映画『輝け星くず』山﨑果倫インタビュー「そのままのあなたでいていいんだよって言ってくれる映画」

映画『輝け星くず』山﨑果倫インタビュー「そのままのあなたでいていいんだよって言ってくれる映画」

映画『輝け星くず』が、6月15日(土)より新宿K’s cinema他全国順次公開。本作は、社会を脱落した者たちが再び自分の道にチャレンジする姿を描いたヒューマン・コメディ。
今回、主演・かや乃を演じる山﨑果倫さんにお時間をいただき、本作出演の経緯や撮影時のエピソードをうかがいました。

■ 映画『輝け星くず』山﨑果倫(主演・かや乃)インタビュー

▼本作出演に至るまでの経緯

-出演するまでの経緯を教えてください。

山﨑果倫
オーディションがあり、おおまかなプロットという形でお話のあらすじや役柄について書かれた作品概要をいただきました。私が受けたいという意志を持って、オーディションを受けたのがきっかけで、そこから選んでいただいた形になります。

-プロットの状態だったということは、まだそんなに詳しい企画ではなかったんですよね?

山﨑果倫
そうですね、しっかりとしたかたちで出来上がっていた状態ではなかったものの、割と詳しい企画書で、文書としていただいた形です。

▼どのようなオーディションが行われたか

-オーディションの様子やどのようなことがおこなわれたか教えてください。

山﨑果倫
オーディションは本当に人が多くて、かなり早いスパンで、「次の人、はい、次の人…」みたいな流れで進んでいきました。

ゆっくりじっくりと審査する方々とコミュニケーションを取ったり、質疑応答がたくさんあるというよりかは、自己紹介とお芝居して終了という感じでした。

すごく印象に残っているのは、オーディションの際に相手役の役者さんがいらしたことです。オーディションでは、光太郎とかや乃のシーンを演じたのですが、審査員の方のどなたかが相手役のセリフを読んでくれて、私が演じるパターンではなく、私が演じた、かや乃の恋人の光太郎役を演じる俳優業を行っている役者さんが来てくださって、セリフはもちろん、お芝居もきちんとした形でやらせてもらえたので、そのオーディションはすごくやりやすかったです。

セリフのやりとりを、役者さんと交わす様子として見せることができたので、自然なやりとりでお芝居ができたことを覚えています。

-実際の撮影を念頭においてできるような感じだったんですね。

山﨑果倫
ありがたい環境ですね。なかなかそこまで用意してくださることは多くないので、とてもうれしかったです。

▼出演が決まった時の感想

-主演としての出演が決まった時の喜びや意気込みはいかがでしたか?

山﨑果倫
決まった時、まず主演をいただけたっていうのはとても嬉しかったですし、信じられない気持ちも若干あって、実感がわくまで時間かかりました。

でも、話が進んでいく中で、「私だからできるな…」と感じ部分がたくさんあると思える役だったので、頑張りたいと思いました。

-私だからできると思った理由にはどのようなことがありましたか?

山﨑果倫
制作者側の方々に私の暗い部分というか、暗い部分を受け取っていただくことが多いのですが、私が演じるなら、かや乃の持っている明るさや天真爛漫さはもちろんですが、暗さをすごく大事にできると思ったのが第一印象でした。

そこに対して、私だったら、ここをすごく大事にできると思いました。

▼作品の雰囲気とメッセージ

-キャッチフレーズとして、“優しい映画”といったように書かれており、作品もそう描かれていますが、中身としては薬物だったり、忘れられない過去みたいなものがあったりで、暗い部分が多々ありましたね。

山﨑果倫
暗い部分もたくさんあって、それをリアルに映すのも映画のあり方として素晴らしいと思うのですが、西尾監督の描き方は、重いテーマを描いてもどこか受け取りやすい形というか、老若男女問わず、手に取りやすい形で表現してくださる監督だと思いました。

なので、暗さの面に不安はありませんでした。だからこそ、役者が暗さをちゃんと汲み取らないと、軽く扱ってしまうことになるので、そこを大事に演じました。

西尾監督のウェブ上のnoteのサイトを見ていると、映画の論評として優しい視点でたくさん書かれていて、決してけなさないとか、美点凝視で、いいところを見ている印象があります。

山﨑果倫
本当に人とか物事の素敵な側面・愛しい側面をみつけるのが上手な方で、それを言葉にして、お芝居と作品として表現することを体現している方なので、ぬくもりのこもった作品ばかりで、改めて参加できて光栄に思います。

▼最初に脚本を読んだ時の感想、完成した作品を観ての感想

-脚本を最初に読んだ時と、あとは完成した作品を見ての感想、2つをセットで教えてください。

山﨑果倫
脚本を読んだ時の感想は、文字上だと結構重いシーンが多いなって思ったのが印象です。

特にお父さんと光太郎のやりとりはポップなんですけど、私の出演シーンはかなり感情を使うシーンというか、人間同士がぶつかるシーンが多いと思いました。

でもまっすぐ愛情表現をするシーンもあったり、とにかく、私が演じたかや乃が心をオープン・感情をあらわにするシーンが多かったので、まずそこが脚本を読んですごく印象的でした。

「かや乃って、すごく感情を表に出すな…」みたいな、演じると、かなりカロリーが高そうだなという印象でした。

-かや乃が抱えているものは大きいですものね。

山﨑果倫
そうですね、本読みの前の段階で、一人で声を出して脚本を読んでいる段階で、すごく好きな脚本だなって思ったのを覚えています。読んでいるだけで心が動かされる、本当に私たち役者にとって助かる脚本というか、無理に色を加えなくても、読んでるだけですごくいいシーンが多かったので、「これを岩谷さんとか森さんとかがセリフを発したらどんな風になっていくんだろう…」っていうのがすごく楽しみでした。

▼ロードムービー感。完成した作品を観ての感想

-光太郎と父親の部分は、ちょっと楽しげなロードムービー感がありますよね。

(C)ノブ・ピクチャーズ

山﨑果倫
すごく、可愛らしいと思います。

山﨑果倫
あのふたりの道中のシーンにかや乃が登場することはほとんでないんですよね。

山﨑果倫
ほぼないです。

なので撮影も、そばに行くことがなかったので、完成を見るまではどんな仕上がりになっているか、想像でしかない状態だったんです。

-では、完成した作品を見ての感想を聞かせていただけますか。

山﨑果倫
すごく好きな作品だなって思ったのと、私が参加している・してないに限らず、私はこの映画が好きだって思えたのがすごい嬉しかったです。

森さんと岩谷さんのシーンを見て、とっても愛しい人たちだなと思いました。器用な人が一人も出てこないけど、すごくやりとりに癒されるというか、嫌な気持ちになる瞬間があまりない映画なので、「めちゃくちゃいい映画じゃん!」って思いました。

自画自賛みたいになっちゃうんですけど、そう思いました。嬉しかったです。

「私はこの作品のヒロインなんだな…」って、身が引き締まる思いでした。

-かや乃を引き取りに2人で試行錯誤で、行ったり来たり、ああでもない、こうでもないと奮闘する姿がすごく良いとおもいました。

▼初金髪

ー撮影時には、実際に金髪にされたのでしょうか?

(C)ノブ・ピクチャーズ

山﨑果倫
人生で初めてブリーチをしました。初金髪ですね。

ブリーチは撮影中に1回中断しています。その中断している最中に別の作品を撮影していたので、その時は黒髪にしていて、だから2回ブリーチしたんですよ。

1回につき2回ブリーチしたので、計4回ブリーチしたことになるので、もう髪の毛がホウキみたいにバサバサでした。

でも、かや乃の髪はきっと傷んでていいんだよなと思っていました。整ってるよりもちょっとケアが行き届いてないぐらいでいいのかなって思ってる部分があったので、だんだんと、かや乃らしくなってくる自分、そして見た目にも役作りにおいて助かりました。

▼カメラを使っての撮影

―劇中で、カメラを使っていましたが、普段からスマホ以外のカメラは使いますか?

(C)ノブ・ピクチャーズ

山﨑果倫
日常はほぼ使わないので、あまりカメラを触ったことはなかったんですけど、あの時のかや乃も、もらったばっかりのカメラでおもちゃみたいに扱っている状態だったので、そこはすごい自然でいいよって言ってもらえて、監督にもあのまま扱い慣れてない感じでやれて、よかったです。

-写真のカメラというよりは動画を撮ってたりして、今風な使い方だなと思いながら見られて面白かったです。

山﨑果倫
あのカメラで人の動画を撮るのも初めてだったので、多少練習してからやったんですけど、ちょっと楽しかったので、趣味でもやってみたら面白いかもしれないなと思いました。

慣れていないから手ぶれがすごかったです。

▼地元ならではのロケ地

-坂道のシーンが結構多くて、上りも下りも大変だったのではないでしょうか?

(C)ノブ・ピクチャーズ

山﨑果倫
移動が車だったので、坂道の大変さで言うとそこまでなかったんですけど、ただ結構長く続く坂を二人乗りっていうのが、安全に考慮して撮影はしたのです、少し怖かったです。

運動神経が私はよくないので、すんなり後ろに乗って、画になるようにちゃんとできるかとか、いろいろな不安がありました。やはり、二人乗りという経験もないので。

なので関係者に見守ってもらった状態でやりましたが、ちょっと坂道は怖かったですね。

でも景色自体はすごく綺麗で、明石大橋の夜のライトアップが綺麗で、その綺麗さに恐怖心は気づけばなくなっていました。

▼印象に残ったエピソード

-他に印象に残っている撮影時のエピソードとかシーンとかありますか?

山﨑果倫
海のシーンがあったと思うんですけど、あのシーンでお父さん役の岩谷さんが見に来てくださいました。岩谷さんとのシーンがその日まで少なかったのですが、そのシーンの撮影の時に岩谷さんが見に来てくださって、ご自身の携帯で私のことを撮ってくれて、後から送ってくれたりしました。

海のシーンは、キャストも揃った状態でやらせてもらえたので、ずっとそこで横で見ててくれたっていうことですごく安心感をもらえました。すごく印象に残っています。

(C)ノブ・ピクチャーズ

▼とまらない・とめられない

-この作品はブレーキがキーワードのひとつとしてあると感じました。ブレーキにちなんで、山崎さんがブレーキをかけられないもの、止められないものはありますか?

山﨑果倫
私、好きっていう気持ちがあると、例えば恋もそうですし、お仕事をしていて、「この映画が好き!」って思ったら、その監督に会えた時にとか、「あなたのことが大好きなんです!」みたいな感じなんです。男女問わず、関係性も問わず、結構ブレーキが効かなくなってしまうぐらい熱弁してしまうことがあります。

「あなたのこんなところが素敵で、こういうところが好きです!」みたいなのを、後で毎回反省するぐらいしてしまうというか…。とまらなくなっちゃうんですよね。

どんどん早口になって、相手のいいところ、好きなところを言ってしまう癖っていうのもありますね。

執筆されている映画のコラムでも、「お話好き」みたいなのがかかれていましたね。

山﨑果倫
そうなんですよ。読んでくださってありがとうございます。

▼やわらか“かりん”と、カチコチ“果倫”

-そのコラムの冒頭で面白いと思ったのが、山﨑さんの“果倫”の表現でした。
「“果倫”って、名前がひらがなだと丸っこくて、柔らかいけど、漢字で書くとカチコチ」といった表現が面白いと思いました。

ちなみにお名前は本名ですか?あまりみかけない漢字の組み合わせを使っていますが、名前の由来は?

山﨑果倫
「倫理を果たす」で、“果倫”です。意味が硬いんですね。

ひらがなで見る“かりん”の印象以上に、意味も見た目も漢字にするとすごく、ずっしりしてて、ちょっと気に入ってます。かっこいいなと思って。

▼先行上映と撮影地・地元での反応

-撮影地である明石とか、大阪、関西方面で先行上映をやって舞台挨拶もされていらっしゃいますが、その時の反応や感想を聞かせてください。

山﨑果倫
地元の方々から直接、「普段から見てる坂道とかお店とかが映画の中にスクリーンの中に出てくるっていうのが、私たち長年明石に住んでいて初めての体験で、すごく感動した」って言ってもらえて、確かに私も自分に置き換えても自分が知っている地元の見慣れた街がスクリーンに映った時、感動しそうだなと思いました。

かつ、「こういうふうに温かい映画になっててすごく嬉しかったです。」といった声もたくさんいただけました。本当に明石に助けられた映画なので、地元の人から直接そういうふうに言っていただけて嬉しかったのと、補助席をつけても溢れてしまうぐらいの満席だったのが、こんなにも見てくださる方がいるんだなと思って、嬉しかったです。

-お互いに嬉しいといいですよね。

山﨑果倫
映画ってどうしても、画になるところとか、印象的な建造物や景色がクローズアップされがちで、地元の坂とかって意外と見過ごされてしまうと思います。

でも、地元の人だから知ってる場所ってあるじゃないですか。

ロケ地を探している中ではなかなか見つからないような、そういう。ここが一番いいんだけど誰も知らない穴場スポットみたいなのを本当に監督が地元の方から教えてもらったらしくて坂道とかも地元の方が「橋が一番きれいに見えるのがここだよ」って教えてもらったらしくて、本当にそういうふうに地元の方々に支えられている映画なので、地元に住んでいるリアル感っていうかリアルな質感になっているのはそういう部分も大きいのかなと思います。

▼山﨑果倫さんからのメッセージ

-これから東京での上映という形になると思うんですけど、これから見にいらっしゃるお客様向けのメッセージをいただければと思います。

山﨑果倫
この映画は、失敗とか過去の後悔とかを持っててもいいよって言ってくれる映画で、完璧じゃなくてもいいし、失敗や後悔を乗り越えきってなくてもいい、抱えたまま一緒に生きてていいんだよって言ってくれているような、優しく包んでくれるような映画なので、毎日皆さん日々を一生懸命生きている中で、ちょっとした時に思い出して、ささくれみたいに痛む出来事がある人だったりとか、ちょっと息がしづらい瞬間があったりとか、そういう、ことがある人たちにそれでもいいんだよ、そのままでいいからそのままのあなたでいていいんだよっていう風に言ってくれる映画なので、ぜひそういった思いのある大人の方にもそしてこれからいろんなことを挑戦したり選択したりする上で恐れがあるような若い世代にもどんな挑戦しても選択してもきっと楽しく素敵に生きていけるからっていう風に伝えたい映画です。

スタイリスト/佐野旬
ヘアメイク/大貫茉央
衣装協力/LAISSE PASSE


■ 作品概要

映画『輝け星くず』

あらすじ
ある日突然、かや乃が逮捕される。恋人の光太郎は状況が飲み込めない。呆然とした日々を過ごしていると、かや乃の父・慎介から呼び出される。
「かや乃が勾留されてる海の向こうまで一緒に連れて行ってくれないか?」と慎介の頼みを引き受けた光太郎。だが慎介は、自称パニック障害の持ち主で電車はおろか、高速道路でさえ移動ができない。
初対面の恋人の父とギクシャクした心の距離を感じながらも、愛する人が囚われている地・四国へ向けて、海を渡る旅を決行する光太郎。だが旅の途中──慎介がこの世にいないことになっている人物であると発覚する。
社会を脱落した者たちが再び自分の道にチャレンジする姿を描いたヒューマン・コメディ。

《キャスト》
山﨑果倫 森優作 岩谷健司 片岡礼子
春田純一 滝裕二郎 中山求一郎 湯浅崇 松尾百華 三原悠里 芳野桃花 木下菜穂子 池畑暢平
保志まゆき 小泉研心 国海伸彦 佐保歩実 金延宏明 小川夏果 宮崎柚樹 円籐さや 奥村静耶 川瀬乃絵

《スタッフ》
監督:西尾孔志 原作:小谷忠典 脚本:いとう菜のは 西尾孔志
製作総指揮:金延宏明 プロデューサー:前田和紀 金延宏明
撮影監督:牧野裕也 録音:大澤竜 西村由香 助監督:山田テキスト ボックス 2元生 小川泰寛/永井和男 有友由紀 
編集:西尾孔志 小川泰寛 整音:中村崇志 音楽:クスミヒデオ エンディング曲:森絢音「覆水不返」
宣伝:Cinemago 宣伝協力:とこしえ 製作・配給:ノブ・ピクチャーズ


映画公式X(旧Twitter):https://twitter.com/hoshikuzumovie

映画『輝け星くず』は2024年6月15日(土)より
新宿K’s cinemaほか全国順次公開!

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