⼩辻陽平監督 長編作『曖昧な楽園』オフィシャルインタビュー到着。10/26にはワールドプレミア

⼩辻陽平監督 長編作『曖昧な楽園』オフィシャルインタビュー到着。10/26にはワールドプレミア

第 36 回東京国際映画祭コンペティション部⾨正式出品された、新鋭・⼩辻陽平監督による⻑編デビュー作『曖昧な楽園』。2023 年 11 ⽉ 18 ⽇(⼟)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開が決定している。
東京国際映画祭では、10月26日(木)に、ワールドプレミアを⽬前に控えている。このたび、監督、キャストのオフィシャルインタビュー到着。

曖昧な楽園

■ 映画『曖昧な楽園』

『曖昧な楽園』は、新鋭・⼩辻陽平による⻑編監督デビュー作。交通量調査員をしながら、同居する母の介助をする達也と、宇宙基地のような巨大団地に住む植物状態の老人を世話するクラゲ―――決して交わることのない、⽣と死をめぐる2つの物語を、SF 映画のような独特の雰囲気で映し出す 167 分のロードムービー。

「曖昧で不確かな瞬間をこそ映したい」という監督の信念のもと、脚本作りから演出まで、「即興」を重視した手法が採用され、監督と俳優たちはつねに対話を重ねながら物語を構築していきました。初⻑編監督作にして、いきなりの国際映画祭選出を成し遂げた⼩辻。受賞の⾏⽅に期待が集まっている。

▼あらすじ

交通量調査員として働く達也(奥津裕也)は、身体の不自由になってきた母(矢島康美)と、一軒家で二人暮らしをしている。夜毎、母からのトイレを報せる呼び出しブザーが鳴り、日常的な介助に応じている達也。行き交う人々の数をかぞえて記録するばかりの仕事にも、カプセルホテルで過ごす夜にも、どこにも居場所を見出せずにいる。クラゲ(リー正敏)は、顔見知りだった独居老人(トム・キラン)の部屋へ毎日のように通い、植物状態の老人の世話をしている。だが、老人の住む団地は老朽化によりもうすぐ取り壊されようとしていた。ある日、久しぶりに再会した幼馴染の雨(内藤春)を老人の部屋に案内するクラゲ。ささやかな交流を深めていくなかで、団地の取り壊し期日は迫っていく。やがてクラゲと雨は、老人を連れてバンで旅に出るが……。それぞれの抱える家族についてたどる旅の物語。

▼ワールドプレミアは、東京国際映画祭にて

『曖昧な楽園』は、10 ⽉ 23 ⽇より開幕する第 36 回東京国際映画祭コンペティション部⾨でワ
ールドプレミアとなり、上映は、26 ⽇(⽊)20:10〜TOHO シネマズ⽇⽐⾕ スクリーン 12、28 ⽇(⼟)20:05〜ヒューマントラストシネマ有楽町、31 ⽇(⽕)16:35〜丸の内ピカデリー2の 3 回にわたり上映。26、31 ⽇には監督、キャストによる舞台挨拶と Q&A を実施する。

▼場面スチール(7点)

▼監督、キャスト オフィシャルインタビュー

◆【小辻陽平監督に向けての質問】

1.本作制作の経緯
私の祖父は認知症と筋ジストロフィーにより、亡くなる数年前から寝たきりの状態でした。地元にある祖父の病室に立ち寄るたびに、二人で静かな時間を過ごしていましたが、その時過ごした祖父との最後の時間が本作制作のきっかけになっています。約4年間かけて脚本を第二稿まで書き上げ、そこからは俳優さんと一緒にリハーサルや対話をしながら脚本の改稿を進め、最終的な撮影稿は第9稿となりました。撮影現場でも、脚本をもとにして常に俳優さんに即興演技を行ってもらいながら、映画の可能性を広げていきました。「自分が思う映画とはどんなものだろう」と模索しながら、その瞬間一度きりしか生まれない時間を見つけることを目指し、撮影を行いました。

2.観にいらっしゃるお客様へのメッセージ
映画は作る側も観る側も自由なものだと思います。本作はセリフが少なく、余白の多い映画ですので、観ていただいた方の分だけ、たくさんの像を形作っていくことと思いますし、そうなることを願っています。本作が観ていただいた方の中で、色々な想像や普段忘れているような個人的なご経験などを思い出すきっかけになってくれたら嬉しく思います。

また本作は、ごく少人数の俳優、スタッフで制作した自主映画です。本作に関わってくれた彼らのことを観てくださった皆さんに覚えて頂けたら嬉しく思います。『曖昧な楽園』をどうぞ宜しくお願い申し上げます。


◆【キャストへの質問】

奥津裕也(達也役)

1.出演が決まるまでの経緯
オーディションサイトで情報を拝見してプロフィールを送りました。概要をみてとても縁を感じていたので、キャスティングして頂いてとても嬉しかったです。

2.脚本を読んでの感想
台詞よりも役の動きが丁寧に書かれているところにとても惹かれました。

3.撮影時のエピソード
監督と撮影の寺西さんと3人で電車を乗り継いで現場に向かった事がとても印象的でいい時間でした。

4.観にいらっしゃるお客様へのメッセージ
皆様の観た時の感覚や感想で映画は更に変化し、成長する気がしています。
皆様に観て頂ける事に心から感謝申し上げます。

リー正敏(クラゲ役)

1.出演が決まるまでの経緯
インターネット上の役者募集から連絡を取り、オンラインでの面談を経て出演が決まりました。おそらく2時間以上ひたすらいろんな話をしたことを覚えています。脚本やクラゲという役への所感だけでなく、数年前に亡くなった僕の父の話や、今でも後悔している中学生時代の出来事、“死”そのものへの考え方なども話しました。小辻監督はどの話も親身になって耳を傾けてくださって、終わった後は半ばカウンセリングを受けたかのような心持ちでした。小辻さんは人に寄り添うということがとても上手な方なんだと思います。この人が作る映画ならいいものになるだろうという実感があったため、決定の連絡があったときは嬉しかったです。

2.脚本を読んでの感想
その頃の僕は出演作も数本程度で演技というものを学んだこともなく、数えるほどしか脚本というものを読んだことがありませんでした。本作の脚本は面談前にその時点のものを送っていただいたのですが、そんな自分が読んでもすぐわかるほど異質で、すぐに気に入りました。セリフはほとんど書かれていないのに、情景がとても細かく描写されていて、映像がそのまま入ってくるような感覚で読みました。その映像の中に自分が映っている想像までしたかもしれません。ほとんどのシーンは静かで、穏やかな空気が流れていて、その中に人物たちの脈がとくとくと流れている。そんな雰囲気が文章から感じ取れました。

3.撮影時のエピソード
自分だけお休みのシーンの撮影で待っている間、劇用車のバンに載せられた簡易ベッドの上で少しだけ昼寝をして気持ちよかったことをよく覚えています。撮影最終日の帰路に車の中で「みんなのおかげでいい映画になる気がするよ」「いい映画になりますよ」という会話を監督としたこともありました。劇用車でもあり移動車でもあったあのバンの中で過ごした時間はどれもいい思い出になっています。小辻監督は人に寄り添うことが得意すぎるせいか変なタイミングで急に遠慮がちになったりして、「監督はもうちょっとどっしり構えていてください!」なんていうやりとりが何回かありました。でもそんな役と役者に寄り添い続けた小辻監督だから撮れた作品でもあると思います。

4.観にいらっしゃるお客様へのメッセージ(どんな役か、見どころなど)
クラゲくんはその名のとおりフワフワと漂うように、自分自身でもなぜ生きているのだかわかっていないような感覚で生きている人物だと思います。そんなクラゲくんがあの部屋で、あのバンで、そして行き着く先でどんなことを感じていくのか、一緒に感じながら観ていただけたらと思います。また、本作は人物だけでなく彼らがいる空間の空気ごと丁寧に切り取っている作品だと思います。ぜひスクリーンに映し出されるその場所の空気を、味わってみてください。

内藤春(雨役)

1.出演が決まるまでの経緯

小辻監督と初めてお話ししたのはオンライン通話でのやりとりでした。
雨の役柄について、2時間半程話していたと思います。幾度も話し合っていくうちに、自然と雨の形が見えてきたような…そうでないような。
雨の過ごす生活は曖昧で、その時々の感情を自分のものではないかの様に生きてきたのだと思います。クラゲとの関係性も、仕事も、雨にとっては世の中と繋がっているための要素の一つであって、本人自身の心は、実際どこにあるのか自分でも迷子になっているのだと感じました。

2.脚本を読んでの感想
この作品を最初に読んだ際には、台詞が殆どなく小説を読んでいるような感覚がありました。

3.撮影時のエピソード
撮影は季節をまたいで、長い期間を経て撮りましたが、その中でも3人の旅シーンは印象的で、実際の撮影期間中はほぼ車の中にいたので本当に旅をしているようでした。

4.観にいらっしゃるお客様へのメッセージ
悲しみにも幸せにも向き合う自信のない人々の旅路、是非、スクリーンで観て頂きたいです。


■ 作品概要

映画『曖昧な楽園』

2023 年/カラー/167 分

奥津裕也 リー正敏 矢島康美 内藤春 トムキラン

高橋信二朗 竹下かおり 文ノ綾 新井秀幸 三森麻美

監督・脚本:小辻陽平
撮影:寺西涼
照明:西野正浩
録音:中島光、太田達成、高橋信二朗
美術:猪狩裕子、石倉研史郎、山崎綾乃、藤村嘉忠
編集:小辻彩
整音:飯田太志
制作協力:サウンドブリックス
音楽:Osier(LuckGun)
主題歌:アカリノート『星の駱駝 曖昧な楽園Ver』
宣伝デザイン:ウタリトリ(濱本順由、岩瀬直美、佐藤若菜)
製作・配給:曖昧な楽園製作委員会

『曖昧な楽園』公式サイト https://aimainarakuen.studio.site
『曖昧な楽園』公式 X アカウント https://twitter.com/aimainarakuen

2023年 11 ⽉18⽇(⼟)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

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