映画『カラフルな魔女』完成披露舞台挨拶。角野栄子、宮川麻里奈監督 登壇。挑戦してみたいこと…

映画『カラフルな魔女』完成披露舞台挨拶。角野栄子、宮川麻里奈監督 登壇。挑戦してみたいこと…

1月16日(火)神楽座にて、「魔女の宅急便」の作者として知られる、児童文学作家・角野栄子の日常に 4 年にわたって密着したドキュメンタリー映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』(KADOKAWA 配給)の完成披露舞台挨拶が開催された。イベントには角野栄子と監督の宮川麻里奈が登壇。4 年に渡る密着取材の裏話や映画完成の喜びを語った。

角野さんは鎌倉の自宅では自分で選んだ「いちご色」の壁や本棚に囲まれ、カラフルなファッションと個性的な眼鏡がトレードマーク。一方、5 歳で母を亡くし戦争を経験。結婚後 24 歳でブラジルに渡り、35歳で作家デビューするなど、波乱万丈な人生を歩みながら、持ち前の冒険心と好奇心で幾多の苦難を乗り越えてきた。
“想像力こそ、人間が持つ一番の魔法”と語る角野栄子とはどういう人物なのか?88歳のキュートな“魔女”が、老いや衰えさえも逆手にとって今もなお、夢いっぱいな物語を生み出す秘訣とはー。

■ 映画『カラフルな魔女』完成披露舞台挨拶

▼角野さん、宮川監督あいさつ

上映前の舞台挨拶に登壇した角野さんは、「皆さんこんにちは。お寒い中いらしていただき、ありがとうございます。何と言っても、主役が 89 歳なものですから、あまりご期待をなさらないように、よろしくお願いいたします。映画はとても面白く出来ていまして、150%私を出してくださっているのではないかと思います。」と挨拶。

続けて、本作で映画監督デビューとなった宮川麻里奈監督は、「映画監督を思いもよらずやらせていただく事になり、どうしようと思い、世界中の色々な高齢女性のドキュメンタリー映画を片っ端から観ました。結果、これは大丈夫だと確信しました。それは、こんなに素敵な女性(角野さん)は世界広しと言えども、いないなと。角野さんを映画にするのであれば、どんな形であろうと絶対うまくいくだ
ろう、と思い、素直に変に肩に力を入れず角野さんの素敵さを伝える映画をつくれば良いんだな、と思いました。」と挨拶。
さらに、「この仕事を始めて 30 年になりますが、こんなに心から素敵だと思って撮影できる方に巡りあえたことは、30 年頑張ってきたご褒美だと思えるような事でした。この作品は私から角野さんへのラブレターのつもりで作りました。角野さんの眩しさをスクリーンから浴びていただけたらと思います。」と呼びかけました。

▼作品を観た感想

いちご色の衣装に触れられた角野さんは、「エイヤー!と着てしまえば、どんな色でも OK!着るものは好きなものを着ている」と告白。
大きなスクリーンに主人公として出演し、作品を観た感想を問われると、角野さんは「本当に皆さん頑張ってくださったな、と思います。カメラマンには、あまりリアリズムにいかないようにとリクエストをしましたし、宮川さんにはあまり色々と聞かないで!と伝えましたが、初めての経験だったので、これは楽しんでやらなくちゃな!と思いました。」と答え、「普通のモノを書いている、普通の暮らしをしているので、素材的には撮っても仕方が無い存在なんだろう、と思っていましたが、宮川監督とカメラマンに、素材を 150%活かしてもらった結果だな、と思い、ちょっと詐欺かな?と思うくらい素敵に撮っていただきました。」と続けました。

▼『魔女の宅急便』についてのエピソード

それを受けた宮川監督は、「今年 20 歳になる娘が小学生高学年くらいの時に『魔女の宅急便』の 6 冊シリーズを愛読していて、その娘が“『魔女の宅急便』が無かったら、うまく思春期を乗り越えられなかったかもしれないと思う。”ということを角野さんの取材を始めることが決まってから聞いたんですね。娘にとって悩みが深まる思春期の時期に、『魔女の宅急便』を繰り返し読んだことが、娘にとっての精神安定剤みたいになっていたということを聞いて、そんなことも知らずに私は私で角野さんを素敵だな、と思って取材を始めましたが、角野さんはいつお目にかかっても愉快で、取材中に嫌な気持ちをすることは一度も無く、毎回幸せな気持ちを抱えて撮影をさせていただきました。」と振り返りました。

『魔女の宅急便』について角野さんは、「留学なさる方や、東京に出て入学される方や就職される方などが節目で読んで、自分に重ねて楽しみました、という声をいただきました。私も若い頃に“エイヤー!”とブラジルに行きましたが、その時の心細さやブラジルで生きていく気持ちが重なっていたのかな、と感じます。」と振り返り、ブラジルに渡った経験がある角野さんの経験に触れた監督は、「ルイジンニョさんという角野さんのブラジル時代の恩人が映画の中に出てきますが、ルイジンニョさんとの再会は、前の週のギリギリまで来日いただけるか分からなかったんです。
一度は諦めかけて、角野さんが自分で会いにいきませんか?と突然相談したり、私がカメラを担いでルイジンニョさんのメッセージを録りにブラジルに渡るしかない!と思うことが何度もありましたが、ご来日をいただいて奇跡の再会を果たされて・・・。今思うと、角野さんの想いが通じた魔法だったのかもしれないな、と思います。」と振り返りました。

ルイジンニョさんに触れた角野さんは、「私も本当に奇跡だと思います。当時 12 歳の可愛い少年が、白いヒゲを生やして羽田の空港から現れたときは、あれっ!?と思っちゃいました」と答え、会場を笑わせました。「話してみると、彼らしい表現や言葉のリズムが思い出され、本当に良い機会を与えてもらいました」と監督に感謝も伝えました。

▼服装について

40 代まではグレーや黒が多かったという服装について聞かれると、「50 代くらいになって、赤い洋服を着たところ、意外にも好評だったんです。そこから赤い服を着てみようかな、と思ったと同時に、その頃から髪もだんだんと白くなり、老眼でメガネをかけたりと、寂しい時期を迎えた時に”つまらないな”と思ったら、白い髪が意外にもきれいな色に合ったんです。
それが今日のあり様です。」と答え、ファッションで意識していることを聞かれると、「80 歳くらいになった時に、洋服を買ったり試着するのが面倒くさくなったんですね。そこで娘に着る服を頼んだところ、娘から“文句は言わないか?”と最初に言われました。“はい、文句は言いません。”と伝えて、どうやら少しは文句を言ったようなんですが、そこから娘に洋服を選んでもらうようになりました。外に出て、評判が悪かったら娘のせいにして、良ければ自分のせいにしよう、というつもりでいます(笑)」とお茶目さを覗かせ、宮川監督も「撮影に伺っても、毎回“可愛いですね!”と、お洋服の話から入っていました」と角野さんの服装に触れ、それを受けた角野さんは「今度は監督にピンクを着せちゃお!」と答え、会場を笑わせました。

▼テーマカラーの「いちご色」について

「いちご色」をテーマカラーにしていることについて問われた角野さんは、「今日の洋服は“いちご色”ではないですが、家を建てる時に、何か 1 つの色に決めたほうが良いと言われ、“赤”が良いと答えたところ、色にうるさい人が1人いまして、赤にも色々あると言われて“いちご色”と答えたのが定着しました。なので、私の家はいちごっぽい赤です。」と答え、宮川監督も「ポスターの背景の色も、角野さんのお家の壁色なんです。」と紹介しました。

▼好きをずっと続ける秘訣

好きをずっと続ける秘訣については、「私は好きがずっと決まらなかった。ずっと好きが見つからずブラジルではラジオの営業などをしていましたが、帰ってきたら大学の先生に“本を書け“と言われたんです。卒論しか書いたことないのに、初めて本を書くわけですから、何回も何回も書き直したんです。
そしたら、“なんだか楽しいな”と思って、そこからコツコツと毎日書いて、一生書いていこうと思いました。」と答え、監督は「映画にも出てきますが、本当に朝から晩まで書かれているんですよ。土日も関係なく、休もうという気が無くて…、本当に書くのがお好きなんだな、と思いました。
天職なのでしょうけど、だんだんと天職になっていったんですよね、きっと。」と答え、すると角野さんは、「好きなことだから、疲れた。って言えないのよ。でも、私も疲れるのよ・・・?」と答え会場が笑いに包まれ、撮影時も書いている姿を見ていた監督は、「角野さんは本当に遊ぶように、楽しんで書かれている。
どんどんと物語の世界に入って言ってしまい、撮影中に私達は置いてけぼりになってしまう瞬間が何度もありました」と告白。角野さんは「書きたいものを書いておきたいと思うのと、私もやっぱり大変
なときがあるのよ。だけど好きな事やっているし、考え方を自由にしてみると、こうだと思っていたことも、こっちに行ってみようかな、という気持ちになる。失敗したら戻ったら良いので、書き直すのは苦にならない。書き直すと違う発見があって、それに出会えることが嬉しい。」と独自の考えを披露し、観客を驚かせました。

▼挑戦してみたいこと

最後に今後挑戦してみたいことを聞かれると、「わたし来年 90 歳なの。これちょっと売りです!90 歳になった時に、すごいピュアなラブストーリーを書いてみたい。できればね!中学 1 年生の初恋なんて忘れちゃっているわね、相手の名前も忘れてしまっているけど、書けるかな・・・?と思っていますが」と答え、今後の意気込みを覗かせました。
今年の 1 月 1 日に 89 歳の誕生日を迎えた角野さんは、お祝いでいちご色の花束を受け取り、89 歳の抱負は「まずは元気で歩ければ良いな。長く長く元気でいたいです」と答え、盛大な拍手に包まれ舞台挨拶は終了した。


映画『カラフルな魔女』

語り:宮﨑あおい
監督:宮川麻里奈 音楽:藤倉大
プロデューサー:山田駿平 宣伝プロデューサー:大﨑かれん 編集部協力:岡山智子
ラインプロデューサー:松本智恵 撮影:髙野大樹 編集:荊尾明子 音響効果:河原久美子 監督補:岡澤千恵
制作:NHK エンタープライズ 制作協力:角野栄子オフィス エネット 映像提供:NHK 製作・配給:KADOKAWA
ⒸKADOKAWA
公式 HP:https://movies.kadokawa.co.jp/majo_kadono
X(旧 Twitter):@majo_movie
Instagram:@majo_movie

2024月 1 月26日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

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