毎年恒例の「若松孝二監督命日上映」が10月17日(火)、テアトル新宿(東京)にて行われた。当日は5年前に上映された『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)の続編にあたる『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(井上淳一監督、2024年3月15日公開予定)の特別先行上映が行われ、監督・キャストが登壇し、上映前舞台挨拶と上映後トークイベントを開催した。
■ 若松孝二監督命日上映『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』特別先行上映イベント
若松孝二監督命日上映『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』特別先行上映のイベントは上映前に舞台挨拶、上映後にトークイベントが行われた。
上映後のトークイベントには、若松孝二監督役の井浦新、シネマスコーレ代表(元・支配人)木全純治役の東出昌大、金本法子役の芋生悠、井上淳一監督役の杉田雷麟、劇中劇で美加理役として出演した向里祐香が登壇。MCは、木全純治が務め、満席の客席のなかトークを繰り広げた。
▼キャストがほとんど『福田村事件』
トークイベントの冒頭、井浦さんは「『福田村事件2』、いかがでしたでしょうか? ほとんどキャストが一緒です。」と来場者の笑いを誘うと、井上監督は「現場で皆さんにお願いしたんで…」とキャスト陣への声がけについて明かされ、井浦さんは「違う世界線だと思って楽しんでいただければ!」と呼びかけた。
▼撮影時のエピソード
続けて、井浦さんは撮影現場のエピソードを語った。
井浦新
いやもうこの現場ちょっと本当におかしくて、木全さんは現場でずっと撮影期間は制作部としても現場を動き回ってくださっていて、井上監督はもちろん映画の中心、この組の監督でした。
僕が芝居で、「こら!井上!」とか、「木全!」とか言うと、本番でカメラが回っているのに。「はい!」(と返事がかえってくるんです。)
「こら井上!」って言ったら、井上監督が「はい!」って。
井上淳一監督
スタッフが笑ってるんで何かと思ったら僕が返事してたという。
井浦新
何十年やってるんですかね(笑)
▼『止められるか、俺たちを』1作目、2作目の楽しみ方
井浦新
1作目と2作目は、つくっている監督がそもそも違うので、比べていただいてももちろんいいですし、いろんな楽しみ方があると思います。
井上監督と白石監督、どっちがおもろいのかっていう楽しみ方ももちろんやっていただいていいですよね、井上監督。映画は楽しむのが自由ですからね。
井上淳一監督
まぁ、自由ですけど…
井浦新
これを見てから、『止められるか、俺たちを』を観て見ていただいたら、時代を遡っていく楽しみ方もできますし、何か映画の楽しみ方をいろいろできるなと思います。
▼ものまね対決?
井浦新
さっきも言いましたけど、本当『福田村事件』なんですよ。キャストが。
とはいえ、やっぱり『止められるか、俺たちを』のこの世界観はやっぱりあって、見事に東出くんをはじめ、みんなが新しい風を吹かしてくれました。
僕も今日、久々に観て、2人のシーンを見ていると、擬態対決みたいな。
でも自分もそんなに似せてやってるつもりはないんですけど、東出くんが演じる木全さんもものまねを越えていく瞬間があって、そこからすごい、木全さん役になっていってるなっていうのを感じました。
▼笑った皆さんも共犯者
井浦新
映画ファンにも若松監督にも、僕はちょっとごめんなさいっていう感じがあります。
でも、今日見てくださって皆さん笑ってましたよね。
笑ったっていうことは、共犯者なので、一緒に僕らが寿命が来て、あっちの世界に行ったときにみんなで一緒に若松監督に怒られましょう。
▼木全さんを演じた東出さんのギャップ
木全純治
僕の役は東出さんがやられたんですけども、みんな聞いたときにびっくりしてます。
びっくりっていうか、「このギャップは何?」、「こんなんありえないんじゃないか」、「うそでしょ?」という反応だったんですけど見ていただくと、割とちょっと近づいていただけたかな…という皆さんの感想はいただいております。
東出さんはどうだったでしょうか?
東出昌大
僕はクランクインの前、前々日に木全さんとお会いして一緒に食事して、その後ちょっとお話して、翌日もちょっとご一緒したのかな。
元々『シネマスコーレを解剖する。』とか、あとシネマスコーレのドキュメンタリーとか、昔の映像とかを見てたので木全さんってこういう感じの方なんだってあったんですけど。
身振り手振りが多くて、クランクイン当日にそれをカメラ前でやってたら、「東出さん!私、あんなに手振らないですよ!」っていうんですけど。
それそれ!<舞台上でやはり身振り手振りが大きい木全さんを指さし>
▼井上監督の前で、若き日の井上監督自身を演じること
杉田雷麟
井上監督の前で井上監督をやらなきゃいけないので、駄目だって言われたらもう駄目だなって、ちょっとそういう緊張はありつつ、でも、結構“素”でっていうか、僕もそんなに寄せてはいなかったんですけど、どうでしたか?
井上淳一監督
寄せてはいなかったですけど、『福田村事件』のときに、ホテルが廊下をはさんで正面だったんですよね。だから何となく同時にドアを開けたりすると、この人がこの後僕を演じるんだ。絶対観察してるに決まってる。なんか妙に右手と右足一緒に出るみたいな。
杉田雷麟
毎回洗濯をご一緒に。
井上淳一監督
そう、俺達洗濯室に一番近かったからね。
東出昌大
後輩と一緒に映画に行ったとき、絶妙にそのウンチクじゃないけど、硬い話をするじゃないですか。役っぽく。絶妙ですね。
杉田雷麟
いや僕も、違うジャンルではああいう節があるので、少しはちょっとかっこつけるというか、ちょっと恥ずかしいなと思いながらやってました。
▼美加理さんと話す機会をいただいて
東出昌大
向里さんも、実在の人物。
向里祐香
そうですね美加理さんですね。
井上淳一監督
ラストにクレジットにあるね。
向里祐香
井上さんの大好きな美加理さんを演じました。
実際に繋いでいただいて、お電話を1時間ぐらいして話させていただいたんですけど、本当に声から、「キュンッ」みたいなかわいい感じで、その当時のこともいろいろ聞こうかなと思ったんですけど、「ちょっと昔のことであんまり覚えてないのよねぇ」とか言いながら、でも、いろんな他愛もない話しをしました。
「毛糸を食べるのどうですか」って言うシーンがあったじゃないですか。「あれは実際に台本にあったんですか?どうなんですか?」って美加理さんに聞いたら、「新幹線の隣に座ってた女の人が、毛糸を食べてた」って。「それを見て、これ使えるかもって思ったんだよね」みたいなことを言ってて、日常でいろいろ使えることがあるんだ、勉強になります!みたいな感じでした。
芋生悠
とにかくその映画って楽しいなっていう日々で本当に幸せでした。何か井上さんを初めとしたスタッフさんたちみんなが、自主制作映画を撮っているような、なんか今みんな楽しいんだなっていう空気を感じたりとか、そういう時間が本当に楽しくて、なんか年齢はみんなバラバラなんですけど、全員で映画を作ってるっていう感覚ですごい楽しかったです。
▼本作に関わった方、みんな登壇してのフォトセッション
トークイベント後には、井上監督の呼びかけで、キャスト、スタッフ、関係者が壇上にあがり、全員でのフォトセッションとなった。その中には、満席となった今日のチケットの最後の一枚を手に入れたと、井上監督にLINEをしたという藤原季節さんの姿もあった。
井上淳一監督
映画は監督だけでもできませんし、ここにいるメンバーだけでもできません。この映画にちょっと関わってくれた人、駆け足で上がってください。大西信満さん、タモト清嵐さん、それから市川洋くん。います?
それからスタッフ!撮影の蔦井さん、技術の原田さん、装飾の寺尾さん、編集の蛭田さん、それからプロデューサー片嶋さん、この最後ラストの曲と、「待つわ」を歌っている中野ミホさん。
そしてラストシーンこの後に実はもう1本シーンがあったんですけど、そこで出演していたのですが切りました足立正生監督。それから立ちんぼを演じました西垣内牧子さん、誰か、他に忘れている人いませんか?
この映画のチケットはですね。10数時間で売れたんですけど、なんと「最後の1枚を僕が買いました」とわざわざ LINEをくれた藤原季節くん。
そして誰か、止め俺の旗、1のやつも持ってきてください!
井上淳一監督
蔦井さん、一言だけもらえますか?
蔦井孝洋
とってもいい映画になったんじゃないかと思ってますので、みんなで応援してください。ありがとうございます。
▼資金が集まったら…
井浦新
グッズが売れて、資金が若松プロに集まったら、3(作目)なんです。
監督が映画を作りたいから作れるものなんですけど、これはもうみんなで作る映画にちょっとなりつつあるので、1、2と気に入ってくださったら、3を観たいという思いがあったらぜひ来年の公開のときには、皆さまの強力なご支援をお願いします!
僕が監督をやる可能性も…
まったくないです。
井上淳一監督
これ、ネットでニュースになりますよね。「井浦新、3作目監督か!?」
井浦新
いやいやいや、ないです。監督役です。
そこはいないと。誰にもやらせたくないんで。
僕だけの楽しみなんで。若松孝二監督役を演じるのは。
井上淳一監督
ひとこと、何かください。
東出昌大
僕もまだ役者になって10年ちょっとしか経ってないんですけれども、若松監督は「よーい、あい!」 の掛け声が「よーい、シュート!」だったらしいんです。
僕が、若松さんところに詰め寄って、こういう映画をかけたいって、あの廊下でいう芝居んときに今まで「よーい、あい!」って言ってた井上監督が「よーい、シュート!」って腹からすごい叫んだのを聞いて、「あぁ、映画人なんだな」と、なんか腹の中の、何でしょうね、帯が締められた思いがして、撮影に臨みました。
今後とも、先ほど芋生さんが言ったけど、いろいろ熱量で勝負できる現場だったんです今回は。今後ともいろいろな現場があると思うけれども、熱量、熱っていうのを称えながら芝居していきたいなと思います。僕らはもうちょっと先輩なので、今後ともこの若い人たちを贔屓にしてください。よろしくお願いします。ありがとうございました。
井上淳一監督
この映画は3月15日からテアトル新宿他全国順次公開。そして12月9日からちょうど撮影1周年でシネマスコーレで1週間だけ先行公開します。1週間だけです。
今日もですね、朝、シネマスコーレでこの映画を観たんですが、シネマスコーレが出てくる客席で映画を観て、映画館を出ると同じ風景が広がっているという、本当に混乱する世界線でやってます。
よろしくお願いします。この映画のみならず、全国ミニシアターまだまだコロナ明けても、苦しい、なかなか経済的に苦しい状況が続いてます。
この映画に限らず、ミニシアター、そしてミニシアターに上映する映画を応援してください。そしてこのメンバー、ずっとこれから芋生さんも雷麟くんも向里さんもこれからどんどんどんどん映画に出てきます。他のスタッフ、キャスト共々よろしくお願いします。どうも本日はありがとうございました。
▼退場時のメッセージ
井浦新
10月17日って、若松監督が亡くなってから本当に迎えるのが嫌で悲しい涙しか出なかったんですけど、皆さんのおかげで今日、腹からいっぱい笑いました。本当にありがとうございます。だんだん、この日を迎えるのが、メチャクチャ楽しみになっているのは、僕だけじゃないはずです。
若松プロダクションで、若松孝二と映画作りをした大先輩たちもこの日が楽しみだからと足立(足立正生)さんも来てくださっているんだろうなと思っています。ありがとうございました。皆さんのおかげです。来年の公開、よろしくお願いします。
■ 10/17(火)『若松孝二監督命日上映』開催(テアトル新宿)
毎年恒例の「若松孝二監督命日上映」今年も開催
『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(新作)の特別先行上映と、ゲストを迎えてのトークショーを実施。
【開催日時】
10月17日(火)20:00の回(予告10分/上映後イベント)
20:00 ~ 22:09 本編上映(119分+予告10分)
22:10 ~ 22:50 トークイベント(40分間・予定)
【登壇者】
上映前舞台挨拶:井浦新、芋生悠、杉田雷麟、向里祐香、井上淳一(脚本・監督)、MC 木全純治
上映前舞台挨拶:井浦新、東出昌大、芋生悠、杉田雷麟、向里祐香、井上淳一(脚本・監督)、MC 木全純治
※敬称略
10/17(火)『若松孝二監督命日上映』開催のお知らせ 2023年 |テアトル新宿 (ttcg.jp)
『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(2023年/119分)
脚本・監督:井上淳一
出演:井浦 新 東出昌大 芋生 悠 杉田雷麟
コムアイ 田中俊介 向里祐香 成田浬 吉岡睦雄
大西信満 タモト清嵐 山崎竜太郎 田中偉登 髙橋雄祐 碧木愛莉 笹岡ひなり
有森也実 田中要次 田口トモロヲ 門脇 麦 田中麗奈 竹中直人
2024年3月15日テアトル新宿ほか全国順次公開!