映画『渇愛の果て、』が、5月18日(土)より新宿K’s cinema、6月1日(土)より、大阪・シアターセブンで公開されるのを前に、演出家&映画監督らの推薦コメント及び、山岡竜弘 オフィシャルインタビューが解禁となった。
映画『渇愛の果て、』は、「家族・人間愛」をテーマにし、あて書きベースの脚本で舞台の公演を行なってきた「野生児童」主宰の有田あんが、友人の出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)の経験をきっかけに、助産師、産婦人科医、出生前診断を受けた方・受けなかった方、障がい児を持つ家族に取材をし、実話を基に制作した、群像劇。シリアスな内容ながら、大阪出身の有田特有の軽快な会話劇を活かした作品で、有田が監督・脚本・主演を務め、長編映画監督デビュー作となった。
助産師・看護師・障がい児の母との出会い、家族・友人の支えにより、山元家が少しずつ我が子と向き合う様子を繊細に描きつつ、子供に対する様々な立場の人の考えを描く。
夫・良樹役には、『エッシャー通りの赤いポスト』の山岡竜弘。
輝有子が助産師・清水香苗役を演じた他、主人公・眞希の親友グループは、母親としての先輩・里美役で小原徳子、未婚の女優・桜役で瑞生桜子、仕事を理由に妊娠を先延ばししているキャリアウーマン・美紀役で小林春世が出演。出生前診断の是非に悩んだ経験のある里美の夫・博役で大山大、美紀の外国人の夫・ミッケル役で伊藤亜美瑠、「役者だけに集中したい」と言う桜の彼氏・隆役で二條正士が出演し、男性側の悩みを体現する。また、眞希が唯一本音を吐露できる相手である、妹・渚役で辻凪子が熱演する。
眞希を支える看護師役で烏森まど、廣川千紘、伊島青、カウンセラー役で内田健介、カフェの店員役で藤原咲恵が出演する他、同じく難病を抱えた子を持つ母役でSDN48元メンバーで現在は作家の大木亜希子、夫・良樹の同僚役で松本亮、医師役で関幸治、主人公の母役でみょんふぁ、父役でオクイシュージが出演し、脇を固める。
20人〜30人に1人が何らかの先天異常を持って生まれる現代。答えは一つではなく、本作は、眞希と親友との友情や病院スタッフ側の心情などを通して、出生前診断・妊娠・出産・障がいに対する様々な考えや選択肢を提示する。
■ 映画『渇愛の果て、』
STORY
山元眞希は、里美・桜・美紀の4人から成る高校以来の親友グループに、「将来は絶対に子供が欲しい!」と言い続け、“普通の幸せ”を夢見ていた。
妊娠が発覚し、夫・良樹と共に順風満帆な妊婦生活を過ごしていた眞希だが、出産予定日が近づいていたある日、体調不良によって緊急入院をする。
子供の安否を確認するために出生前診断を受けるが、結果は陰性。胸をなでおろした眞希であったが、いざ出産を迎えると、赤ちゃんは難病を患っていた。
我が子を受け入れる間もなく、次々へと医師から選択を求められ、疲弊していく眞希。唯一、妹の渚にだけ本音を語っていたが、親友には打ち明けられず、良樹と子供のことで悩む日々。
そんな中、親友たちは眞希の出産パーティーを計画するが、それぞれの子供や出産に対する考えがぶつかり…
▼推薦コメント
白井晃(舞台演出家)
新しい命の誕生の尊さと困難さを丁寧に描いていて静かに染み入る作品。現代社会
において高齢出産や医療の発達によって起こる問題を、当事者の目線でドキュメンタ
リー的に丁寧に描くことによって、私たちの身の回りのこととして感じさせる。身を
痛めて子供を産む女性の立場、見守るしかない男性の苦悩、寄り添う医療現場の葛藤
が、それぞれの視線から平等に描かれていることに共感を感じる。日本社会ではとか
く見えないように隠そうとする問題を、決して重くなり過ぎずにやさしく軽やかに描
いた主演、脚本、監督を兼ねた有田あんの勇気にエールを送りたい。
澤田育子(演出家・脚本家・俳優)
監督・脚本・プロデュース・主演。全てを担う有田あん氏に、敬服。その激しくも優しいエネルギー&リビドーは、時に強く時に弱く、それでも生きて生きて、とにかく生きることでの境界線なき世界、世界平和を願う確かな眼差しに思えた。
萩田頌豊与(東京にこにこちゃん主宰・脚本家)
主演の有田あんさんをはじめ、個性的で印象的な俳優陣。顔の上で行われる戦争は、見る人を飽きさせない。映像じゃないと伝わらないこの作品の魅力がある。
僕には映像を作る知識はまるでない。まずカメラの起動ボタンの場所もわからないし、カメラがどこに売ってるかもわからない。それでもこの映像作品がいかに優れているかということは分かる。
起こるなと願い続けても人生を歩んでいる以上、つらく苦しい出来事は起きてしまう。でもその悲しみや苦しみを、ただの悲しみ苦しみでは終わらせない、有田さんによる魅力に富んだシーンの数々。色彩感覚の豊かさによって、見終わった後も鮮やかに残る「騒がしい友人たち」が今もなお画面の向こうに居るようです。
市井昌秀(映画監督・脚本家)
ついデリケートな題材に目が行きがちだが、友達、夫婦、家族の心情や距離感を丁寧に描いていることに有田あん監督の誠実さが見える。また、軽妙な会話と時折差し込まれるミュージカルで観る者の心を掴んで離さない工夫も。しかし、私が何よりも圧倒されたのは「これ撮らな前に進まれへん!」という、監督の強い執念を感じたことだ。
戸田彬弘(映画監督)
誰もが直面する可能性。誰もが一度は考えたこと。
観ていて、どん底に落ちた。自分ならどうするか。
容易に答えは見つからない。でも、家族がいれば、生きることは、十分だ。
観終わった今、そう思う。
木村聡志(映画監督)
本編が終わりエンドロールが流れたあたりで、この映画の魅力をロジカルで多くの言葉を持って説明する必要なんて全くないことにはたと気づく。『渇愛の果て』でも『渇愛の果て。』でもなく『渇愛の果て、』であることにこの映画の魅力の全てが詰まっている。
映画を作るということを一つの出産だということに置き換えたとしたら、実に偉大な処女作をこの世に生み出した有田さんの第二子、第三子が今から待ち遠しくて仕方がないし、なによりも『渇愛の果て、』がこれから多くの出会いを通じてより大きく成長した姿でまた会えることをこの映画の一人のファンとしてとても楽しみにしています
▼山元良樹役:山岡竜弘 オフィシャルインタビュー
・『渇愛の果て、』ヘの出演の経緯を教えて下さい。
山岡竜弘
監督・主演の有田あんさんとは以前『エッシャー通りの赤いポスト』で共演したのですが、その時に俳優として信頼できる人だなと思っていました。その後も何度か交流があり、2020年、コロナの時期に今回のオファーをいただきました。有田さんのこの作品への熱い想いを聞き、「少しでも僕にできることがあれば」と思いオファーをお受けすることに決めました。
・脚本を読んだ時、どう思いましたか?
山岡竜弘
ともすれば教育的なものになってしまいかねない内容だと思ったんですが、そこを有田さんの笑いのセンスや、巧みな表現方法によって、沢山の方に伝わる作品になると思いました。資料やドキュメンタリー番組にしか伝えられないものもあると思いますが、映画にすることでまた違った届き方、刺さり方があると感じました。
・確かに、登場人物一人ひとりに物語がある、見応えのある人間ドラマになっていますね。
山岡竜弘
そうですね。夫婦、家族、助産師、医師、それぞれの立場から、物語がしっかり誠実に描かれているところが、この作品の好きなところです。
・演じた、山元良樹役についてはどう思いましたか?
山岡竜弘
良樹の存在は、人との関係において教訓となるような事を示していると思いました。私自身良樹から沢山のことを教えてもらいました。彼は結婚、出産と、未知の領域に対して自分なりに想像を巡らし、最善を 尽くそうと懸命に立ち回ります。その懸命な姿は「いい旦那さん」に映る半面、目の前のことに必死で、視野が狭くなり、時にすれ違いや勘違いを生んでしまう 。思いやりの行動が少しズレてしまうことで彼自身が苦しむこともある。そんな、一元的には形容しきれない人間らしい側面もまた魅力的だと思いました。
・監督の有田さんは、主人公・山元眞希役でしたが、ご一緒していかがでしたか?
山岡竜弘
監督としてモニターチェックをした後、そのまま眞希の立ち位置に来て撮影に挑む。どうやって演者と監督のスイッチを切り替えているの? と最初は驚きました。しかし、撮影が進むと、この作品を届けたいという想い が役として全身から放たれているのを感じ、 今思えばそれが一番の演出だったなと思います。そのエネルギー量に自分も感化されて引き出されるお芝居もありました。有田さんとご一緒できて、役者として成長できたし、 良樹としてもできる表現の幅が広がったと思います。
・有田さんが俳優さんだからこその演出などはありましたか?
山岡竜弘
はい。俳優さんだからこそ、芝居の中に小さな嘘が混ざることを嫌がっていたと思います。台本で言いづらいところなど、「山岡さんだったらどう言いますか?」とか、「山岡さんならこういう時どうしますか?」と丁寧に聞いて下さり、あて書きでどんどん脚本を書き変えてくれました。物語ではなく、自分たちに起きていることとして捉えようという作品作りは、俳優をやっている有田さんだからできた演出だったのかなと思います。
・撮影前にどのような準備をしたのでしょうか?
山岡竜弘
有田さんの当時住んでいた家が撮影に使われたのですが、撮影前に実際にその家でシーン稽古をさせてもらえたことで、夫婦としての生活の想像ができ、その積み上げが良樹にとって大きな準備となりました。また、専門知識や専門用語の登場する物語なので、撮影前に勉強しようと思いました。しかし途中で「いや、違う。良樹の目線が観客の目線に近くなるはずなので、事前に知識を持たない方がいい」と思い直し、準備をしないことを選択しました。怖い選択だったのですが、「知らない」という目線でどれだけその場で感じられるかを大切にしました。誰にでも起こり得る、特別なことではないという設定を意識し続けました。
・松本亮さんが演じた石井竜の存在が、男性側の苦悩をより伝わりやすくしていたように思いますが、竜とのシーンはいかがでしたか?
山岡竜弘
松本亮さんはとてつもない安心感を与えて下さる俳優さんです。特に冒頭の宅飲みのシーンは、Zoomでリハーサルをやっていたのもありますが、松本さんの器の大きさや 、安心感があったからこそ、僕も自然なお芝居ができたんだと思います。
・演じて難しかったシーンはどこですか?
山岡竜弘
全シーン難しかったです(笑)。でも、一番はポスターにも使われている、眞希と子どもの延命治療について話し合うシーンですかね。障がいを持つお子様の親御さんからお話をお伺いした直後に撮影したのがこの場面でした。改めて、このシーンの重要性や繊細さを考えながら慎重に撮影に臨みました。スタッフ・演者が一体となり、多くを語らずそっと撮影は始まりました。 照明の明かりも相まって、空気の揺れすらも感じ取れるような、神秘的な時間でした。
・昨年末結婚されたとのことですが、良樹を演じて夫婦生活に活かされたことはありますか?
山岡竜弘
この撮影を経て、妻と「立ち止まって話し合う」ということを心がけるようになったかもしれません。以前は、出産の話などタブーとまではいかないまでも、話していいのか、という躊躇もありました。しかし今は出産に限らず「どう思う?」とその都度互いの立場を尊重することを心がけながらしっかり時間をかけて、何回でも話せるようになったと思います。
・完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?
山岡竜弘
みんなで渡し合うバトンによって大きく伝わるメッセージがある作品だと手ごたえを感じました。またどこを観るかによって、感じることが変わる豊かさを持った作品だとも思いました。
・読者にメッセージをお願いします。
山岡竜弘
登場人物たちが、それぞれの立場で自分にも相手にも誠実に向き合おうとし続ける物語です。お客様にも是非、スクリーン越しに彼ら一人一人と対峙していただきながらこの作品を楽しんでいただければと思います。是非、劇場でご覧ください。
山元良樹役:山岡竜弘(Tatsuhiro Yamaoka)
プロフィール
1982年10月7日生まれ。東京都出身。 2018年に日中合作映画『カップケーキ』 に主演、海外映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞するなど演技力を評価された。2021年には『エッシャー通りの赤いポスト』で物語の中心となる小林正役に抜擢され注目を集める。その後、ドラマ「だが、情熱はある」、朝ドラ「らんまん」など話題作出演が続く。
▼予告編
■ 作品概要
映画『渇愛の果て、』
出演:有田あん 山岡竜弘
輝有子 小原徳子 瑞生桜子 小林春世 大山大 伊藤亜美瑠 二條正士 辻凪子
烏森まど 廣川千紘 伊島青 内田健介 藤原咲恵
大木亜希子 松本亮 関幸治 みょんふぁ オクイシュージ
監督・脚本・プロデュース:有田あん
監修医:洞下由記 取材協力:高杉絵理(助産師サロン)
撮影:鈴木雅也 谷口和寛 岡達也 編集:日暮謙
録音:小川直也 喜友名且志、西山秀明 照明:大﨑和 大塚勇人
音楽:多田羅幸宏(ブリキオーケストラ) 歌唱協力:奈緒美フランセス(野生児童)
振付:浅野康之(TOYMEN)
ヘアメイク:佐々木弥生 衣装監修:後原利基
助監督:藤原咲恵 深瀬みき 工藤渉 制作:廣川千紘 鈴木こころ 小田長君枝
字幕翻訳:田村麻衣子 配給協力:神原健太朗
宣伝美術・WEB:金子裕美 宣伝ヘアメイク:椙山さと美 スチール:松尾祥磨
配給:野生児童
2023/日本/97分/カラー/アメリカン・ビスタ/ステレオ
©野生児童
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5月18日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開