映画『スミコ22』主演・堀春菜インタビュー。等身大の彼女の姿が映る、言わば「ハルナ27」

映画『スミコ22』主演・堀春菜インタビュー。等身大の彼女の姿が映る、言わば「ハルナ27」

創作ユニット「しどろもどリ」の最新作にして堀春菜が5年ぶりの映画主演を務める『スミコ22』(監督・脚本:福岡佐和⼦)が新宿Kʼs cinemaにて6⽉29⽇(⼟)より劇場公開される。本作は、2022年8月後半から9月にかけての監督自身の日記がベースになっているという。静岡スミコという女性が23歳の誕生日を迎えるまでの15日間に渡る日常そして葛藤がユーモラスに描かれる。今回、主演の堀春菜さんにお時間をいただき、本作にまつわるエピソードや堀さん自身についてもお話をうかがいました。

■ 映画『スミコ22』主演・堀春菜インタビュー

▼本作出演の経緯

ー まず、本作出演の経緯についてうかがってみたいと思います。どのような経緯で主演を務めることになったのでしょうか?


堀春菜
「しどろもどリ」(福岡佐和子&はまださつき)が新作映画を撮るにあたってワークショップを開催することになり、プロデューサーの髭野さんが私を誘ってくれてそこで初めて監督たちと出会いました。


ー ワークショップの時点で、脚本はある程度出来上がっていたのでしょうか?


堀春菜
そうだと思います。はまださつきちゃんや他の参加者の方々と一緒に、シーンの抜粋の本読みをしました。

ー 主演としてオファーが届いた時は、どんなお気持ちになりましたか?

堀春菜
とてもうれしかったです。「しどろもどリ」の世界にまたひたれること、そしてスミコという役を演じられることにワクワクしました。

ー 堀さんにとって、本作は5年ぶりの主演映画ということですが、久しぶりの主演はいかがでしたか?


堀春菜
そうなんです。振り返ってみたら本当に5年ぶりで、自分でもびっくりしました。


-コロナの影響もあったと思いますが、時の流れは早いものですね。久々の主演ということで、これまでと心境の変化や違いはありましたか?


堀春菜
実は、あまり変わらないんです。主役だからといって特別何かが違うという感覚はなく、やることは他の作品と変わらないと思っています。


ー 本作は監督の日記が映画のベースになっているとのことですが、堀さんはその日記の内容をどの程度ご存知でしたか?


堀春菜
実は監督の日記を見たことがないんです。映画の脚本になった状態で初めて内容を知ったので、日記の内容が100%反映されているのか、それとも脚色されているのかはわからないんです。


ー 日記の内容が気になりますね。人の日記を見るのはいけないことかもしれないけど、見せてもらいたい気持ちもあります(笑)。きっと映画にはできないようなこともたくさん書かれているんでしょうね。


堀春菜
確かにそうですね。映画ではわからない部分もたくさんありそうです。


ー 助監督、そして俳優としても共演したはまださんは、この作品の元になった福岡監督の感覚について「わかる部分とわからない部分が半々くらい」とおっしゃっていましたが、堀さんはいかがですか?


堀春菜
うーん、私は意外とわかる部分が多いかもしれません。あまり深く考えないタイプなので、「そう言われたら確かに…」と思ってしまうことが多いです。


ー 共感できる部分が多いということでしょうか?


堀春菜
そうですね。もしかしたら、私自身も無意識のうちに同じようなことを考えているのかも知れません。


ー スミコの部屋には、キリンのぬいぐるみがあったり漫画がたくさんあったりと独特の雰囲気でしたね。


堀春菜
あの部屋は、監督の実生活を元にしていてキリンや漫画は監督の私物なんです。


ー 撮影期間中は、監督たちと一緒に寝泊まりしたこともあったそうですね。


堀春菜
はい、シングルの布団2つに監督とさつきちゃんと私の3人で寝たこともあるのですが、3人で寝るには狭かったです(笑)


ー楽しそうですね。撮影時期はいつ頃でしたか?


堀春菜
日記と同じく昨年の9月ごろでした。


ー それなら布団からはみ出ても寒くはない季節ですね。あの部屋では撮影だけでなく昼食なども一緒に食べたのでしょうか?


堀春菜
はい、さつきちゃんが美味しいキャベツのサラダとかを作ってくれて、遊びに来ているような感覚もありました。


ー そういった生活は撮影にも良い影響を与えたのではないでしょうか?


堀春菜
そうですね。あののんびりした雰囲気は自然な演技を引き出してくれたと思います。

▼共演者との話

ー 共演されたはまださんの印象はいかがでしたか?


堀春菜
彼女は助監督も兼任していて、はなという役を演じながら衣装のパジャマ姿のまま裏方もこなしていました。


ー それはすごいですね。


堀春菜
そうなんです。はなになるスピードが早くて、パッと座るだけでそこにいるんです。「さつきちゃん、すごいなあ」と思いながら見ていました。俳優と助監督の両立は大変だったと思います。


ー はまださんとは撮影中もよくお話をされたんですか?


堀春菜
はい、さつきちゃんは出演者の中で一緒にいる時間が一番長かったので、移動中や着替えのときなどよく話をしました。おかげで、スミコとはなの関係性も自然と築かれていったように思います。

▼エビフライ5等分と猫のおこげの絵

ー 映画の中で、エビフライを5等分するシーンがありましたが、練習されたそうですね。


堀春菜
しました!iPadにエビフライの絵を描いて。実際にエビフライを切ることもしてみたり試行錯誤しましたね。

ー劇中に登場する猫「おこげ」の絵は、堀さんがデザインされたのですか?


堀春菜
一枚、監督が試しに描いた猫の絵があって、それを参考に「描いてください」と言われました。それがベースになっています。


ー なるほど。


堀春菜
劇中の2枚の絵は私が好きなように描いたので私のデザインになっていると思います。おこげの歌は監督のお母さんが歌っていたものらしいです。

▼妄想ってする?しない?

ー スミコがある妄想する場面が印象的でした。堀さんご自身は、普段「もし○○になったら」と妄想することはありますか?


堀春菜
「もし○○になったら」という妄想はあまりしないかも知れません。妄想ではないですが、最近舞台を観に行って良い言葉だなと思ったら脚本を買って声に出して読むのが楽しいです。


ー 役者さんならではですね。給料日のエピソードも劇中に出てきますが、堀さんはいつにも増してウキウキする日はありますか?


堀春菜
職業的に入金日がバラバラなことが多いので給料日が曖昧なのですが、そうなるとウキウキするのはいつだろう… 結構いつでもウキウキしてるからなぁ。


ー ローテンションに見えて、意外とウキウキしているんですね。


堀春菜
そうなんです。落ち着いて見えるみたいなんですけど、結構ウキウキして楽しんでるんですよ。でも、あんまり伝わってないみたいで。なんでだろう?
ちなみに、朝起きて洗濯を回して午前中に洗濯物が外に干せた日はウキウキしますね。一日がスムーズに始まった感じで「どこかに行こうかな」って思います。

ー 映画の中であだ名に関するエピソードのシーンがありましたが、堀さんご自身はニックネームで呼ばれることはありますか?

堀春菜
結構ありますよ。はるちゃん、堀ちゃん、ホリハル、堀さん、春菜とか…現場によって呼び方が違うんです。だから、それぞれの現場で違うモードになるというか、呼ばれ方によってなんとなく性格も変わる気がします。


ー 呼ばれ方によって性格が変わるというのは面白いですね。


堀春菜
以前、街を歩いていたら、急に「はーちゃん!」って呼ばれたことがあって。私をそう呼ぶのは幼稚園の時の友達しかいないのでびっくりしました。十何年ぶりかに会ったんですが、その瞬間に一気に過去に戻ったような感覚でゾワゾワっとしましたね。


ー 堀さんのことを「ホリハル」と呼んでいるのを映画館では聞きますね。


堀春菜
確かに。ちなみに、韓国の方は「ホリハルナー」ってフルネームで呼ぶことが多いですね。

ー 映画『スミコ22』は福岡監督自身の日記がベースになっているとのことですが、仕事を辞めて自問自答する姿も描かれています。堀さんご自身は、自問自答をされることはありますか?

堀春菜
もしかしたら自問自答している瞬間はあるのかもしれません。普段は忘れてしまっているだけで、ふとした瞬間にすごく考えていることもあると思います。


ー 具体的にどんな時に自問自答することが多いですか?


堀春菜
私は一人で旅行に出かけるのが好きなんですが、そういう時に自分と向き合うことが多いかも知れません。移動中に頭の中でいろいろ考えたり、心の中で会話したりすることがあると思います。


▼『スミコ22』メインビジュアルの話

ー 劇中の話と少し視点を変えて、メインビジュアルの写真の話を。素敵なメインビジュアルですね。


堀春菜
ありがとうございます。最初は恥ずかしかったけど周りから好評で私も少しずつ気に入ってきました。この作品はOK・NGの判断が難しくて、自分的には微妙な写真もそれを外していくと「あれ?なんか足りない気がする」ってなるんです。


ー 好き嫌いで揺れ動く感じは、この作品のテーマにも繋がっている気がします。


堀春菜
自分がそう思えない部分を好きだと言ってくれるのは、ちょっとうれしいですね。「私のこれを好きって言ってくれるんだ」って。


ー 写真も映画も、堀さんがすごく自然体で映っていると感じます。


堀春菜
そうですね。スタッフもキャストも年齢が近い人が多かったので、映画を撮っているのを忘れるような楽しさがありました。

▼お客様へのメッセージ

ー では最後に、締めのメッセージをお願いします。


堀春菜
ご取材、ありがとうございました。『スミコ22』は本当に可愛らしい映画になっています。なので、ぜひ気軽に映画館に足を運んでいただけたらうれしいです。でも、可愛いだけじゃなくて、観終わった後にちょっと考えさせられるような、そんな時間を過ごせる作品だと思います。そして、映画を観た後は、ぜひ感想を誰かと共有してください。「ここが好きだな」とか、そんなおしゃべりができたら、きっと素敵な一日になると思います。


【取材・撮影風景】


■ 映画『スミコ22』

あらすじ
友人とエビフライパーティーをしている静岡スミコはふと思う。自分の感覚がいつの間にかひどく曖昧なものになっている。何が猛烈に好きで何が耐え難く嫌いか、何を面白く思っていて何を喋りたいのか、そのどれをもちっとも感じられないまま人生を過ごしてしまっていると。

それからのスミコは自分と会話しながら日々を過ごす。実家にいる猫のおこげが彼女にとってとても大事である。馴染めない空間に馴染もうと挑んだ後は、美味しいチョコを食べる必要がある。白いスキニーを履いてパンツが透けている人が気になる。二日酔いで昨日のことを思い出すはずが、思い出す必要のないところまで思い出してしまう。

大学を卒業して入社した会社を4ヶ月でやめたスミコ。新生活の中で、自分がたしかに思っていることを たしかに思っているな と思いながらすごそうとしている。

出演:
堀春菜 はまださつき 松尾渉平 樹 安楽涼 梶川七海 イトウハルヒ 川本三吉 遠藤雄斗 瀬戸璃子 中川友香 安川まり 原恭士郎 黒住尚生 東宮綾音 木村知貴

ナレーション:工藤祐次郎

監督・脚本・編集:福岡佐和子 プロデューサー:髭野純 助監督:はまださつき 制作:原恭士郎 撮影・グレーディング:中村元彦 録音・整音:堀内萌絵子 録音助手:稲生遼   制作応援:藤咲千明 スタイリスト:大場千夏 スチール:新藤早代 音楽:ゴリラ祭ーズ  宣伝デザイン:東かほり 主題歌:ゴリラ祭ーズ「日記」

企画・制作:しどろもどリ  製作・配給:イハフィルムズ

映画『スミコ22』公式サイト:https://sumiko22.amebaownd.com/
公式X @sumiko_22_
Instagram  @sumiko_22_

2024年6月29日(土)より新宿K’s cinemaにて公開

スミコ22

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