4/20(土) TOHOシネマズシャンテにて、映画『霧の淵』公開記念舞台挨拶が開催。登壇者は、三宅朱莉、三浦誠己、堀田眞三、水川あさみ、村瀬大智(監督)、河瀨直美(エグゼクティブプロデューサー)。撮影地となった奈良県川上村でのエピソードを披露した。
■ 映画『霧の淵』公開記念舞台挨拶(4/20土)
▼ひとことあいさつ
三宅朱莉
主役・イヒカ役の三宅朱莉です。
今日は舞台挨拶『霧の淵』を見に来てくださって本当にありがとうございます。この映画の舞台になっている川上村は、すごく過疎が進んでしまっている村なんですけど、映画である通りすごく綺麗で、魅力がたくさんあるところなので、少しでもそういうところがこの映画を通して伝わってもらえればいいなと思います。今日はよろしくお願いします。
伊藤さとり(MC)
続きまして一家の父・良治を演じられました三浦誠己さんです。
三浦誠己
まず初めにこの撮影に協力してくださった川上村の皆さんに感謝のお礼を言いたいと思います。本当に豊かな時間をありがとうございました。皆様、お時間ありましたらぜひ川上村訪れてください。魅力たっぷりの村です。今日は短い時間ですけども、よろしくお願いします。
伊藤さとり(MC)
続きましてイヒカの祖父・重(シゲ)役になります。堀田眞三さんです。
堀田眞三
皆さんこんにちは、堀田眞三です。よろしくお願いします。
昨日、私のところにタケノコを送られてきたんです。そのときにふっと思い出したのが川上村でした。村の先生と話してるときに、「タケノコ一を番先に見つけるのはイノシシだ。香りで見つけていく。その次に鹿が見つける」(という話がありました。)
去年、初めて見たんですど、撮影のときです。サルがタケノコを掘り起こして、皮をむいて旨そうに食ってる。一番うまいところは、全部、猪・鹿・猿に食われて、それからやっと人間様が食える。
そんなことも含めて、昨日はたけのこのおかげで川上村を思い出しておりました。今日は川上村の皆さんがおみえだと聞いております。ありがとうございます。
伊藤さとり(MC)
続きまして、イヒカの母・咲を演じられました水川あさみさんです。
水川あさみ
皆さんこんにちは、水川あさみです。
今日はお越しいただいてありがとうございます。2022年の春にこの映画を撮っていたんだなっていうことをさっき裏でみんなで話してたときに、そんな話になりました。撮影時に朝日館の本当の女将からいただいた着物を今日は着て、舞台に上がっています。
すごく私にとってもとても思い出深くて忘れられない作品なので…忘れられない作品じゃないね、これから見てもらえる…公開が始まったので。
そうですね。今日は短い時間ですがよろしくお願いします。
伊藤さとり(MC)
続きまして、監督を務められました村瀬大智監督です。
村瀬大智監督
はい。監督の村瀬です。先ほど水川さんもおっしゃられたんですけども、2020年の、ちょうど暖かくなってきた頃…
水川あさみ
2020年じゃなくて、2022年ね。
村瀬大智監督
ぁ…2022年に撮影して、そこから2年間また編集を加えて、こうやって皆さんの前にお披露目できるっていうことをすごく嬉しく思っております。今日は短い時間なんですけれども、よろしくお願いします。
伊藤さとり(MC)
そして最後にエグゼクティブプロデューサーを務められました河瀨直美さんです。はい。
河瀨直美
後ろの方で一緒に見てたんですけれども、ワンカットワンカットが今なのか過去なのか、未来なのかわからないような郷愁も伴って、ちょっとホロッときていました。過疎がどんどん進む…もしかしたら村がなくなってしまうかもしれないような、そんな集落に映画という火が灯って、そして今日こんな大勢の皆さんに観てもらえる映画に育ったんだなっていうふうに思うと、村瀬くんも本当に立派になったなっていうふうに思います。
2022年を2020年と間違ったりとか、ちょっと突っ込みどころ満載のかわいい、本当にこれからの監督をサポートできる「なら国際映画祭」をこれからも本当にたくさんの人たちが集う映画祭でありたいなというふうに改めて思いました。ありがとうございます。
▼劇場公開後、舞台挨拶に立って
伊藤さとり(MC)
ありがとうございます。そして奈良から始まって様々な国でも映画祭を行って、ついに昨日から全国公開おめでとうございます。
三宅さん、初めてこうやってお客さんがたくさんいる状態のマスコミの人がいる、舞台挨拶で真ん中に立つというのは?
三宅朱莉
やばいです。めちゃめちゃ緊張してます。もう両端にこんなレジェンドがいて、頑張ります。
河瀨直美
なんかちょっと大きくなったよね。
水川あさみ
顔つきも撮影時とはもう全然違って。
堀田眞三
未だに僕も信じられませんよ。あのイヒカ、12歳がね。
水川あさみ
そうですよね、14歳になった?
三宅朱莉
15歳になりました。
水川あさみ
15歳でしたね。
伊藤さとり(MC)
昨日は寝られましたか?
三宅朱莉
昨日は熟睡でした。
水川あさみ
大物です(笑)
伊藤さとり(MC)
どうですか、ご自分が主演の映画が全国に広がって、たくさんの人からも感想とか届いてると思いますけれども。
三宅朱莉
未だにやっぱり実感がなくて、こうして舞台に立っていることも、まさか自分が受かってこの映画を撮るとは思っていなかったので、すごく感慨深いです。
▼共演しての感想
伊藤さとり(MC)
皆さん、三宅さんと共演されましたけれども、どんな印象だったかとかもいろいろ聞きたいんですけれども、どうでしたか。三浦さんどうでした? 水川さんもぜひ。
水川あさみ
前のめりで…
三浦誠己
三宅さんはもう、素敵な存在感で現場にいてくださって、そして水川さんが特に現場を明るい雰囲気にしてくださったのが本当に楽しくて。
一緒にね、しいたけを焼いてくださったり。犬の散歩をしているのを僕がボーッと、きれいやなぁ、かわいいなぁと思いながら眺めてました。
亮二はねおそらく家族のことをとても愛してると思うんです。あんなことのある男ですけども、そんなことを思いながら現場で過ごしていました。
水川あさみ
とてもフレッシュで、もうそこに立っているだけで、存在感とイヒカっていうものをもうまとっているので、余計なことをしなくても、そこにいるっていう素晴らしさをお芝居しながら、なんかすごい立ってるだけで頼もしいなって思いながらお芝居してました。そういうフレッシュさが…
やっぱりそれって、年齢とか、初めての現場とか、私達にはもうできないことだったりするんですよね。何かそういうことをとても素晴らしいなと思いながら一緒にお芝居してました。
伊藤さとり(MC)
堀田さんはおじいちゃん役でしたけど共演してどうでしたか。
堀田眞三
俺にもあったんだなあの頃がって。
いつの間にやら、お迎えが近いような歳になってしまいましたが、いやあ、本当にあの新鮮というか、これからどう育っていくんだろうっていう、すぐ限りなく、ましてこういう大作にオーディションで選ばれて、それだけで彼女はすごい運を持っていると思います。
運も実力のうち、運は実力のうち、運に勝る才能はないって言いますから。これからどんどんどんどん大きくなっていくんだろうな。そのとき何か役があったらちょうだい(笑)
伊藤さとり(MC)
堀田さんも映画はもうこれで何本目なんですか?
堀田眞三
もう映画・テレビ・舞台・コマーシャル、何だかんだで、2000作品、俳優生活61年目になりました。
俺が嬉しいのは、河瀨エグゼクティブプロデューサー、村瀬監督。
この作品に参加したおかげで…
先ほど、運の話をしましたが…出演させていただいてから、どんどんどんどんマーケットが広がっていってまして、来年また海外の舞台・映画なんかも(オファーが)来ていて、「よし!この作品で、運・ゲンをもらっていると、来年一年はとにかく現役でいるようにチャレンジしよう」と、そんな思いです。ありがとうございます。
▼家族の雰囲気づくり
伊藤さとり(MC)
素敵でございます。三宅さんはこんなベテランの先輩たちと一緒に共演して、家族構成だったじゃないですか?撮影はどうやって家族の感じを作っていったんですか。
三宅朱莉
私は撮影の1週間前、ちょっと早めに川上村にインして、そこで村のこどもたちと遊んだりとか、犬と散歩したりとか、たまに監督とダムとかに行ったりして、村で1週間ほど撮影の前に生活することで、イヒカと同じ生活をしていたというか、イヒカに近い生活を送っていたので、それがあって、撮影もすごく自然体で臨めました。
それで結構、咲さんも…
なんかすごいんですよ、皆さん。めっちゃもういるんですそこに、イヒカのお母さんとかお父さんとかおじいちゃんとか。私だけじゃなくて、もう皆さんのおかげで、めちゃくちゃイヒカになれたんじゃないかなって思っています。
▼三宅さん選出の決め手
伊藤さとり(MC)
そうなんですね。でも村瀬監督本当にね、三宅さんのこの魅力っていうのを、オーディションでどういったところが特に気になって見つけ出したんですか。
村瀬大智監督
そうですね。やっぱりその当時僕は…イヒカが映画の中で小学校6年生から中学1年生になってくるっていう中での時間の話なんですけれども…ちょうどそのときに地元の小学校で働いておりまして、その中でシナリオを書きながら毎日その小学校に行って、リアルに今の朱莉ちゃんと同い年ぐらいの女の子たちや男の子も含め接していたので、そういう中でなんかみんなムスッとしていて、でも、その怒りの原因やムスっとしている原因はどこからか自分もわからなくて、大人でもなくてこどもでもなくてっていう、そういう眼差しを持ってる印象がすごく強くて、やっぱりいろんな人に今回オーディションなんかでもお会いさせてもらったんですけど、本人が入ってきたときにもうみんな目がキラキラしてるんですけど、1人だけ目が真っ黒で。つや消しみたいな。黒目が。
その目をすごく覚えていて、「この子で撮るんだろうな…」って思いながらオーディションをしていったので、すごく現場に入ってからも、「私ちょっとそんな…」みたいに喋っているんですけど本当にカメラの前に立ったら、もうあの感じになってて、僕も、カメラの前で見ながら毎回感心するというか、「そういう感じに動くんや…」って、驚きを毎回与えられながら撮影しましたね。
▼河瀨さんからみた村瀬大智監督
伊藤さとり(MC)
その横顔一つがあそこまでになるって思いながら、ずっと作品に見とれてたんですけど、河瀨プロデューサーはそれを一番最初にね、村瀬監督の才能を見つけ出したわけじゃないですか。どんなところに惹かれたんですか。
河瀨直美
いやどうでしょうね。朴訥で物を言わず、それこそ目が暗く・黒くて、「何か抱えてんやろな…」っていう。なら国際映画祭のNARA-wave (ナラウェイブ)、NARAtiveというプロジェクトは、この「なら国際映画祭」にコンペで入ってきてくれた方がグランプリや観客賞を取ってくれている、この監督たちの中から選出されるんですけど、初めて学生映画部門から選出された監督なんですよね。
だからまだ若くて、これまでは世界の監督たちがコンペの中から選ばれていた、やっぱりNARA-wave (ナラウェイブ)という…学生からも企画書が出るんですけど、なかなか、世界の監督の方が面白いというか、なんですが、村瀬くんの時代は実はコロナで海外の監督たちが入ってこれないっていうそういうことも手伝ってですね、「村瀬くんで行こう!」って、私達も制作体制を整えて、川上村っていう場所に現場を置くっていうふうに決めたときに、村瀬くんはすごく通って、この村に入っていって、それこそ1年近くですね。
村瀬大智監督
2年ぐらい…撮影まで結構ギリギリまでほぼ毎週…。行ってたんで。
河瀨直美
そっか、4月までやもんな…
その中で認知症になったおばあさんがトンネルの中を歩いてるのを助けて表彰されたりとか、地元の新聞に載ったよね?
村瀬大智監督
そうなんですよ。よく地元に通ってたから、たまたま。
河瀨直美
村の人気者になっていって、どこに行っても、「村瀬くん頑張ってるね」みたいにどんどんなっていくっていう、その関わり方が、深く川上村のことを知っていくというか、街道は昔かつて、最後のお祭りであったようなそういう賑わいがあり、朝日館も人々が往来するっていう拠点みたいになってたんですけど、今やもうひとがほとんど往来しないような、その時代の流れっていうものも、彼は全部自分の中に取り込んでこの作品を具現化していくんですけれども。それは撮影もさることながら編集にもすごい時間をかけて。
村瀬大智監督
そうっすね。
河瀨直美
一度本当に映画祭での発表もあったんですけれどもそれ以降もまだ粘り強く編集を重ねてですねインターナショナルに映画祭に出品するバージョンっていうのを完成させるまで、企画段階からは本当に2年以上かもしれないよね…かけて、今回、サンセバスチャン映画祭だったり釜山映画祭だったりとか、そういう世界の名だたる映画祭に選出されるっていう快挙ですね。
だから学生が部門から出て、それが世界の名だたる映画祭に招待されるっていう。
そしてこんな公開を成し遂げるっていうのは、本当に私はできるとは思ってませんでした。だからどんどん成長というか、どんどん何かを見つけて、そしてここに帰ってきてくれた感じでありがたいです。
▼本作と川上村
伊藤さとり(MC)
もう本当にいまの話を聞いていると、だからこの映画のね。しかも映画を観ていると川上村の方、出ていらっしゃいますよね。
村瀬大智監督
そうですね実際にあの宴会のシーンであったり、最初に水川さんとお話されてるおばあちゃんも、実際に朝日館の女将さんです。
水川あさみ
そうです。この着物をいただいた女将が最初に話してる。
伊藤さとり(MC)
女性の。あの方ですね。
でも着物もらえるほどだから親密になったってことですよね。
水川あさみ
そうですね。劇中で着ている着物の着付けも女将がやってくれたりとか、川上村のことだったら朝日館や、自分のその昔の話だったりとかそういうこともしてもらったりしながら、私もその川上村のことを知っていったりとかしましたね。
伊藤さとり(MC)
三宅さんもいろいろ喋りましたか?川上村の人たちと。
三宅朱莉
めちゃくちゃ仲良くしてくれた川上の旅館の…何て言ったらいいんですかね…。お孫ちゃんがいるんですけど、その子とすごく走り回ったりとか山を走ったり、一緒にアイス食べたり、そのお孫ちゃんのお友達とみんなでどっか行ったりとかして、すごく本当に川上の子になったかのように遊んでました。
伊藤さとり(MC)
三浦さんはどうでしたか?川上村で、他にどんなことをされたりとか。
三浦誠己
僕は合間にちょっと散歩したり、すごく広い範囲でしてたんですけど。お猿さんに出会ったりとかも。
すごく自然豊かというかもう、もうすぐそこに野生が生きてるというか、その中に人間がやっぱりこうね、借りてるような気持ちになるような場所でしたね。
伊藤さとり(MC)
だからしっとり画になる…。セリフがなくても画になるっていう。
河瀨直美
三浦さんが演じた良治が村を愛してるのか愛していないのか、ちょっとわからないところとか、その嫁さん連れてきたけど、自分は出ていくっていうような選択をしていたりとか、「こんな旅館やっていてもしょうがないやろ」みたいなふうになってるっていう、それが大多数の今の日本の感覚ですよね。
だから物語の中では女将が主人公だったり、イヒカはある選択をするけれども。
シゲじいもどこかに消えていくような存在で、象徴している人々の反対をいってる役柄ではあるじゃない。だからそこの役柄が悪者であるっていうことではなく、最初に言った「愛してるんだよね、家族のことを」っていうそこの表現がすごい多分難しかったんやと思う。
三浦誠己
あぁ、なるほど。すごく愛してるんですけど。
河瀨直美
あるんやけれども、別にもあるんよね。
三浦誠己
そうですね。そういろいろあるんですよ人生はやっぱり。
だからそれをこうね、監督ともお話しながら、「もうこれどうなんやろ…いや、でもそんな人いる?」、「いますよねぇ」とかっていう。「僕の身内にもいたかな…」とか、いろんなことを想像しながら。
河瀨直美
だから監督もそこの描き方が、“女将の方がいい人”、“旦那さんは、悪い人”じゃなくて。そうじゃなくてこの現実みたいなものにフォーカスしてそれを作品に昇華していくっていうところがものすごく大きな壁やったと思う。それを超えたんだと思うんです。
村瀬大智監督
いや、でも、もう本当に僕は出てくる人間全員がどっかで出会ったことがある、“あのおっちゃん”とか、“このおばちゃん”とか、“あの友達のお母さん”とか、いろいろ今まで縁があった人たちの断片というか、結集されて集まったようなキャラクターなので本当に出てくる人、僕は全員好きなんですよ。なので、そういう僕も愛を持ちながらカメラで見てたなっていうのをすごく今の話を思い出しました。
▼世界の映画祭に参加して
河瀨直美
改めて私ね、もう一個だけ、釜山映画祭に一緒に行ったんですよ、あさみちゃんと。監督と三浦君と。その時に釜山の映画祭の会場にいる若きクリエイターたちというか、お客さんとかがものすごく若くて、それにものすごく感化されたじゃないですか。
水川あさみ
感化されましたね。
河瀨直美
「日本映画頑張らなきゃいけないよね」って、心あらたにして…
水川あさみ
本当に泣きそうになったぐらい。
舞台挨拶をして、その後の質疑応答っていう形でいろんな話をね、質問してもらってそれに答えるっていうのやってたんですけど、その質問の深さみたいなものとか、映画の事態を捉える目線だったりとかそういうものの見方が、日本とはちょっと違う人一つ上を行っているじゃないですけど、そんなふうに私は感じていて、発信する方もちろん演じる方もそうですし、映画に携わる私達も一つの課題なんだなっていうことを、グーッてなりながらそれを感じてましたね。釜山のときに。
伊藤さとり(MC)
さっき堀田さんがお話した通り、海外でも認められている映画じゃないですか。
河瀨直美
あと、ブルガリアの映画祭では、撮影監督が賞をとるという快挙を成し遂げて、今まさにいますけどね。
水川あさみ
「百々武さん、いる?」
河瀨直美
初撮影監督にして世界の映画祭で賞を取るという快挙を成し遂げるという、本当にフレームの切り方も素晴らしかったなと。
▼川上村にとけこんだ村瀬大智監督
伊藤さとり(MC)
しかも、セリフもそんなに詰め込まないような、そぎ落とされたっていうのは…
監督はそこはいろいろこだわったりとかしてたんですか。
村瀬大智監督
そうですね。本当に旅館のご飯を食べてるあの空間っていうのに…
ずっと僕はそこに毎週座って、一緒にご飯食べて、実際に朝日館の女将さんとか若旦那が会話してる様子とか、いろんな人がやってきては去っていくっていう、その会話の様子っていうのをずっと見てて。
そこはやっぱり、ずっと必要なことを喋るわけじゃなくて、何かわかり合ってるものの時間っていうのが、みんなそれぞれ存在してるので、たくさん喋るってよりかは、人と人との距離だったりとか、眼差しの行き来みたいなもので、何かこの村に住んでいる人々っていうのを捉えたいっていうふうに思ったので。なので多分あんまり詰め込んだものではないっていうのがありますね。
河瀨直美
女将さんが泣いてたよ。
やっぱりあそこにずっといて、人がほとんど来ない旅館を経営する女主人というか、そこにフォーカスして、映画という光を当てて、この世界に発信するっていうのを村瀬くんがやったことで、やはり誰にも言えないこの営みそのものにすごく誇りを感じて、彼女はおそらく、その息子さんや息子のお嫁さんや何かそういうものに「私の生き方は間違ってないよね」っていうようなことを言えたんじゃないかなっていう思うから、素晴らしい…
映画を作ることプラス、そういった行いだったんじゃないかなと思う。
褒めてますよ、いま。
村瀬大智監督
ありがとうございます。
縁だなと思いました。川上村っていう場所でウロウロしてて旅館にたどり着いてっていう、そこを温かく迎えていただいて、いろんな話を聞かせていただいてっていうのが本当に、皆さんが映画っていうものを飛び越えて、僕という人間にすごくいろいろ自分の話をしたりとか、思ってることを話してくれるので、何かこういうものが映画に残ればっていう、それしか僕にはそのときはできなかったので、何かこういう形になって、世界中の皆さんに、遠く離れた東京の地で皆さんに見ていただけることが僕は本当にすごい感慨深い気持ちになりながらここに立ってますね。
▼川上村での思い出
伊藤さとり(MC)
堀田さん。それをね、撮影の現場の中で本当に緩やかな空気感だったり、人のふれあいっていうのを見てたと思いますけれども、川上村の撮影の思い出はどんなことがありますか?
堀田眞三
(撮影は)3週間でしたよね?
3週間でしたが、本当に、“心豊か”っていうのは、こういう気分なんだろうなっていう。
ものすごく優しくしていただいて、いろんな方々と本当にいろんな会話を喋らせていただいて、「あそこの猟師さんのところから水がどんどん流れてるよ。今日はひょっとしたら獲物がね、お裾分けをいただけるんじゃないか」って。
水川あさみ
さっき言ってましたものね。
堀田眞三
鹿の焼肉が出てきて、それが丼ぶりになっていたりね。
ある時にロールキャベツを食っていたら、ロールキャベツの中の味が違うんですよ。
朝日館の息子さんに言ったら、「わかりますか?嬉しいですね。猪のジビエなんです。これをもっともっと知っていただきたいんです。」そんな会話もしましたね。料理のそんなことが今、ふとものすごく蘇ってきて、そういうことも含めて心豊かなときが流れましたね。
▼河瀨直美エグゼクティブプロデューサー、今後の展望
伊藤さとり(MC)
それがやっぱり海外の人たちが見ていて気づかされた空気だと思うんですけど、最後に川瀬プロデューサー。
今後、日本映画を海外に広めていったりする展望だったりとかどんなことが必要だとお考えですか。
河瀨直美
いやもうそんな大層なことは語れないんですが、私達「なら国際映画祭」は奈良という地方都市。しかもその山村、深い深い山の中に、もうこんなに豊かな物語や人々が暮らしていて、それを監督たちが世界の監督たちが映画にしてくれるというプロジェクト「ナラティブ」を続けていきたいというふうに思ってますし、日本という場所にもっともっとたくさんの魅力的な場所があり、人の営みがあり、それにみんなが目を向けるような、多様な文化があるっていうことをお伝えしていけたらいいなというふうに思ってます。
こうやって公開をすることで、日本の方々こそが、こういう豊かさを知っていただくこと、そしてそれを皆さんに伝えていただけることっていうのが、ひいては朱莉ちゃんみたいな次の世代の人たちへのバトンタッチになるというか、渡していく大切なものなのかなというふうには思ってます。
堀田さんもね、「こんな映画に出させていただいて」とか今日もすごく言っていただいてるんですけども、2000近くとかなんかすごい経歴をお持ちなんですけれども、先輩として思われることもたくさんあると思いますし、日本がどんどん変わっていくっていう背景も、映画界も見られてきたと思うんです。でもこういった小さな映画ですけれども、丁寧に作り、そして丁寧に発信することで、また何かに繋がっていくと思いますので、本当に私としてはこういった素晴らしい皆さんと映画作りができて、「なら国際映画祭」としてありがたいなというふうに思ってます。
また一つお知らせですけれども、このゴールデンウィーク明けからは次のナラティブが始動します。2年ぶりになりますね。そしてこれもまた実は学生映画部門からのはい、監督になりまして奈良県は宇陀市というところで、今度は撮影をするということで今着々と監督もスタッフも入り込んで準備をしている最中です。またこれを劇場で観ていただけるように頑張って作っていきたいなというふうに思っています。
映画『霧の淵』
あらすじ
奈良県南東部の山々に囲まれたある静かな集落。
かつては商店や旅館が軒を並べ、
登山客などで賑わったこの集落で、
代々旅館を営む家に生まれた12歳のイヒカ。
数年前から父は別居をしているが、
母の咲は、父との結婚を機に嫁いだこの旅館を
義理の父・シゲと切り盛りしている。
そんなある日、シゲが姿を消してしまう。
旅館存続の危機が迫る中、
イヒカの家族に変化の時がやってくる――。
作品概要
監督・脚本:村瀬大智
出演:三宅朱莉、三浦誠己、堀田眞三、杉原亜実、中山慎悟、宮本伊織、大友至恩、水川あさみ
エグゼクティブプロデューサー:河瀨直美プロデューサー:吉岡フローレス亜衣子
撮影:百々武録音:森英司照明:藤江立美術:塩川節子助監督:福嶋賢治制作担当:濱本敏治編集:唯野浩平音楽:梅村和史ヘアメイク:南辻明宏衣装:山上順子製作:なら国際映画祭
助成:奈良県、川上村、奈良市
配給:ナカチカピクチャーズ
©2023“霧の淵”Nara International Film Festiva
2023|日本|G|DCP|5.1ch|83分
4月19日(金) TOHOシネマズシャンテ他順次公開