映画『青すぎる、青』主演・上大迫祐希インタビュー。地元・鹿児島での撮影の想い出

映画『青すぎる、青』主演・上大迫祐希インタビュー。地元・鹿児島での撮影の想い出

鹿児島ミッテ10での先行ロードショーがスタートし、いよいよ、11月4日(土)より新宿ケイズシネマを皮切りに全国順次ロードショーとなる映画『青すぎる、青』。卒業を控え揺れ動く美大生・美巳の心情を見事に映し出した主演の上大迫祐希さんにお時間をいただき、地元・鹿児島での撮影の想い出をうかがいました。

上大迫祐希

■映画『青すぎる、青』主演・上大迫祐希インタビュー

▼上京前、鹿児島での芸能活動

-上大迫さんは、2019年に上京されているそうですが、上京前の鹿児島では芸能活動をされていたのでしょうか?

上大迫祐希
鹿児島にいたときは、地元にある芸能事務所に所属させてもらっていて、中学2年生から芸能活動を始めています。
地元にいたときにはそこまでたくさんの仕事があったわけではなく、年に1回、舞台に出たり、地元のコマーシャルに出させてもらったりしていました。
本格的に芸能活動を始めたのは役者を目指したいと思って、高校卒業と同時に上京してきてからです。

▼役者を目指したきっかけ

ー役者を志したきっかけにはどのようなことがあったのでしょうか?

上大迫祐希
小学一年生のときに鹿児島と東京を繋ぐ新しい飛行機の就航記念の広告に出演してくれる一般家庭を募集していたんです。
家族に飛行機好きが多いんですけど、私の母がそれに応募しまして、グランプリになって、本当にトントン拍子になんですけど、父母兄姉私の家族5人みんなでスチールやコマーシャル撮影をして、鹿児島の路面電車のラッピングにもなりました。
小学1年生のときに初めて芸能のお仕事に触れたことから興味を持つようになりました。
それがあって中学2年生の時に、地元の新聞の「所属タレント募集!」という広告を見つけて、自分で応募したことから始まっています。

▼今関あきよし監督との出会い

-『青すぎる、青』の撮影以前に、今関あきよし監督との出会いがあったそうですね。
 今関監督は、現在所属されてる事務所の俳優育成部門での講師をされていて、短編映画も作られていたとか。そこではどんなことを学んでいたのでしょうか。

上大迫祐希
講師の方がいらして、台本を使ったワークショップをする場所になっていて、何ヶ月かに1本、短編映画を制作する「クリエイターズ・フィールド」というものがあり、そこに通わせてもらっていました。
そこで一緒に取り組む仲間がいて、その人たちで短編映画を作るときの講師として今関監督がいらっしゃいました。その短編映画を作るにあたって、「クリエイターズ・フィールド」に通っている人たちでのオーディションがあって制作していくものになっていました。
そこで今関監督と出会って、『ザ・オーディション』という短編映画の主人公として選んでいただいた場所になります。

-主人公だったんですね。

上大迫祐希
ありがたいことです。

▼地元鹿児島で撮影する話をいただいて

-上大迫さんが鹿児島出身であることや、今関監督が鹿児島を訪れて感じたこと、そこにつながる経緯があっての『青すぎる、青』の制作だとうかがっています。今回の出演はオファーと言うことでしょうか。

上大迫祐希
事務所の方から「鹿児島で撮る映画があるんだけど」というお話をいただいて、「ぜひやらせてください!」ということで出演が決まりました。

-出身地での撮影ということで、特別な喜びや感情はありましたか?

上大迫祐希
この話を聞かせていただいた時点で、こんな嬉しいことがあるのかと思いました。地元で主演映画を撮らせていただけるってなかなかないことだと思うので、心持ちが変わるというか、この特別な機会に今のこの私にしか出せないものを全力で詰め込みたいと思いました。

私の見知った土地でもあったので、そこで鹿児島弁で過ごせることに感慨深さを感じて挑みました。

ー慣れ親しんだ言葉をそのまま使えるんですものね。

上大迫祐希
そうなんです。

▼タイトルについて

-『青すぎる、青』というタイトルは、出演が決定時には決まっていたのでしょうか?

上大迫祐希
決まっていました。私自身、青色がすごく好きだったので、この『青すぎる、青』っていうタイトルはすごく素敵だと思いました。そのときにいただいたプロットも青空の写真とともに送られてきたので、すごくわくわくしそうなものだなと思って楽しみになりました。

-青色が好きな理由は?

上大迫祐希
普段から空を見るのが好きで、写真を撮るのもすごく好きなんです。

私の母方の実家が奄美大島なんですけど、そこに遊びに行くことが小さい頃から多くて、海と空を当たり前に見てきたというのもあって、その組み合わせを見ているだけで私の中で心が落ち着くし、癒されます。

家族が飛行機が好きだって話もしたんですけど、飛行機から見える空…。

空にもいろいろな表情があるじゃないですか。

その中で、いつ見ても自然の力ってすごいと思うところがあって、心が澄んでいく気がするので、青色はすごく好きな色です。

上大迫祐希

 ▼脚本を読んだ時の感想

-作品を観させていただいて、ファンタジーやSFの要素があったり、冒頭からこの後の展開を想像させるストーリーがすごく面白いと思いました。上大迫さんが脚本を読んだときの感想はいかがでしたか。

上大迫祐希
ファンタジー要素が入っていて、 UFO が出てきたり、仲の良くないおばさんと住んでいたり、いろんなことがあるな…と思う中で、美巳の行動・美巳が感じている気持ちが私自身とすごくリンクしていると思いました。

 この映画の中の美巳は卒業制作を前に、思い悩んでいるっていうものが一つ軸としてあるのですが、昨年の11月頃の撮影の時は、私も自分の大学の卒業制作と重なっている時期でした。

 年齢も同じでしたし、進んでいる軸が現実世界とリンクしていたので 気持ちを重ねやすいなと思いながら読んだ記憶があります。

▼上大迫さんの卒業制作

 -上大迫さん自身、大学の卒業制作には何を作られたのでしょうか?

上大迫祐希
卒業制作で私が作ったものは、私が今まで見てきた地元・鹿児島の風景をフィルムカメラで写真におさめて、それを1冊の写真集にするっていうことをテーマとして取り組みました。

 劇中の美巳も、途中で父の形見のフィルムカメラを手にとって写真を撮る場面があるのですが、あれが私というか、あのときの私と同じ構造でした。

その時に私の中で「写真集にする!」という明確なものがあったので、この美巳ほどの重い悩みはなかったのですが、すごく心情がわかりました。

人の作品と比べてしまったり、自分は何をしたいのかなって悩んだり、そういう気持ちがすごくわかりました。

上大迫祐希
私の大学のコースでの卒業制作は、“何をしてもいい”ということもあって、なおさら難しい点がありました。ちょっと縛りが欲しいと思ったりもしながら、ちょっと広すぎて難しかったんですけど、でもそのおかげで想い出の風景を撮るというやりたいことはできました。

22歳になるまで過ごしてきた自分が見てきた景色は、少なからず今の自分を形成するにあたって影響しているのではないかと思っています。上京して4年経ったときにもう一度鹿児島に帰って、その風景をあらためて見返したい思いがありました。

 自分が小学生のときに過ごした地域だったり、母方の実家の奄美大島や父方の実家に久々に顔を出して、ずっと過ごして遊んできた風景をその時に写真におさめることをテーマにしていたので、特別なものを取りに行くというよりは当たり前に見ていた日常を振り返ってたどるように、1枚を切り取るイメージで写真を撮りに行きました。

 ▼鹿児島での撮影について

-今回、撮影が鹿児島で行われ、見慣れた風景が映し出されていますが、あらためて感想はいかがでしたか?市内や、フェリー、佐多岬などが劇中では印象的ですが。

上大迫祐希
鹿児島に18年住んでいましたが、佐多岬に行ったことは一度もなくて、この映画の撮影で初めて行かせてもらいました。鹿児島市内から車とフェリーで乗り継いで3時間ぐらいかかるんです。現地ではコンビニも車で40分ぐらい行かないとないような場所なので、なかなか簡単には行ける場所ではないんです。

 だからこそ、自然のパワーを存分に感じられる撮影場所でこんな魅力的な土地があるんだなって、鹿児島出身だからこそ嬉しくもなります。

 鹿児島市内の撮影は私が学生時代に暮らし・見てきた風景で生活圏内の場所だったので、そこでの撮影をしていることもまた不思議な感覚になりました。

 桜島が見えるのも、鹿児島の人にとっては当たり前だし、桜島フェリーに乗るのも日常生活の一部なので鹿児島に住んでいた頃を思い出しますし、 鹿児島だからこそ、自分が自然体でいられて、そのロケーションに身を任せきって取り組んでいました。

 ▼鹿児島の人と食べ物

-鹿児島の風景だけでなく、食べ物も映画の中に登場しましたよね。何気なく、フェリーの中でも食事をされていますし。

上大迫祐希
桜島と鹿児島市内を繋ぐフェリーが15分間の乗船時間なんです。

なぜかわからないんですけど鹿児島の人たちってフェリーに乗り込んだら、15分しかないのにうどんを頼むんです。人が多いときには注文するまでにも時間がかかるので、食べられるのが5分もないほどになってしまうんですけど。どこか使命感みたいなもので、フェリーに乗ったときは、うどんを食べるのがルーティーンになっています。

桜島フェリーの他にもう一つ垂水フェリーっていう、もうちょっと乗船時間が長いフェリーがあるのですがそこでもうどんは販売していて、フェリーに乗ったらうどんを食べることが鹿児島の人たちの中でもあるあるの現象なのかなと思っています。

-聞き慣れない、ウチワエビ=パッチンという言葉も登場していましたよね。

上大迫祐希
正直私はパッチンはあまり食べたことがなくて、佐多の方で有名なのかな…。海が近いので、鹿児島市内とはきっと採れるものが違うのかなって思っています。

おばあさんと2人で作ってる“あくまき”は、私の認識としては、おばあちゃんちに行ったら出てくる食べ物で、購入するというよりもおばあちゃんが作ってくれる食べ物で、郷土料理なんだと思います。

-“あくまき”は、いわゆる“ちまき”なのでしょうか?

 上大迫祐希
全国的に知られているちまきとはまた違うみたいなんですけど、鹿児島ではこの“あくまき”のことをちまきって呼ぶんです。なので私の中でちまきと言ったら、この“あくまき” を想像します。なので、東京に出てきてちまきを出されたときに、「私が知っているちまきと違う…」って思ったことがありました。

 ▼鹿児島での先行試写の反応

-7月29日に鹿児島での先行上映会がありましたが反応はいかがでしたか?

上大迫祐希
先行上映会を開いていただいたのが、「鹿児島ミッテ10」という鹿児島中央駅と隣接してるショッピングモールの中にある映画館で、鹿児島の人が映画を観るといったらほぼあそこの映画館に行くんじゃないかなっていうようなメインの映画館です。

そこで今回先行上映会させていただいて、しかも満席になりました。私が当たり前のように今まで観に行っていた映画館で、こういった舞台挨拶に登壇させてもらって自分がスクリーンに映ってっていう経験をして信じられない光景で、それを見に来てくださる方がたくさんいることにもすごく幸せな時間でした。

せっかく鹿児島での上映があるということで、地元で応援してくださってる方がいらっしゃるので、その人たちにも届いてほしいなと思うし、届けたいなと思うし、お世話になった先生方にも連絡を入れたいと思っていたので特別な上映になりました。

-印象に残ったエピソードはありますか?

上大迫祐希
小学校のときに担任をしてくれた先生が、その上映会を観に来てくださっていて、その事実だけですごく胸がいっぱいになって、「あぁ、気にしてくれていたんだな…」と思いました。

以前、私が鹿児島の新聞に掲載していただいたことがあって、それを見て私が芸能活動をしていることを知ってくださったみたいです。そういったことから気にしてくださってることがすごく嬉しかったし、「頑張っています!」と元気な姿を見せられるのが一番だと思っています。

地元だからこそ、観ていただける方がいるので、それが一番嬉しかったです。

▼お客様へのメッセージ

-映画を観る方へのメッセージをお願いします。

上大迫祐希
子供から大人にかけての時間、その狭間にある時間でいろんな物事に触れて、もっと広い世界を見るようになったときに、人と比べてしまって落ち込んだり、劣等感とか不甲斐なさを感じる瞬間って、この年齢ってすごく多いと思います。

そういう学生の方々にも観てほしいものですし、その時間を通ってきたであろう大人の方々にも観ていただきたい作品です。

この映画を観ることによって、「等身大のあなたのままでいいんだよ」っていうようなメッセージが、含まれていると思います。

 これからの選択を、そっと支えてくれるような映画になっていたら嬉しいと思います。ぜひ劇場でご覧いただけましたら幸いです。

上大迫祐希

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映画『青すぎる、青』

ストーリー
唯一の家族だった父親を亡くし、心に穴があいたままの美巳。父の代わりに店を切り盛りする為にやって来た伯母・嘉子との向き合い方もわからず、訳もなく当たり散らしてばかり。目前に控えた美大の卒業制作も手を付けられず自分を見失いそうになっていた。親友の希良は、何事も前向きな性格ながらも、そんな自分自身を持て余している。
美巳との向き合い方がうまくいかない嘉子もまた人には言えない深い秘密を抱えていた
…。そんな美巳に不可思議な変化が起こり始める。見えないはずのモノが見え、聴こえないはずの声が聴こえるようになってしまう…。

上大迫祐希
原 愛音 肥後遼太郎
松元裕樹 まっぴーさくらじま 森 優稀 三浦結愛 穂原康博 新名真郎 田中千枝子
逢澤みちる / 窪塚俊介 佐伯日菜子

監督・原案:今関あきよし
脚本:小林弘利/音楽・MA:種子田博邦/エグゼクティブ・プロデューサー:嶋田 豪 肥後潮一郎/プロデューサー:星野晴美 西田建一/鹿児島弁監修:西田聖志郎/撮影・編集・VFX:三本木久城(JSC)/録音:寒川聖美/美術:塩津洋一/主題歌「palette」作詞・作曲・歌:よしむらさおり/SPECIAL THANKS:小牧醸造株式会社/協力:鹿児島市 羽子田幸一/ロケ協力:鹿児島レディスカレッジヘアーアート学科 株式会社マツモト工芸ドローン事業部/制作協力:南大隅町開発株式会社 かごしまフィルムオフィス/制作・配給:アイエス・フィールド/製作:「青すぎる、青」製作委員会

2023年/日本/カラー/103分/アメリカンビスタ/ステレオ/G
配給:アイエス・フィールド
Ⓒ2023「青すぎる、青」製作委員会

<公式WEBサイト>http://www.is-field.com/ao/
<公式Twitter>@aosugiru_movie
<公式Instagram>@aosugiru_movie

20231027日(金)より鹿児島ミッテ10にて先行ロードショー

2023114日(土)より新宿ケイズシネマを皮切りに全国順次ロードショー!

青すぎる、青

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