたく仕草がイイ!

―大後さんは、芸歴が長く、さまざまな役を経験されていると思うのですが、そんななかでも、今までにない役ということで、かなり新鮮な役・経験でしたか。

大後寿々花
そうですね。この「お菊」という役が、物語の最初から最後まで主人公のユリちゃんにずっと執着してるんですよ。ずっと付きまとってるっていうのが、お菊に関しては起承転結なくずっと続いてるっていう、それってなかなかないことですごく面白かったのが第一印象としてあります。

―大後さんは、このお菊という役を、どのように捉えてお芝居に活かしたり、演じたのでしょうか。


大後寿々花
撮影が始まる前にグ監督が「幽霊にも見えるようにしたい」という話をされていました。どこかふらふらっとしている感じの女の子というお話は伺っていたので、見た目も喋り方も普通の女の子ではない感じになっていると思います。

―どこか儚げな感じがありますが、そのあたりはご自身も感じられて演技されていた感じでしょうか。

大後寿々花
そうですね。ただ、オールロケだったので、外での現場の環境の影響も大きかったと思います。
下関って海風が強くて、街の中では風はほとんどないのですが、海のそばでは荒々しい風の時があって、その風の感じがちょうど髪の毛とスカートを激しく揺らしてくれて、そういった現場の環境にも手伝ってもらった感じがあります。
海風のジメっとした感じが、お菊の髪の毛をベタベタさせるといったこともありました。


―風をよけてなのか、物陰に隠れて二人で話すシーンがあったりとか、先日アップされたSNSの動画でも、かなり風が吹いてて、日傘をさすのも大変そうだなという感じが見受けられました。

▼登場するキャラクターが持つ葛藤

ーお菊だけじゃなく、登場する様々なキャラクターに「葛藤だったり、悩む姿だったりというところとか、それでも生きることに向かう前向きなメッセージを感じた」というふうに書かれていたんですけど、これはどんな点にこのように思われたのでしょうか?


大後寿々花
お菊に関して言えば、学生時代にいじめられていたというのをずっと根に持っていて、死にたい時もあったけど、死ねなくて、結局生きているというあたりがまず大きいと思いました。
一方で、主人公のユリちゃんは、夢があって、でもなかなか達成できなくて、全部投げ出したくなって地元に帰ってきたけど、やっぱり生きていかなきゃいけない、過ごしていかなきゃいけないというあたりに葛藤するものを感じました。
幽霊の男の子は別にして、他のキャラクターもそれぞれそういう悩みや葛藤を持ちながら進んでいくあたりが意外と前向きな作品だなって私はすごく感じました。


―下関の町自体だとか、それぞれの登場人物にさまざま悩みがあるけれども、もがいてもがいて、でも何かをやろうみたいなところがありつつ、全員が前を向いて話が進んでいく。生死に関する重たいテーマもあるけれど、前向きなコンセプトが込められている気持ちを感じましたね。

▼影の薄い青年との共演

― 「グ監督が描くこの映画の不思議な世界観に飛び込んでみたい」というコメントがあったのですが、どういう世界観を感じたのか、どう飛び込んでみたいと思ったのか、そのあたりを聞いてみたいと思います。

大後寿々花
この世に存在していない子・幽霊の子がいて、それとは逆に生きている二人がいるシーンというのは、他の作品でも多分あると思うのですが、生きている人が二人会話していて、その中にこの世には存在していない子も画面上にいて、その3人でのお芝居っていうのを、私は経験したことがなくて、その台本には噛み合ってないセリフがいっぱいあるんですよね。
その場面について、「これってどうやって再現されるんだろう?」っていうのが、最初にすごく気になりました。撮影時にユリちゃんと2人で喋ってる間に男の子が映像としているわけですが、幽霊の男の子はいない感じで進んでいて、私自身・お菊としては彼が見えていないし、声も聞こえていない設定なので。

―「(ユリ、)誰かと話してるの?」みたいなセリフがありますもんね。

大後寿々花
画面の中には3人の顔がちゃんと入っているんですけど、引きの画面で見たら3人がすごい格好をしているんですよ。枠の中に3人で収まらなきゃいけないから。それがちょっと面白かったです。撮影自体にシュールに感じる時がありました。

▼撮影時と完成した作品を観ての感想

―出来上がった作品をご覧になって、撮影時と印象の違いなどはありましたか?

大後寿々花
はい、台本を読んだ時と実際に撮影に入った時、そして完成した作品を見た時で、それぞれ印象が異なりました。特に撮影現場で感じた空気感や感情が、完成した作品にどのように反映されているかを見るのは興味深かったです。

▼はじめての 船が行き交う 下関

ー今回、下関は初めて訪れたそうですが、印象に残っていることはありますか?

大後寿々花
下関の景色は本当に素晴らしかったです。空も海も広くて、自然豊かな町並みに圧倒されました。撮影は下関の観光地で行われることが多く、色々な場所を訪れることができました。
中でも印象的だったのは、海沿いの撮影です。下関の周りにはたくさんの船が通っていて、無線が飛び交っているんですね。そのため、撮影用のマイクの無線が混線してしまい、音が取れなくなってしまうことがありました。


―東京での撮影では経験することのない、下関ならではのエピソードですね。

▼下関の想い出

- パンフレットに記載されていた、“グ監督が訪れる時だけ開くラーメン屋さん”には行かれましたか?


大後寿々花
はい、行きました。当時店主の方がご病気かなにかでお店が無期限休業中だったのですが、グ監督が撮影で下関に来ている間だけ特別に開けてくれると聞いていたので、夜に伺いました。


―下関では色々な場所に行かれたそうですが、特に印象に残っていることはありますか?


大後寿々花
少し心残りなことがあって…。市場に行ったのですが、ちょうど定休日だったのか、お店が閉まっていて食べられなかったんです。朝ごはんもほとんど食べずに、お腹を空かせて行ったので、とても残念でした。でも、海鮮は別の場所で食べることができました。


―それは残念でしたね。でも、海鮮料理を楽しめたのは良かったですね。下関には、歴史的な場所から美味しい食べ物まで、色々な魅力がありますよね。

▼グ監督について印象に残っていることは?

-グ監督は「大後さんには余計な演出はせず、自由に演じてもらった」とコメントされていましたが、実際にはどのような指示がありましたか?

大後寿々花
グ監督からは、幽霊の男の子との入れ替わりのタイミングなど、場面ごとの細かい調整についてお話がありました。大きく「もっとこうしてほしい」といった演出は特になく、全体的には自由に演じさせていただきました。

ーでは、ご自身で演技を考えられた部分が多いのでしょうか?

大後寿々花
はい。まず、「幽霊のように見えたらな…」ということが頭の中にあったので、その演技をすることは常に意識していました。
あと、グ監督がそのシーンの撮影を気に入ると、カット後に「面白い!」と言ってくださるんです。その「面白い!」という言葉を頼りにしながら、撮影をつづけていきました。

ー監督の「面白い!」という言葉は、役者として嬉しいものですよね。

大後寿々花
はい、とても嬉しかったです。言葉で説明するのが難しい感覚的な部分を、監督が面白がってくださることで、「こういう演技でいいんだ」と手応えを感じることができました。

ー監督の指示や言葉について、他に印象に残っていることはありますか?

大後寿々花
ユリとの距離感について、細かく指示していただいた記憶があります。「ユリちゃんに近く、もうちょっと近く、顔近く、もうちょっと近くてもいいかな…」みたいに。

―ふたりの関係性や感情を考えるとその距離感って大切ですものね。

大後寿々花
はい。お菊は、大人になって多分やっと、ユリに執着できるようにまでなったというか、ずっと忘れられずにいたんだと思います。そうしたら、ようやく会えた子が悩んでいるっていう。
お菊はユリのことがずっと気になっていたんだと思います。二人の関係と共にいい感じで流れていく、その時間というか空気の流れが本当に良かったなって感じています。

▼ラジオドラマのシーン

―作品の中で、ラジオドラマの朗読シーンがありますが、演じる上で意識したことはありますか?

大後寿々花
ラジオドラマの登場人物を演じることは、映画の中ということもありますし、もうひとつフィルターがかかる作業で、私が普段おこなっているラジオドラマと違う部分があります。
でも、お菊の生きているか、死んでいるかわからないような彼女自身の存在が面白いと感じたので、あえてフィルターをかけずに演じてもいいかなと考えていました。
ラジオドラマの中では朗読して、その中で複数の役を演じていますが、それぞれ毎回少し違った気持ちで演じ分けていました。

©︎株式会社トミーズ芸能社

―主人公のユリは女優を目指して挫折し、ラジオドラマという形で演技をすることになります。夢破れたユリと、ラジオドラマで活躍するお菊との間には、感情の対比があったかなどを考えましたか?

大後寿々花
お菊に関しては、他の方から「朗読が上手い」というセリフがあったことから、彼女の強みとして表現したいという思いがありました。お菊を単に不気味な存在として描くのではなく、彼女なりの魅力や才能を持っていることを示したかったんです。
朗読の上手さはお菊の秀でた部分であり、彼女がラジオドラマで活躍するポイントの一つになっていると思います。

―下関の方々との共演はいかがでしたか?特にラジオドラマ収録のシーンでは、地元の方々が参加されていたようですが、皆さん役者さんだったのでしょうか?

大後寿々花
ラジオドラマ収録のシーンでは、地元の方々にご協力いただきました。皆さん、お芝居が好きな方が多かった印象です。中には、地元の劇団に入っている方もいらっしゃったかもしれません。オーディションのシーンには、地元の子供たちも参加していました。

▼完成した作品を観ての感想

ー完成した作品をご覧になって、どのような感想を持ちましたか?

大後寿々花
撮影中はモニターを見る機会があまりなかったので、ユリちゃんや幽霊の男の子との距離感、3人の立ち位置など、グ監督が「面白い」と仰っていた部分とどう繋がっているのか気になっていました。
完成した作品を見て、初めて「ああ、こういう風に撮られていたんだ」という発見があり、面白かったです。

▼監督と俳優の役割

―撮影中に、グ監督が「面白い!」と言う瞬間、どうすればそう言ってもらえるのか、役者として考えるようになるものでしょうか?

大後寿々花
グ監督が「面白い!」と言った後に、「もっとこうしてみたい」「もう一回やってみたい」という話があれば、それに応えたいという気持ちは強くなります。
私自身が良いと思ったカットでも、監督が「違う」と言えば、それは作品として違うものになってしまうので、その監督の感覚を頼りにして演じていました。

―役者ならではの感覚がたいへん興味深い話ですね。監督が「面白い!」と思う理由や、どうすれば良くなるのかは、最終的な作品に反映されていると思いますが、それを感じることができましたか?

大後寿々花
私は監督や演出の経験がないので、作品を完成させるまでの過程を想像することしかできませんが、監督は常にさまざまなものをトータル的に見て作品を作っているのだと感じます。役者は、目の前のシーン一つ一つを大事にしていると思います。

―多くの役者さんがいる中でそれをまとめる監督の能力は本当にすごいと思いますね。

▼ラジオドラマでの表現

―身振り手振りを伴う演技と、映像がないラジオドラマでの演技では、どのような違いを意識されていますか?

大後寿々花
特に意識したことはないのですが、ラジオドラマでは「滑舌が良い」と褒めていただいたことがあるので、無意識のうちに聞き取りやすいように話しているのかもしれません。
―映像がない分、はっきりと喋ったり、説明的なセリフが増えたりと、普段のお芝居とは違いますよね。

大後寿々花
そうですね。ラジオドラマやナレーションの経験はありますが、映画の中でラジオドラマを演じるという二重構造が面白いと思いました。

▼メッセージ

―映画を楽しみにしている観客の皆さんへメッセージをお願いします。本作の見どころや注目してほしいポイントはありますか?

大後寿々花
まずは、映像の美しさに注目してほしいです。山口県下関市の美しい自然や観光名所が、映画の中で生き生きと描かれています。
また、ラジオドラマのシーンも面白いので、ぜひ注目してください。幽霊を探すというミステリアスな要素もあり、全体を通して楽しんでいただける作品になっていると思います。


▼舞台挨拶情報


▼大後寿々花さん最新情報


■作品概要

映画『幽霊はわがままな夢を見る』

深町友里恵 加藤雅也 大後寿々花 西尾聖玄 山崎静代(南海キャンディーズ) 佐野史郎

監督:グ スーヨン 脚本:グ スーヨン 具光然 製作:佐藤紳司 プロデューサー:栃木光信 

協力プロデューサー:加藤雅也/冨永洋一/小池勇三/沖潮英伸/申徹也 宣伝プロデューサー:鴻池和彦

音楽:lyon+Taichiro メインテーマ「selfish」 エンディング曲:『夜の彼方』BLACKNARZARENE(BABYTRACKS)

製作:株式会社トミーズ芸能社 株式会社テンプリント 制作プロダクション:株式会社ジーン 

配給・宣伝:cinepos 協力:下関市/下関フィルムコミッション/株式会社コミュニティエフエム下関/株式会社ユニコン

宣伝協力:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協⼒:ミカタ・エンタテインメント

公式HP:https://www.yureiwagamama.com

公式X: https://twitter.com/yureiwagamama

6/29より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

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