2月19日、渋谷シアター・イメージフォーラムにて、映画『リング・ワンダリング』の初日舞台挨拶が行われ、俳優の笠松将、阿部純子、金子雅和監督が登壇。2年前の2月に撮影された本作の撮影時のエピソードや脚本を読んだ時の感想、2年の時を経ての心境について語った。
■映画『リング・ワンダリング』
<ストーリー>
漫画家を目指す草介は、絶滅したニホンオオカミを題材に漫画を描いているが、肝心のオオカミをうまく形にできず前に進めない。そんなある日、バイト先の工事現場で、逃げ出した犬を探す不思議な娘・ミドリと出会う。転倒しケガをしたミドリを、彼女の家族が営む写真館まで送り届けるが、そこはいつも見る東京の風景とは違っていた…。
■映画『リング・ワンダリング』初日舞台挨拶レポート
▼公開を迎えての気持ち
笠松将
大変な世の中の時なのに映画が公開できて幸せに思っています。こうして観てくれる人もいてくれて嬉しいし、宣伝をしてくれる方も集まってくれて幸せです。
まずはありがとうございます。
阿部純子
この作品はちょうど2年前の2月に撮影していました。今日という日、日の目を迎えられて嬉しく思っております。
金子雅和監督
この映画は4年くらい前から企画を始めていました。青山のスパイラルで行われていたコンペティションで最初に賞をいただいた頃からスタートしました。
その青山の近くの劇場(渋谷シアター・イメージフォーラム)で公開されたことを大変嬉しく思います。
▼本作の着想は?
ー本作は東京という土地に埋もれた歴史や記憶が幻想的に描かれた作品ですが、この着想はどこからきたものでしょうか?
金子雅和監督
作品を観ていただくと大自然のロケーションが出てくると思います。毎回そういったものを作ってきたと思います。
自分自身が生まれも育ちも東京の人間なので、一度は東京を舞台に映画を作りたいと考えていました。
それが2017、2018年頃は東京オリンピックに向かって東京が新しく開発され変わっていくという時期でした。
その中でも東京の地面の下に埋もれた記憶だったり、命であったりというものがあるのではないかと、そこから着想を始めた映画です。
▼脚本を読んでの感想
ー笠松さん、阿部さんは脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?
笠松将
脚本を読ませてもらって、監督とお会いして、いろんな話をして、現場で撮影をして、完成した映画を観ました。その都度、作品に対する僕の見え方、感じ方が、どんどん変わっていきました。
なので今日でまた、僕の中でのこの作品の置き方が変わるだろうと思っています。
脚本を読んだ時と完成した映画を観た時で全く印象が違いました。
みなさんがどう思ったのか気になりますし、楽しんでいただけていたらいいなと思います。
ーお客様の前で映画が公開されたことであらためて映画が誕生したところもありますものね。
笠松将
そうですね、映画にとっての誕生日ですからね。阿部さんはいかがですか?
阿部純子
現場中も笠松さんは面白かったです。今日もたくさんお話いただけると思って楽しみです。
初めて脚本を読ませていただいたときは、正直、文章だけでは理解しきれないと思いました。
そこは魅力の一つというか、監督の中でイメージが明確にあって、映像として完成させていくというのは、私達役者にとっても楽しい過程でした。またどんな撮影現場になるのかということがその時からそこに興味がそそられるような脚本でした。
ーまさに彷徨い始めるといったところですよね。
▼演じた役柄の印象
ー笠松さんは漫画家を目指す草介という役柄についてどう捉えましたか?ご自身と共通する部分はありましたか?
笠松将
僕の仕事のやり方が多分こういうやり方なので、基本的に僕だと思っています。
漫画を書いているけど上手く行かない、探しものが見つからないといったのが結構僕自身に近いです。
なので特に無理なく等身大でやれた感じです。
ー阿部さんに質問です。草介に出会うミドリともうひとりの二役を演じられていますが、この二役を演じることで苦労された点や工夫された点をきかせてください。
阿部純子
ご覧頂いているとわかると思うのですが、全く違う役柄でした。キャストも違えば撮影現場の雰囲気も違いました。どちらかというと同じ映画の中で、二役の中で共通点をみつけなければといった感覚はありませんでした。
監督が描くイメージの中に登場する二役をいただいている、その中で何ができるかということを考えました。脚本もそうですが、キャストのみなさんにもとても助けられて演じさせていただきました。
▼初共演、お互いの印象
ーお二人は初共演ですが、お互いの印象はいかがでしたか?
笠松将
撮影中にそんなにお話はしていないんです。お芝居に関わることだけを最低限お話させていただきました。
朝から晩まで大自然の中で撮影していると恥ずかしながら、体力的にも疲れて、空いた時間に寝ている時もあったんです。
その時に阿部さんが栄養ドリンクをそっと買ってきてくれて、優しい人だなと思いました。柔らかくて優しい人だという印象です。
阿部純子
笠松さんは誰も見ていないところで、縁の下の力持ちというか、チーム全体を引っ張ってくれるような存在でした。
それに象徴されるようなシーンだと思うのですが、私を背負って歩くシーンが長くありました。
撮影の中盤くらいで撮影時間も長くなった時期に、笠松さんが私を背負って何段もある階段を何度も何度も登ったり降りたりするシーンがありました。
でも全然弱音を吐かずにずっと背負いっぱなしでした。この映画も背負っているし、私自身も背負っているし、本当にすごいと思いました。
笠松将
金子監督も一生懸命で、僕に「もう一回、もう一回」って言って「えーっ!?」という感じでした。
阿部純子
しかもめちゃくちゃ寒い中で、私はずっと背負われていればよかったんですけど、笠松さんはずっと登っていました。
降りてくるときも、一旦下ろしてくださればいいのに、「背負ったままが楽なので大丈夫です」と。
金子雅和監督
阿部さんは寒さにめちゃくちゃ強かったですよね。ほとんど裸足なのに平気だったのですごいと思いました。
▼撮影から2年経過しての心境の変化
ー先ほど阿部さんからもちょうど2年前という言葉がありましたがこの2年での心境の変化は?
阿部純子
本当にちょうど二年前ですよね。この撮影が終わってからすぐにコロナの…
金子雅和監督
そうですね。ラストシーン撮影の最終日で2月24日でした。もう翌週にはマズイねという時期でした。
阿部純子
奇跡的に撮り切れて、今日を迎えられて本当に良かったという気持ちでいっぱいです。
笠松将
僕はこの作品を最後に仕事を辞めようと思っていました。自分には向いていないとか思っていたんです。だからこの仕事を一生懸命やりたかったし、この仕事に挑んでいる時の僕のマインドと今の僕の映画とかドラマというものが、僕にとっての存在価値が全然違っています。
価値観が変わる前、がむしゃらに一生懸命やっていたときの最後の作品だと思います。いい意味で。
2年経って、この僕を観てくれて、こういう場があって、コロナの状況ですけど、嬉しいです。すごく感慨深いというか。
ーお二人にとって大事な作品になったということですね。
▼監督、キャストからのメッセージ
-それでは一言ずつメッセージをお願いします。
金子雅和監督
この映画は東京の地面の下に埋もれた記憶であったり命であったり、言葉で言うと重そうに感じるテーマだと思います。
それを扱いながらもより多くの人に大事なテーマだからこそ観ていただきたいと思っています。
決して小難しい映画ではなくエンターテイメント、面白い映画になっていると思います。観ていただいてご感想等をつぶやいていろんな方に拡散していただければと思います。
東京の公開であったり、地方の上映だったりというのがみなさんの口コミや反応によって広がっていくことは間違いないのでぜひご協力をお願いします。
阿部純子
上映後にみなさんいかがだったか感想を聞くのが楽しみです。この2年間で皆さんもいろいろな経験をされて大変だったこともあったかと思います。
こうして劇場で直接お目にかかれて本当に嬉しいです。自分が出演している映画を観ていただけることに感謝しています。
この映画の良さが他の人たちにもっと広まっていただければと思います。みなさまどうぞよろしくお願いします。
笠松将
ラストシーンが僕も好きなんです。今日ずっと何を言おうか考えていました。僕はこの作品を撮っているときに、何を思っていたか昨夜ずっと考えていました。アニメを観ながら(笑)
そのラストシーンを思い返すと、とてもロマンチックだし残酷だし、僕自身もそうだったなと思いました。
もしかしたらすごい大きな夢の中にいたのかもしれないけど、僕はあのとき、この仕事に無理かもしれないと思っていて、僕の精一杯は全然届かないんだと思っていました。
だけど2年経って、こういう沢山の人に観てもらえて、これからもっと沢山の人に観てもらえるように、僕がならなければいけないと思っています。
良い映画・作品に出会わせてもらって、こういう機会がこの状況の中あることが嬉しいですし、この空間で会えたことを良い時間だと思います。幸せです。ありがとうございます。
■クレジット
「リング・ワンダリング」
出演:笠松将 阿部純子 片岡礼子 品川徹 田中要次 安田顕 長谷川初範
監督:金子雅和 脚本:金子雅和 吉村元希
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
製作: リング・ワンダリング製作委員会
(2021年/日本/カラー/5.1ch/1:1.85 /DCP /103分) 映倫区分G
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渋谷シアター・イメージフォーラム他全国順次公開中