第36回東京国際映画祭のNippon Cinema Now部門の監督特集「映画の職人 城定秀夫という稀有な才能」で10月27日、『アルプススタンドのはしの方』が角川シネマ有楽町で上映された。上映後のQ&Aに、城定監督は俳優の平井亜門、中村守里と登壇し、会場からの質問に答えた。
会場からの質問のひとつとして、日本映画を海外のお客様に観せるにあたっての英語字幕の重要性について提言があった。
▼来場したお客様からの質問~海外を意識した英語字幕の設定の提言~
-劇場初日公開とブルーレイと配信等で何度も楽しませていただいております。
二つ質問があります。皆さんお三方がこの映画の撮影に5日間プラス1日で6日間で撮られているじゃないですか。
城定秀夫監督
すごいな、そこまで知ってるんだ…
-1つ目の質問は、この映画がその6日間の後なのか、“いつすごくなると思った瞬間があったのか”を教えていただけば幸いです。
2つ目の質問は、今日、アメリカ人の友人を連れてきています。この映画を観た時に、絶対に彼に観せたいと思ったんです。
ただ(当時は)英語字幕がついてないんです。(後日販売された)ブルーレイにもついていなくて観せられなかったんです。日本映画ってなかなか英語字幕がつく上映が少ないんです。今年も是枝監督の『怪物』ぐらいしか日本映画が英語字幕付きで全国公開されてないんです。
そういう状況を受けて、城定監督や俳優の皆さんもそうなのですが、英語字幕について、海外のお客様に観せるという状況をどのように考えていますか?この国じゃなくて。
▼この映画がいつすごくなると感じたか
城定秀夫監督
まずこの映画がいつすごくなると感じたかについてですが、僕自身はね…。
本当に小さい映画なので自分で編集して、最後に音のところだけスタジオに出して…っていうところ以外は自宅のパソコンで編集して、最後のエンドロールまで自分で作って…っていうようなそういう映画なんですけど。
画が繋ぎ終わって、通して観た時に、すごく自分で観て、自分の映画で泣くことが多分にあるんですけれども、それはたまにあるんで、「あぁ、いい映画ができたな…」ぐらいの感じで思っていました。
そんなに宣伝とかもできないような予算の中でやってるので、公開してみたら SNS 等ですごく皆さんが応援してくれる声が多くて、だんだん広まっていって、「こういうふうに広まっていくことがあるんだな…」っていう、そんなふうな感じでした。
平井亜門
僕は『銀平町シネマブルース』という映画にもちょちょいと出ているんですけれども、城定さんとは『アルプススタンドのはしの方』で初めてお仕事させていただきました。
そのときの印象として(撮影が)すごく速い(です)。カットとか全部がきっと頭の中で決まっていて、『アルプススタンドのはしの方』はすごくスピーディーに進む現場でした。
ですがスピーディーすぎて、ぶっちゃけ僕はちょっと不安だったんです。でも、城定さんと同じく、スタッフさんの声であったりとか 「SNSですごく盛り上がってるよ」っていう声を聞くようになって、「おやおや、これは…」ということで、実際に劇場で映画を観て、「これはすごいきっといろんな人に愛される映画なんやな」っていうふうに感触を得ました。
中村守里
“お~いお茶”(のラベル)は撮影中は隠していたんですね。
城定秀夫監督
それ、いま言うか…(汗)
中村守里
“お~いお茶”の会社の皆さんが、映画を観て受け入れてくれた時…です。
▼英語字幕について
城定秀夫監督
英語字幕についてですが、これなんかも特にそういう状況で作られたので、あまり世界に広げようとか、そういう意識は全くなかったんで、改めて英語字幕がついて、海外の人にも観てもらえて嬉しく思っています。
平井亜門
英語字幕については…
城定秀夫監督
このQ(質問)難しいよな…
平井亜門
英語(字幕がついたことは)、めちゃめちゃ嬉しいですね。
でも、甲子園だったりとか、“お~いお茶”みたいなことだったりとか、「どれだけ『アルプススタンドのはしの方』の日本特有のこの面白さみたいなのは伝わるのかな」って不安でもあり、楽しみでもあります。
中村守里
(英語字幕がついたことについては)海外に映画が渡るっていうのは、私もすごく嬉しいです。
市山尚三(東京国際映画祭プログラミングディレクター)
日本映画がですね、英語字幕付きで上映された映画館がないとか、ブルーレイにも(英語字幕が)ついていないとか、これは大変重要な提言を今されました。
ただ、これを話しているとですね、もう終わらないので、だから別の機会にまたぜひ提言してください。
時間のある時に、この話はですね、もっとオープンに皆さんで議論した方がいいという素晴らしい提言だと思います。