映画『彼方のうた』杉田協士監督&眞島秀和(東京国際映画祭 Q&A)一緒に映画を作りたいと思う方に声がけをしてつくる

映画『彼方のうた』杉田協士監督&眞島秀和(東京国際映画祭 Q&A)一緒に映画を作りたいと思う方に声がけをしてつくる

10月24日(火)、第36回 東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門 『彼方のうた』のQ&Aに、杉田協士監督と眞島秀和が登壇。プログラミングディレクターや観客からの質問に答えた。

彼方のうた

■ 映画『彼方のうた』杉田協士監督&眞島秀和(Q&A)

▼ひとことあいさつ

杉田協士監督
こんばんは。『彼方のうた』を監督しました杉田協士と申します。今日こうして日本でのプレミアの上映をここで迎えられて、皆さんとこうしてご一緒できてとても嬉しいです。ありがとうございます。

彼方のうた

眞島秀和
出演しております、俳優の眞島秀和です。本日はご来場いただきましてありがとうございます。
杉田監督とは僕はもうお互いに20代の頃から出会って、もう20年以上の付き合いがあるんですけれども、杉田監督の作品、この東京国際映画祭での上映にご来場くださいまして、重ね重ねお礼申し上げます。今日はよろしくお願いします。

彼方のうた

▼オリジナル脚本である本作の成り立ちについて

-本作制作の成り立ちについて教えてください。

杉田協士監督
この『彼方のうた』は、元々私の前作の『春原さんのうた』という映画を観てくれたプロデューサーの方が、「あなたと一緒に映画を作りたい」と声をかけてくださって、始まりました。
そして私は久しぶりにオリジナルで自分の脚本で書いて作ろうと思ったんですが、その頃に私の過去の作品の感想をとても長いメッセージで送ってくださった、今回主演の小川あんさんと一緒に作るということを決めさせてくださいと伝えて、その小川さんを中心にお話を書くということで始めました。

私は脚本のお話を考える前にいつも、そのとき一緒に映画を作りたいと思う方にお声がけしていって、進めていきます。私のさらに頭に浮かんだのが眞島秀和さんと中村優子さんで、でもさすがにお2人にはまだ脚本がない状態でオファーするのは難しいかと思いまして、でも心の中にお二人のことを思いながら、脚本を書きました。

私の学生のときの映画の学校の修了作品に出ていただいた眞島さんといつか自分がちゃんと映画をやれるようになってからご一緒したいとずっと願っていましたので、嬉しいです。

-先ほど眞島さんと杉田監督は、20年前からの知り合いと聞いて驚いたのですが、それは卒業制作に出演されたときからのお知り合いということなんでしょうか?

眞島秀和
はい、そうです。

▼オファーが来た時の感想は?

-今回のオファーが来たときにはどのように思われましたか?

眞島秀和
(杉田協士監督のことを僕は)杉田くんって呼んでるので、杉田くんって言いますけど、いつか一緒にやりたいなって気持ちはずっとありましたし、最初に今回の作品のシナリオというか、脚本をいただいて読んだときに、ものすごく難解というか、難しいというか、いわゆる省略しているというか、非常に杉田くんらしい作品で来たなっていう思いがあって、それも嬉しかったんですけど、俳優としては難しいな…。
難しいっていうのは、難易度が高いなっていう意味で。
それを最初に思いましたね。

(杉田くんって)こういうところがあるんですよ(笑)
<壇上で眞島さんをスマホで撮影する杉田監督に対して>

彼方のうた

杉田協士監督
今ご覧いただいた映画はいろいろと説明なども他の映画に比べると少なかったと思います。でも撮影の現場では、私がどの程度の表現・説明でいくかという部分を迷っているときに、少し説明を足したりすると、眞島さんが「杉田映画はそれがなくていいんじゃないか」と、私を鼓舞するというかですね…。

眞島秀和
俺はそんな生意気なことを言ったの? 監督に対して?

杉田協士監督
すごく励ましてくれました。

■お客様からの質問

▼前作と地続きのような感じを受けましたが、意識されていることは?

-今回12年ぶりのオリジナル作品ということですが、前作の『春原さんのうた』と地続きのような話だと感じました。前作とはどういうふうに意識されて作られたのでしょうか。

杉田協士監督
私は普段、映画を作るときにその映画に登場する人たちの人生全体のことを考えています。
映画を作るとき、この映画でこの人を見るのはここまでっていうあるポイントで決めたりします。
それは私が見るのをここまでと決めただけで、その人たちの人生はその後も続いている・生きている。その人たちがまた私が作る別の映画に登場するということは、私にとってはとても自然なことで、ただ今回の映画は、この世界に生きている人の中の、この人に自分はフォーカスを当てるという気持ちで臨んでいます。

例えば、今日お越しいただいた皆さんのどなたかおひとりに、もしそれが可能なら、私がフォーカスを当てさせていただけたなら、その方の何日かを例えば撮影していけば、それは必ず映画になると思います。
その映画を撮っている間に、ほかに映っていく人たちも当然、その人にまたフォーカスを当てれば、その人生の映画が生まれるという感覚なので、今日観ていただいた映画のカフェで働いている赤い髪をした女性は、前回の映画の主人公なんです。

そういう感じで自分は映画を続けています。

▼スタンダードサイズにした意図は?

-最近あまりみないアスペクト比(スタンダードサイズ)だと感じましたが、その意図は?

杉田協士監督
画面が横に長いといろんなところに目がいっちゃうんですけど、短いと、「今これを見ればいいんだ」ってわかりやすくなるので、あまりその一つのシーンで見たいものがそんなにたくさんないので、その方が集中できるという理由です。

眞島秀和
今の質問をしてくださってありがとうございました。
僕も聞きたかったんですよ、これを。これ聞いちゃいけないような感じだったので、今、隣で聞いてていてなるほどなと思っていました。ありがとうございます。

-劇中でお芝居をするシーンがありましたが、素人という設定で、すごく難しかったのではないかと思いました。

眞島秀和
まず現場に一緒に入ったときに、ある程度予想はしていたんですが、もう他の現場では味わうことがないような、とても優しい時間が流れてるんですね。
まるで自分がすごく汚れた人間だというふうに感じるような空気がもうすごく満たされておりまして、こういうところに来た以上は、「どう演じよう」とか「こういうシーンだからこういう声のトーンでやってみようかな」とか、そういう下世話な企みは全て一旦忘れてみようと思って、そこにいる共演者の方たちとか、そこの撮影全体の雰囲気に包み込んでもらおうというような、そんな感覚でこの映画の出演シーンに関しては全てそういう姿勢で臨んでおります。

-そのシーンでは、素人という設定でお芝居されていると思うんですけど、見ていてすごく難しいんじゃないかと思ったのでそこを聞かせてください。

眞島秀和
本当にそうなんですよ。
難しいんですけど、言ってしまえば、あまりややこしいことは考えず、もうあのお父さんが頼まれて、急遽やることになったんだなっていう、もうそういうつもり・心構えで、ただただやっただけですね。

彼方のうた

▼あえて説明していない表現と、英語字幕での明示について

-いろいろなものを削ぎ落した行間のある表現がとても新鮮でした。監督があえて説明していない表現をインターナショナルフィルムフェスティバルという性格上、英語字幕がつくことで、登場人物の関係性などが明示されてしまうシーンがありました。英語字幕に関して監督から依頼したことはありますか?

杉田協士監督
鋭いご指摘ありがとうございます。字幕は私も全てチェックしました。ちなみにそのご指摘いただいた“英語字幕”のところは私が変更してもらいました。元々は“剛”となっていました。

私の前作の映画がヨーロッパの方の映画祭などで評価もしていただいています。

誤解を受けやすいのですが、ヨーロッパの方たちが割と映画を受け入れてくれるというのは全然逆で…逆なんです。

だから私の中で怒られないラインっていうのを探していて、さすがにここは“登場人物の関係性が分かる言葉” にしよう。じゃないと(観客が)出て行ってしまうとかっていうのを考えながら作っています。

彼方のうた

▼後ろ姿を捉えるショットが多い印象を受けますが、その想いは?

ー後ろから撮るということについて、どういった思いがあるのでしょうか?

杉田協士監督
眞島さんはどう思いますか。

眞島秀和
いや、これもね、聞いてみたかったことだから。これ、杉田くんに。
答えが知りたい。

彼方のうた

杉田協士監督
これに関しては私だけでなく、撮影監督の飯岡幸子さんも関わる話です。
私にも飯岡さんにも共通していることは、例えば一つとしてはカメラを置いた場所が、表っていう感覚がありません。例えば今この場所は舞台があって、こっちが表、皆さんが見やすいという配置になっていると思うんですが。ようはそちらにカメラを置いてみるという感覚ではなく、この映画の世界に表がそもそもないっていう感覚でやっています。

大事なのは、私が演出してこういうことが起きるというふうに作った時間が流れたときに、そこで起きていることが、どこにカメラを置いたらわかりやすいかというのを重要視しています。
結果、人物同士が重なっても、私達にとってはその起きている出来事が見やすければいいので問題にならないのと、あと飯岡さんも「よくその背中をよく撮りますね」って質問されると、本当に本気の顔で「え?」っていう顔をします。自覚してないんです。

▼公開の予定

杉田協士監督
『彼方のうた』は2024年の年明けの1月5日から、東京のポレポレ東中野、渋谷シネクイント、池袋シネマ・ロサという3館で始まります。その後、他の街にも広がっていけるようにいま頑張っています。もしよろしければまたお会いできたり、ご覧いただいたりしていただけるととても嬉しいです。もちろんご無理なくどうぞよろしくお願いします。

彼方のうた
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■ 作品概要

映画『彼方のうた』

■あらすじ
書店員の春(25)は駅前のベンチに座っていた雪⼦(45)に道を尋ねるふりをして声をかける。春は雪⼦の顔に⾒える悲しみを⾒過ごせずにいた。⼀⽅で春は剛(45)の後をつけながら、その様⼦を確かめる⽇々を過ごしていた。春にはかつてこどもだった頃、街中で⾒かけた雪⼦や剛に声をかけた過去があった。春の⾏動に気づいていた剛が春の職場に現れることで、また、春⾃⾝がふたたび雪⼦に声をかけたことで、それぞれの関係が動き出していく。春は⼆⼈と過ごす⽇々の中で、⾃分⾃⾝が抱えている⺟親への思い、悲しみの気持ちと向き合っていく。


【監督プロフィール】
杉⽥協⼠(すぎた きょうし)
東京都出⾝。『ひとつの歌』(2011)、『ひかりの歌』(2017)がそれぞれ東京国際映画祭などへの出品を経て劇場公開。『春原さんのうた』(2021)が第 32 回マルセイユ国際映画祭にてグランプリを含む3冠を獲得、第 70回マンハイム=ハイデルベルク国際映画祭ではライナー・ヴェルナー・ファスビンダー賞特別賞を受賞し、他にもサン・セバスチャン国際映画祭、ニューヨーク映画祭、釜⼭国際映画祭、サン・パウロ国際映画祭、ウィーン国際映画祭、FICUNAM、⾹港国際映画祭など世界各地の主要な映画祭を巡り、2022 年に劇場公開。今作が⻑編 4作⽬となる。第 36 回⾼崎映画祭にて最優秀監督賞受賞。


⼩川あん 中村優⼦ 眞島秀和
Kaya 野上絹代 端⽥新菜 深澤しほ 五⼗嵐まりこ
荒⽊知佳 ⿊川由美⼦ ⾦⼦岳憲 ⼤須みづほ 安楽涼
⼩林えみ ⽯原夏実 和⽥清⼈ 伊東茄那 吉川愛歩 伊東沙保
プロデューサー:川村岬 槻舘南菜⼦ 髭野純 杉⽥協⼠
脚本・監督:杉⽥協⼠
撮影:飯岡幸⼦ ⾳響:⻩永昌 照明:秋⼭恵⼆郎 平⾕⾥紗
⾐裳:⼩⾥幸⼦ 阿部勇希 ヘアメイク:齋藤恵理⼦
編集:⼤川景⼦ カラリスト:⽥巻源太 ⾳楽:スカンク/ SKANK
スチール:⼩財美⾹⼦ 宣伝・タイトルデザイン:篠⽥直樹 宣伝:平井万⾥⼦
国際広報:グロリア・ゼルビナーティ 英語字幕:⻑⾕川美樹 増渕愛⼦
アソシエイト・プロデューサー:笹⽊喜絵 ⽥中佐知彦
制作プロダクション・配給:イハフィルムズ 製作:ねこじゃらし
(2023/⽇本/カラー/スタンダード/5.1ch/84 分) ©2023 Nekojarashi Inc.

『彼⽅のうた』公式サイト https://kanatanouta.com/

『彼⽅のうた』公式 SNS https://twitter.com/kanata_no_uta

2024年1⽉5⽇(⾦)より
ポレポレ東中野、渋⾕シネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

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